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建築条件付き売り地 契約トラブルを避ける2つの鉄則 弁護士 岡田修一

2017/9/27

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子供が産まれたのを期に、長年の夢だった一戸建てのマイホームを具体的に考えています。インターネットやチラシで建売住宅や売り地の情報を集めていますが、価格や立地などでなかなかピンとくる物件に巡り合えません。そんな中、狙っていた地域で周囲よりも割安に思える売り地の広告をついに見つけましたが、「建築条件付き売り地」と書かれています。「建築条件付き」という言葉は聞いたことがありますが、正直なところ詳しい意味はよく分かりません。注意すべき点があれば教えて下さい。

建築条件付き売り地とは一般に、土地の売買契約を締結した後の一定期間(3カ月が多い)内に、売り主自身または売り主の指定する業者と買い主との間で、売り地に建築する建物の建築請負契約を結ぶことが条件となっている土地です。同契約が期間内に締結されない場合は土地の売買契約も白紙撤回となり、その場合は売り主が受領した金銭は名目のいかんを問わず、返還することが契約において通常、定められます。

■「建築条件なし」との違い

建築条件がない売り地であれば、買い主は自身の都合のよい時期に自由に設計者や工務店を選び、自身の要望を最大限に生かした建物を建てることができます。一方、建築条件付きの場合は数カ月程度の比較的短期間に売り主自身または売り主の指定する業者と建築請負契約を結ぶ必要があり、請負契約が結ばれなければ土地自体の所有権も得られないこととなります。

また、建物の建築に関してもパッケージ化された一定のプランが前提とされているのが通常で、この場合、買い主の希望が生かされる範囲も制限があります。そうした条件が付いている分、条件がない場合に比べて土地の価格自体には割安感があるように見える場合も多いようです。一方、建築業者が絞られ建物のプランもある程度決まっているということは、一から計画を立てるよりもスピーディーに建築が進めやすいともいえ、それをメリットと感じる人もいるかと思います。ただし、工事業者が決められているということは、建物が割高になっていないかを比較検討する材料がないということ。ここが弱点といえるかもしれません。

■建売住宅と比較検討

建売住宅は既に建っている建物を購入することが原則なので、買い主が間取りや仕様を後から変えることはできないのが通常です。建築条件付き売り地の買い主はこれから建てる建物に自分の希望を一定程度、反映できる点が大きく異なります。法律的には建売住宅は土地と建物を一緒に買い受けるという意味で、一つの売買契約のみを結ぶことになります。一方、建築条件付き売り地を購入する場合、土地の売買契約を結んだ後に建物請負契約を別途結ぶため、2つの契約が必須となる点が異なります。

端的に言うと、建築条件付き売り地の売買契約は「建築条件のない」土地売買契約と、建売住宅の購入契約との中間的な契約といえ、それぞれの長所短所を理解した上で、「建築条件付き」が買い主のニーズに合致するのであれば、それを選択することに全く問題はありません。

■よくあるトラブルと注意点

ただ、弁護士の経験からいえば、建築条件付き売り地に関しては「この点を押さえないとトラブルになる可能性が格段に高まる」という注意点があります。最低限押さえてもらいたいポイントは以下の2点です。

(1)土地売買契約の署名なつ印と建築請負契約の署名なつ印の間には十分な期間を設ける。土地売買契約と同日はもちろん、数日程度の期間で建築請負契約を結ぶことは絶対に避ける。

(2)業者側の提案する建築請負契約の内容に何が含まれ、何が含まれないのか、含まれない部分をオプションで付けた場合いくらかかるのかを確認した上で、建築請負契約に署名なつ印する。

なぜこのような注意点が重要なのでしょうか。建築条件付き売り地に関して弁護士に相談に来られるケースの典型例は下記の2つです。もちろん、細部は個別の事案によって異なりますが、おおむねいずれかの類似ケースであることが多いのです。

【トラブル例1】
建築条件付き売り地の売買契約を結んだのですが、業者から「ほかの人にも同日に結んでもらっている」という簡単な説明のもと、建築請負契約書に署名なつ印するよう求められました。私は「そういうものなのか」と特に疑問も持たずに応じました。しかしその後、売り主側が提示する間取りや設備のグレードでは私の希望する住宅にはほど遠いことが分かり、解約を申し出たところ「すでに建築請負契約を結んでおり、白紙撤回はできない。どうしても解約するのであれば違約金を請求する」と言われ、困っています。

このトラブルの原因は「土地売買契約と建築請負契約が同日に結ばれている」点に尽きます。そもそも建築条件付き売り地の売買での買い主側の重要な権利は、土地売買契約締結後も、地上の建物計画について買い主が合意できる状態に至らない場合、ノーペナルティーで全てを白紙撤回できるという点にあります。一方、売り主側としては、せっかく契約まで至った土地について白紙撤回される可能性が数カ月間も残るというのは、その間に新たな買い主を募集できないこともあってリスクでしかありません。

