6~7割の客はベトナム人だという「BAMI OISHI」で、ベトナム人に一番人気のサンドイッチは、豚肉のパテとグリル、野菜類を一緒にはさんだもの。パテと卵焼き、豚や鶏のグリルを合わせたものも人気だそうだ。赤身肉とレバーを合わせたパテを塗った上にボリューム感のある肉を載せたバインミーは、見た目以上に食べがいがある。豚肉はバラ肉を使っており、「ベトナムの人は、脂身が好きなんです」とチュオンさんは説明してくれた。

ベトナムのバインミーの屋台=PIXTA

ベトナムには、街中に専門の屋台があり、カフェやレストランなど専門店以外の店でもバインミーを出す。学生の買い食いおやつの定番でもあるそうで、「中高生は学校帰りに、校門のすぐ外にあるバインミーの屋台に寄るんです」とファンさんは懐かしそうに目を細めた。

このバインミー、今年夏には、具材はもちろん、パンまで現地仕込みの自家製にこだわる店が東京・恵比寿に登場した。「EBISU BANH MI BAKERY(エビス バインミー ベーカリー)」だ。ハノイの北西部にある町、ビンイェンの人気パン販売店「フン・イエン・ベーカリー」でパン作りを修業した片岡亨さんがマネージャーを務める。

「イタリア料理のコックの経験があり、イタリアのパンは作ったことがあったので、ベトナムのパンもそれほど難しくないと思っていたのですが、これが想像以上に大変で……。店の人からOKをもらえたのは修業の最終日、14日目のことでした」と片岡さんは振り返る。

「EBISU BANH MI BAKERY」の店頭 バゲット風ベトナムパンが並ぶ

帰国してからは、ベトナムの味を再現できる粉を探すのにも一苦労。「普通に焼くと、皮の硬い、おいしいフランスのバゲットが焼けてしまうんです」と苦笑い。30種類以上の粉を試し、ようやく現在、店で出しているパンが完成したそうだ。皮は小気味がよいほどパリッとしているが、中はふんわり軟らかいパンだ。

「フン・イエン・ベーカリー」の近くには多くの工場があったため、毎朝、工場に向かう工員たちのバスが横付けされ、大量のパンを買って行ったそうだ。「ベトナムの人は、パンに余った惣菜などをはさみ、バインミーにしてよく食べます。ちぎって煮込み料理のソースにつけて食べたりもして、バインミーに使うパンは、サンドイッチだけではなく料理と一緒に食べるパンの定番なんです」(片岡さん)。

北部の町、ビンイェンの人気バインミー店の様子 手前に見える大きな塊はこの店のパテ

現地で具材も研究する中、「南部では北部より野菜をたっぷり使う、味付けも違うなど、地域によって様々なバリエーションがあることが分かりました。せっかくビンイェンのパン作りを覚えたのだから、バインミーの具材もこの町のものが合うはずだと思い、これだと思えるものを探しました」と片岡さんは言う。

色々な店を食べ歩く中、最も衝撃を受けたのが、ビンイェンでも飛び切り人気のバインミー店。30年続く老舗で、いつも夜中近くまで客で賑わっていたという。「これまでバインミーに使うパテはレバーペーストだと思っていたんですが、その店ではフランス料理のパテ・ド・カンパーニュのようなごろっとした肉の塊をはさんでいて、ものすごくおいしかったんです」(片岡さん)。パテ・ド・カンパーニュというのは田舎風パテという意味で、レバーのほか、様々な部位を使った肉の食感も残るボリューム感のあるパテのことだ。