成長軌道に乗る東南アジア 内需拡大、銀行株に期待世界のどこに投資する?(7)東南アジア・前編

2017/9/22
ベトナムを走る大量のバイク。よく見ると日本メーカーも多い 写真=PIXTA
ベトナムを走る大量のバイク。よく見ると日本メーカーも多い 写真=PIXTA

今の超低金利下で、日本の個人投資家が少しでも高い利回りを得ようとするなら、新興国株を資産の一部に組み入れる姿勢が欠かせない。東南アジアはその代表的な地域の1つで、日本の企業にとっても比較的なじみがある。実際には投資信託で買い付けるのが現実的で、個人の直接投資には限界もあるが、経済成長の実情やリスク、どう投資すればいいかを知っておいて損はないだろう。

東南アジアの経済は今まさに成長軌道に乗っている。2016年の東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要4カ国(インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン)の実質GDP(国内総生産)成長率は4.8%。17年以降も5%前後を維持する見通しだ。米国が利上げの姿勢を鮮明にし、アジアからの資本流出が懸念されているにもかかわらず、アジアの主要株価指数は年初来でおおむね1~2割ほど上昇している(日経平均株価の上昇は6%、いずれも9月20日時点)。

東南アジアは歴史的に日本の自動車や電気機器、食品、日用品などのメーカーが進出しており、日本人にとってなじみが深い。ただ近年は「一帯一路」政策を掲げる中国が東南アジアへの投資を加速しており、日本企業の存在感は相対的に希薄化しているようだ。

成長加速中のフィリピン、電子部品好調のマレーシア

東南アジアの経済成長率は再び上昇傾向にあるといえそうだ。日本経済研究センターのアジア短期経済予測(8月公表)によると、ASEAN4の実質GDP成長率予測はいずれも17年、18年とも5.0%だった。中間層を中心とした消費の拡大、投資の拡大が進むほか、最近は輸出も堅調だ。

フィリピンの合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子供の数)は3。人口増を背景に、高度な経済成長が続く(マニラの金融街マカティ)

特に成長率の予想が高いのはフィリピンだ。日経センターは16年の6.9%成長に対し、17年は6.6%、18年は6.9%と予想している。同国の人口は1億人を超えてなお増加のペースは高く、所得中間層の拡大で消費が活発化する見通しだ。英語を武器にしたビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO、業務の一括受託)によるビジネスも堅調だ。さらにドゥテルテ政権は任期満了の22年をめどに設備投資をGDP比7%まで高めるとの目標(16年は5%強)を掲げており、経済成長を後押しする。

海洋国家であるインドネシアも成長率が上がる可能性がある。民間消費やインフラ投資の拡大を受けて、16年に5.0%だった同国のGDP成長率は、17年で5.1%、18年で5.3%となりそうだ(同センター)。

マレーシアも世界的なスマートフォン(スマホ)需要の拡大を背景に電子部品の業況が改善し、17年のGDP成長率が16年に比べ上昇する可能性がある。同国は原油の純輸出国で、15~16年は原油安に伴う景気低迷の影響を受けたが、原油価格が1バレル=50ドル(9月20日時点)まで回復したことが、成長率の押し上げに貢献する。

一方、東南アジア経済の最近のリスクは過激派組織「イスラム国」(IS)の問題だ。既にフィリピン南部のミンダナオ島では武力衝突が起きており、経済成長の懸念材料になっている。第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミストは「マレーシアやインドネシアにもイスラム教徒は多く、混乱が拡大すれば経済成長の伸びは鈍化する可能性がある」とみている。

1人当たりGDPは既に日本の70年代並み

今回インタビューしたのは、東南アジア株式を投資対象とする投信「東京海上・東南アジア株式ファンド」を手掛ける東京海上アセットマネジメント株式運用部の若山哲志アナリストだ。同投信はシンガポールを運用拠点に、マクロ経済動向を分析しつつ、アナリストが個別銘柄の利益成長性に注目する「ボトムアップ・リサーチ」を実施している。若山氏は現地と緊密に連絡を取り、東南アジアを含めた世界の経済分析を担っている。

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