「頑張りすぎず、挑戦楽しむ」 アドビの秋田夏実さん
アドビシステムズ常務執行役員(折れないキャリア)
金融業界からIT業界に転じ、米ソフト大手アドビシステムズ日本法人の常務執行役員に就いた。クラウドサービスのマーケティング活動全般を指揮する。「デジタルマーケの経験やユーザー視点を生かし全力で取り組みたい」と話す。
1994年に新卒でメガバンクに入行した。数少ない女性総合職だったが、支店配属の初日に上司からかけられた言葉は「おまえを育てる気はない」。「すぐ辞めがちな女性を育てる余裕はないという意味と思うが、ショックだった」。2年ほど勤めた後、「外でチャレンジしよう」と転職を決意する。石油会社を経て27歳で米国留学。経営学修士号(MBA)を取った。
帰国後は創業間もない新生銀行のマーケティング部門で経験を積んだ。「リサーチからデジタルまで幅広い領域を担当しなければならず大変だったが、その分多くを学んだ」。旧長銀や外資系出身者など経歴も国籍も多様な人々と働いたことが成長につながった。
「複数の専門領域を持つと新しい考え方や視点が得られ、それが強みになる」と知ったのは、30代後半、英金融大手HSBC時代だ。リテール部門のブランディング担当の幹部として入社したが、マーケティングリサーチとPRも担当することに。リーマン・ショック後で投資家心理が冷え込んでいたが、メディアとの情報交換を通じ新興国通貨への関心の高まりを感じた。すぐにリサーチを指示。富裕層の人民元への関心が高いことが分かり、商品開発につながった。さらに調査結果をプレス発表すると、大きな反響を得た。
金融業界で20余年キャリアを積む中で「いつか自分の好きなものをプロモートしてみたい」と思うようになる。そんなとき出合ったのが、趣味のウェブサイト製作などで20代から愛用していたアドビの仕事。「やりたかった仕事に出合えた」と迷わず飛び込んだ。
海外出張もある多忙な仕事と1歳、4歳、13歳の3人の子育てを両立する。「アウトソースできるところはして、家事は夫と分担。出張時はシフト表を作りシッターや双方の親の助けを借りて乗り切る」。悩む暇がないほど忙しいが「この大変さが一生続くわけではない」と笑う。「ひとりで頑張りすぎず、抱え込まず、完璧を目指さない」。そうすれば挑戦することが楽しくなると実感している。
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