ファンドマネジャーが運用するアクティブ型投資信託は、いくら過去の運用成績を見ても投信選びの役には立たない、とよくいわれる。アクティブ型は長期的にはインデックス(指数)型のリターン(収益率)にかなわず、運用成績が良くても偶然にすぎない、というのが理由だ。確かに、過去の運用成績が将来のリターンを約束してくれないのは事実。では、これまでの実績をみるのは本当に無意味なのだろうか。
好成績は「偶然の産物」か
投信にはプロに運用を任せて市場平均を上回るリターンを狙ったり、低リスクの運用を目指したりするアクティブ型と、市場平均並みのリターンの確保を目指すインデックス型がある。
ファンド選びは多くの投資家に共通した悩みだ。インデックス型ならリターンは市場任せだから信託報酬の安さ(コスト)で選べばほぼ事足りる。悩ましいのはアクティブ型で、どの投信がリターンを上げてくれそうなのかを見極めるのは難しい。多くの人は、コストや商品の仕組みなどに加え、過去の実績も大きな判断材料にしているだろう。
これに対して、過去の実績は当てにならならない、という意見がある。アクティブ型はコストが高いうえ、成績は個々の運用者の技量や能力頼みだからで、「効率的な市場では、たとえ運用者の能力が高くても長期で市場インデックスを上回る成績を上げ続けるのは不可能だ」という考え方だ。そういう人々は運用成績が長期で市場インデックスを上回るアクティブ型があっても、それは偶然の産物にすぎないと主張する。
しかし、実際のデータを見ると、「偶然の産物」と決めつけるのは少々乱暴なような気がする。
日本株に投資するアクティブ型投信について、今年8月までの過去10年の年率リターンを調べてみると、日経平均株価の上昇率(年率1.72%)を上回るファンドは330本中181本、東証株価指数(TOPIX)配当込み指数(同2.11%)を上回ったのは156本だった。年によって指数に勝ったり負けたりしながら、10年でならせば市場平均より高いリターンを上げたアクティブ型は、それなりの本数が存在している。
表はすべてのアクティブ型投信を対象にした、期間別のリターンの相関係数(数値が1に近いほど連動性が高い。例えば、期間1年と期間5年の相関係数は0.70、期間3年と期間5年の相関係数は0.86)だ。各期間のリターンにはそれなりの相関があって、ある期間の運用成績が良かったファンドは他の期間を見ても良く、振るわないファンドは別の期間もさえない、という傾向が潜んでいるようにみえる。過去の運用成績をファンド選びの手がかりとするのは、それなりに意味があると思われる。
持続的に勝つ要因を見極める
では、過去のデータをどう使えばいいのか。まず考えられるのは、過去5年程度の実績を見て、成績が平凡でコストも高いファンドを選択肢から除き、成績の良いものを投資候補として残す作業だ。
独立系ファンドコンサルタントの吉井崇裕氏はそのうえで、「目論見書や月報、運用報告書を見て好成績の理由を探り、持続性があるかどうかを判断するのが大切だ」と指摘する。持続的に高リターンをもたらす要因には、ファンドマネジャーの手腕、運用哲学、商品の仕組みなどがあるという。