2代目N-BOX やり過ぎ新型に秘めた勝利の方程式

2017年9月1日に発売された、2代目となる新型ホンダ「N-BOX」。開発リーダーの白土清成氏に今回のフルモデルチェンジについて、何を語るのか
2017年9月1日に発売された、2代目となる新型ホンダ「N-BOX」。開発リーダーの白土清成氏に今回のフルモデルチェンジについて、何を語るのか

6年前に登場し、いきなりスズキ、ダイハツを抜いてホンダ初の軽自動車販売年間1位にになった奇跡のスーパーハイトワゴン「N-BOX」。先日フルモデルチェンジしたところ、スタイルはさほど変わらないのにいきなり受注3万台! ホンダが見つけた新しい成功の方程式とはなにか? 開発リーダーの白土清成LPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)を小沢コージが直撃する。

初代は異例の成功、それだけに力が入った

小沢コージ(以下、小沢) 2代目N-BOX、どうやらずいぶん評判が良いようで。

白土清成LPL(以下、白土) おかげさまで7月に受注を開始して9月3日の時点で3万台突破。スタートダッシュに成功しました。

小沢 ポイントはやっぱり前代未聞のホンダフルスイング打法でしょうか? プレゼンを聞いて驚きましたが、2代目N-BOX、スタイルは一見変わらないのに実態は全取っ替え。エクステリア、インテリアデザインはもちろん、お金のかかるプラットホームからエンジンまで完全新作。2代目でここまで変えた軽自動車って聞いたことがありません。前のパーツはどれくらい残っているんですか。

白土 ほとんど残ってないです。流用率で言うと10%ぐらい。標準部品のボルトナットやブラケットくらいでしょう。

小沢 ホンダは今まで軽でそんなことやってましたっけ?

白土 初めてです。

小沢 普通はモデルで2ジェネレーションごとに1プラットフォームですよね。

白土 軽に限らず、普通はそうです。

小沢 なぜここまでこだわったのでしょう。

白土 まずは想像を上回る初代への高い評価です。初代は初代で当時としては画期的な高効率プラットフォームを開発し、ある程度は売れるだろうと考えていましたが、予想をはるかに超えていまして。一時は普通車も含めてナンバーワンになりましたから。

小沢 まさしく一人勝ちで、いよいよ負けられない戦いになったと。

白土 発売翌年の2012年度に軽販売台数で一番になって、その後ダイハツ「タント」のフルモデルチェンジのときに一度だけ抜かれましたが、その後また盛り返して、今年の上半期もトップでした。

小沢 6年間ずっと売れ続けていて、販売累計100万台に達したのも、国内のホンダ車としては最速なんですってね。「シビック」や「フィット」よりも速い。

白土 それもあって早い段階でイチから作り直さなければいけないだろうと。

新型「N-BOX」は、9割のパーツを新しくしたという

大切だったのは純粋にお客様目線

小沢 一方、振り返って見るとホンダの軽は長い失敗の歴史というか、個性的モデルを出しては「一部受け」で終わってしまってなかなかスズキ、ダイハツを超えられませんでした。思い返せば「ライフ」「Z」「That's」とみんな「独自性」「ホンダらしさ」に引っ張られていたというか。

白土 おっしゃる通りです(笑)。

小沢 そこに今回のN-BOXの成功です。理由はなんでしょうか? プレッシャーもあったんじゃないでしょうか。

白土 もちろんです。フルモデルチェンジしたのに台数が下がってしまったらシャレになりませんし、そのためにはデザインを変えるだけではダメだと。デザインは好き嫌いがあるし、それを上回る価値がない限り新しいお客様は増えないと思ったんです。

こちらは初代「N-BOX」。絶対的室内空間とヒップポイントにこだわったという

小沢 確かに。今までの魅力を守りつつ進化するには全取っ替えしかなかったと。そもそも初代N-BOXの勝因はなんだったのでしょう。

白土 ありきたりの答えになってしまいますが、純粋にお客様目線でつくったからだと思います。それまでの軽は既存の技術資源を効率良く使い、安さ優先のクルマづくりをしていましたが、一転してN-BOXは「お客様はどういう車を求めるのか」を真摯に追求しました。具体的には絶対的室内空間とヒップポイントです。あの高さをムダと感じる人もいるかもしれませんがあれこそが重要。ミニバンの「ステップワゴン」と同じくらいですが女性にとっては運転しやすいんです。

小沢 ライバルのダイハツ・タントよりも高いですか。

白土 高いです。タントは背は同じくらいですがヒップポイントはそれほど高くない。

小沢 安さ優先のクルマづくりとは他社も含めてということですよね。昔、スズキの「アルト」や「ワゴンR」が売れていた時代は、軽の車両価格が2万円上がるだけでもアウトと言われてましたが。

白土 当時のホンダもたぶん回りと同じ考えで軽をつくっていたと思います。軽だからとにかく安くつくるべきだと。でも時代が変わって今は軽でもいいもの、価値のあるものにお金を払うようになってきているんです。

新型「N-BOX」は、スタイル自体は初代と大きく変わったように見えない。価格は税込み価格は138万5640円~188万280円で、先代の約120万円スタートの価格から大きく上昇したように思えるが、「Honda SENSING」など機能が大幅に向上しているという

ますますリッターカーっぽいつくりに

小沢 ところで今回新型に乗ってみて、ますます5ナンバーのミニバンみたいだなって思ったんです。乗り心地や力強さ、静かさを含め軽というより“ステップワゴンの軽サイズ版”。それでいて囲まれ感とか質感は同等だしなるほどこりゃ売れるわと。