「EBISU BANH MI BAKERY」のパテをたっぷり使ったバインミー

具材の野菜も、それまで知っていたバインミーとは違っていた。葉物としてパクチーだけでなく、大葉やクエイと呼ばれるベトナムのバジルも使っていたのだ。「ベトナムではレストランに入ると、この葉物野菜の組み合わせが籠に山のように盛られ、料理と一緒に必ず出てきたんです。フォーに入れたり、肉と一緒に食べたり。向こうの肉は野性味たっぷりですが、香草類と一緒に食べるとけもの臭さを消してくれて、味のバランスが良くなる。バインミーのパテともよく合うなと思いました」(片岡さん)。

「EBISU BANH MI BAKERY」のバインミーのラインアップの中から、特に現地の味を伝えるものを選んでもらった。片岡さんが選んだのは、「自家製パテのバインミー」「自家製ベトナムハムのバインミー」「焼き豚肉のバインミー」だ。パテとベトナムハムは、現地の肉市場の人にレシピを教えてもらったという自家製のもの。パテはビンイェンの人気店のバインミーをイメージして、たっぷりパンにはさんでいる。

豚焼き肉を使った「EBISU BANH MI BAKERY」のバインミー

具材のパクチーやキュウリ、ナマスがぱっと目に入りやすいバインミーは「野菜たっぷりのヘルシーサンドイッチ」というイメージが強かったが、豚の皮やカシラなども入った肉の食感が際立つパテ入りのものを食べてみると、「肉を食べたい!」という時にもぴったりのサンドイッチであること気が付いた。

ちなみに、「焼き肉の味付けは、仲良くなったビアホイのおじさんに教えてもらったんです」と片岡さん。ビアホイとは、ベトナム版居酒屋。「パン店で修業している変わった日本人がいるというと、みんな興味を持ち、優しくしてくれて……。色々な人に料理を教えてもらいました」とただ学んだけではなく、ベトナム人の人情に心が熱くなったという。

自家製ベトナムハムを使った「EBISU BANH MI BAKERY」のバインミー

20平方メートルほどの小さな店なので、毎日300~400個のパンを焼くのが限界だという「EBISU BANH MI BAKERY」では、閉店時間前に売り切れることが多いそう。「近隣の店に勤めるベトナム人が毎日来てくれたりするんですよ」と片岡さんはうれしそうに話す。

「今、スタッフが米国に行っているんです。北米はベトナムの移民が多いので、そこのバインミーを見て回っています。昔ながらのバインミーの味を大切にしつつ、徐々に幅を広げていきたいんです」と店の将来を思い描く片岡さん。サンドイッチ文化の発達した北米では、ベトナム戦争終結以来、数十年の時を経てどんなバリエーションが生まれているだろうか。これからが楽しみだ。

(フリーライター メレンダ千春)