そのため買い主側とできる限り早く建築請負契約を結び、白紙撤回のリスクを排除したいという動機が出てくることとなり、悪質な売り主だと買い主に対し、土地売買契約と同時、またはそのわずか数日後に建築請負契約書に署名なつ印するよう求めることが珍しくありません。しかし、もしそれに応じてしまった場合、買い主はせっかくの白紙撤回の権利を放棄したのと同じであり、たとえ建築計画に納得いかなくても、結んでしまった請負契約書に従った工事を受け入れざるを得ないことになってしまいます。

実際、建築条件付き売り地では、地上に建築される建物はある程度の基本プランが前提となっているのが通常で、プランから大きく外れるような変更希望は不可能か、相応の追加費用を要求される可能性が高いのです。そのため、基本プランが施主にとって納得いかない場合、それを大きく変更することが難しい以上、買い主としては白紙撤回を考えざるを得ないことになりますが、白紙撤回の権利を失っている状態では、不本意な計画を受け入れるか、本来は必要がなかった違約金を支払って解約するぐらいしか選択肢はないことになってしまいます。

冷静になって考えてみれば分かると思いますが、新築で建物を建てる場合、間取りや仕上げ、住宅設備など細かい設計仕様や予算などをきちんと詰めると、その検討期間は3カ月でも短いくらいで、ましてや概略のプランしか見せられていないような状態で新築の建物の請負契約を結ぶこと自体、本来は異常な事態です。ただ、建築条件付き売り地に関しては、なぜかそうした異常な契約を当然のように求められるケースが少なくないのです。

仮に注意点(1)を実践してもらい、土地売買契約の後、きっちりとした検討期間を取ったとしても、その期間に検討すべき点をおろそかにしては意味がありません。検討不十分なまま建築請負契約を結んでしまった場合のトラブルが下記の事案です。

【トラブル例2】
建築請負契約を締結した後、工事が着工されたのですが、着工後になって私が述べた希望の多くが高額なオプション工事の扱いとなっており、建築総額が当初予定していた金額を大きく上回ることが分かりました。どこまでが基本プランで、どこからがオプションなのかの説明はきちんとされておらず、大変不満です。言われたとおりに支払わなければならないのでしょうか。

建物については、ある程度の基本プランが前提となっていることが通常というのはすでに述べたとおりですが、この基本プランにどういった内容が含まれているのかを十分に理解しないまま契約し、後から予想外のオプション工事が必要になったことを不満として弁護士のところに相談に来られるケースも少なくありません。

例えば、カーテンレールや網戸、照明器具、外構(門扉や車庫など住宅の外回り部分)など、一般の人からすると住宅に当然備わっていると考えるような設備が「オプション工事で別料金」ということはよくありますし、悪質な業者だと基本プランにちょっとした変更を希望しただけで、実際の費用は変わるとは思えないのに高額な変更工事代金を請求されることもあります。

家を建てる側にとっては、総予算がいくらかかるのかは本来、極めて重要なことです。それにもかかわらず、建築条件付き売り地の取引に関しては、買い主側にその点が必ずしも明確にされないまま、売り主側がスケジュールを優先してどんどん話を進めることが少なくないことがトラブルのもとになっているように思われます。

■契約を結ぶ前に「自衛」を

2つのトラブル例の事案では、売り主側の虚偽説明を証明できる場合、例えば消費者契約法の適用などにより契約の取り消しを求めたり、オプション工事額が不当に高額な場合には減額を求めたりすることが検討可能なケースもあります。しかし、証拠の問題などでそうした対応が可能なケースは必ずしも多くはなく、やはり契約を結ぶ前に買い主に自衛してもらうことが肝要となります。

筆者も、建築条件付き売り地の取引について特に否定的な見解を持っているわけではなく、買い主のニーズに合致していれば十分に合理的な住宅の取得方法であることは前述したとおりですし、トラブル例で書いたような業者は一部の業者にすぎません。ただ、その「一部」が絶対数として必ずしも少数ではないことも事実です。建築条件付き売り地の契約を考えている方は最低限、前述した2つの注意点を実践することで、建築条件付き売り地の取引特有のトラブルの芽は事前にかなり摘むことができると思います。

(監修 建築家 米田耕司)

岡田修一
弁護士。2000年弁護士登録。鹿野・岡田法律事務所所属。不動産関係紛争、特に建築紛争を中心的取扱業務としており、訴訟・調停・示談交渉など建築紛争の受任事件は100件を超える。専門家以外にも消費者向けなどの建築関係の講演経験が多く、昨年までに14都府県で講師を務めた。三重県四日市市出身。趣味は野球観戦、スキューバダイビングなど。

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