スイーツ風チーズ 香り、食感が多彩 日本発の新境地

仏乳業大手の日本法人、ベルジャポン(東京・港)は自社製品を使ったデザートのレシピをホームページで紹介している
仏乳業大手の日本法人、ベルジャポン(東京・港)は自社製品を使ったデザートのレシピをホームページで紹介している

スイーツのように甘く味付けしたチーズが人気だ。アップルパイ風、ベリーのムース風などチーズとは思えない味付け。チーズを使ったスイーツといえばチーズケーキやティラミスなどを連想しがちだが、甘いチーズという新しい市場が広がっている。キーワードは「ヘルシー」。スイーツとして楽しみながらも、カロリーは低め。乳業メーカーは健康的なスイーツとして若い女性に売り込んでいる。

雪印メグミルクは9月1日、「3種のベリーとヨーグルト風味のチーズスイーツ」(税別300円)を発売した。形状は同社の主力製品「6Pチーズ」と同じ。味はブルーベリー、ラズベリー、クランベリーという3種類のベリーを加え、ヨーグルトの酸味でさっぱりと仕上げた。フィンランドのベリー入りのチーズムース「マルヤラフカ」に着想を得ている。「温かい飲み物と一緒に食べると口の中でとろけ、ベリーの味が口の中に広がる」と開発を担当した乳食品事業部の松島美弥子氏は話す。温かいコーヒーや紅茶と合わせる、まさにスイーツのような食べ方を薦めている。

雪印メグミルクの新商品はフィンランドのスイーツに着想を得た。

 同社は2016年9月から「チーズスイーツジャーニー」と銘打ち、日本人の好みに合う世界のスイーツや食材に発想を得たチーズを発売している。今回が第3弾。第1弾は「抹茶のチーズスイーツ」、第2弾は「カマンベールとりんごのチーズスイーツ」だった。

おやつに甘いものを食べる20~40代の女性を主な顧客層として開発を始めた。3種のベリーとヨーグルト風味のチーズスイーツのカロリーは1個60キロカロリー。文部科学省の日本食品標準成分表をもとに計算すると、ミルクチョコレートやレアチーズケーキと比べるとそれぞれ40%、10%少ない。「健康的なスイーツ」(雪印メグミルク)として売り込んでいる。

チーズを使ったスイーツとしてはチーズケーキがこれまで主流で、乳製品メーカーは1982年ごろからチーズケーキを発売し始めた。2009年秋に六甲バターがバニラ味のチーズを発売したのをきっかけに、チーズそのものが甘いスイーツ風チーズという商品分野ができた。

六甲バターによると、開発のきっかけはクリームチーズなど原材料費高騰に伴うデザート事業の休止だ。デザート関連技術の有効活用と、伸び悩んでいたチーズ事業のてこ入れが狙いだった。発売後はカロリーを気にする20~30代の女性を中心に支持を集め、現在はパンプキンプディング味や瀬戸内レモン味といったフレーバーも展開している。

営業企画室の担当者は好調の理由について「賞味期限が180日とショートケーキと比べて長いうえ、1個15グラムと少量。食べたい時にいつでも手軽にデザートが楽しめる点が受けているのでは」と分析する。「商品の形が三角形でケーキを連想しやすいことも手伝い、スイーツ風チーズ商品の認知度は消費者の間で高まっている」(営業企画室)。スイーツ男子とも呼ばれる甘い物が好きな男性の支持も年々広がっているという。

各社が注力するスイーツ風チーズには「チーズに親しんでもらいたい。様々なチーズを食べるきっかけにしてほしい」(雪印メグミルク)との思惑がある。

チーズの本場フランスの乳業メーカーも日本市場向けに本国にはない製品を発売している。仏乳業大手フロマジェリー・ベルの日本法人、ベルジャポン(東京・港)が9月1日に発売したのはアップルパイのような風味の「ブルサン アップル&シナモン」だ。

マーケティング担当の太田順子氏によると、フランスでは販売していないという。拡大が続く日本のスイーツ風チーズ市場を取り込もうと投入。同商品を使ったレシピをホームページで紹介している。薄切りのりんご、シナモンスティック、クッキーと盛り合わせた「ブルサンとりんごのミニタルト」は、パーティーにも使えそうな一品だ。

口の中で溶けて消える、新しい食感のチーズも出てきた(「明治ひとくちチーズスイーツ ホロカ」)

明治は9月1日、「明治ひとくちチーズスイーツ ホロカ」(税別250円)を発売した。「ほんのりレモンとバニラの香りがついた「プレーン」と「7種のベリーミックス」の2種類。「罪悪感なく食べられるスイーツ」として、健康志向を前面に押し出す。ナチュラルチーズを独自技術でホイップ。チーズの中に細かな気泡を閉じ込め、口の中でくずれる。凍らせれば、硬めの食感を楽しむこともできる。

スイーツ風チーズの相次ぐ発売について、チーズ文化の普及を目指すチーズプロフェッショナル協会(東京・千代田)の桝田規夫・専務理事事務局長は「チーズ文化が欧州ほど広まっていない日本ならではの動き」と指摘する。「チーズを日常的に食べる習慣が薄かったからこそ、先入観なく新しい食べ方にたどり着いたのではないか」(桝田事務局長)という。

もちろんチーズケーキの人気も健在だ。フランスのチーズ・発酵バター専門店「ベイユヴェール」は、チーズケーキを販売する日本1号店を8月にオープンした。

チーズケーキやバタークッキーといったスイーツの販売割合の目標をフランス本国より高めの8割に設定している。本国ではチーズや発酵バターが8割を占め、スイーツは2割にとどまる。山本和也ブランディングディレクターは「まずはなじみやすいチーズケーキでチーズの味にもっと親しんでほしい」と話す。開店を検討している日本2号店や3号店では、徐々にチーズや発酵バターの販売比率を高めていきたい考えだ。

日本のチーズ消費量は2016年度まで2年連続で過去最高を更新したものの、チーズを日常的に購入するフランスと比べると1人当たりの消費量は10分の1以下の水準だ。乳製品メーカーはチーズになじみが薄い日本の消費者がスイーツ風チーズを通してチーズそのものに興味を持つことを期待している。

今年に入り日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)をめぐる交渉が進展をみせている。山本氏は「現行の制度だと日本で販売するチーズの値段はフランスの3倍になってしまう」と指摘する。EPAを通じてより手ごろに欧州産チーズが買えるようになれば、消費者の本格的なチーズ購入へのハードルも低くなりそうだ。

(商品部 伊地知将史)

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