「デジタル化ありき」ではない リクルートの新規事業リクルートライフスタイル浅野健社長×BCG杉田浩章代表

リクルートライフスタイルの浅野健社長
リクルートライフスタイルの浅野健社長

宿泊予約サイト「じゃらんnet」やクーポンサイト「ポンパレ」といった、デジタル化の進む事業を多く運営するのがリクルートライフスタイル(東京都千代田区)だ。なかでも2013年に生まれた無料のレジアプリ「Air(エア)レジ」は、営業現場のニーズとエンジニアとの連携が生んだ新しいサービスだ。なぜ、同社はスムーズに「デジタル化」への移行ができたのか。浅野健社長にボストンコンサルティンググループの杉田浩章氏が迫った。

もうからない「デジタル」温存が奏功

杉田:浅野さんはこれまで、「ポンパレ」や「じゃらんnet」など、重要なデジタル事業に関わってこられました。どういう経緯でそうなったのですか。

浅野:私は1992年に入社しました。そこでFNX事業という、ファクスの一斉送信サービスを行う部署に配属されたのです。しかし、部署の仲間は「いずれファクスはなくなって、パソコン通信になるよね」と話していました(笑)。実際、会社をやめて海外に飛びだした人もいましたね。当時のリクルートは借金も抱えていて大変な時期でした。そんななかで、もうからないデジタル事業を持ち上げなかったけれど、排除もしませんでした。

それがよかったんですね。技術に強いメンバーが残って「資産」になりました。私がよくデジタルの潮流について話を聞いていた人も、現在ネット企業で活躍しています。若い世代は、インターネットなら情報誌の10倍のマーケットに接触できるから、送客1人当たりの売り上げが10分の1になってもうまくいくかもしれない、とよく話していましたね。

杉田:13年に生まれた無料のPOS(販売時点情報管理)レジアプリ「Airレジ」は、テーブルごとの注文入力から会計までの情報管理ができるサービスです。このサービスで、ユーザーはリアルタイムで飲食店の空席の有無がわかるようになりました。どうしてこのサービスが生まれたのですか。

浅野:通常、店の予約は電話でした。しかし、いずれオンラインで空席がその場でわかる時代がくるだろうと話していました。その空席情報をどう取得するかがカギでした。店員さんは忙しく、接客の合間に情報サイト「ホットペッパー」などに入力してもらうのは不可能でした。

そこで考えたのが、伝票のタブレット化でした。飲食店では通常、注文をとったら伝票を壁に貼ります。日常的に管理する伝票をタブレットにして、会計までできたら店の負担が軽くなり、同時に空席情報もわかるようになります。こんな考えから新しいサービスが生まれたのです。

現場の営業担当者からは「Airレジで得られるデータでもっといろいろなことができる」というアイデアが出てきました。たとえば、メニューの効率化です。あるメニューは、特におすすめしなくても売れるけど、別のメニューはすすめても売れない、といったことがデータで出てくるのです。これに基づいてメニューのラインアップや接客の工夫ができるようになります。ある店は、このやり方で顧客の単価が10%上がりました。

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