もし、練習パートナーやご家族がいらっしゃるのであれば、普段からスピード練習の様子などをスマートフォンの録画機能を使って撮影してもらえれば、フォームを見ながら原因を分析することができます。お金はかかりますが、ランニング教室に通って専門の先生に見てもらうのもいいかもしれません。シューズを替えたり、フォームを改造したりするといった何かしらの対策につなげられます。
タイムなどの数字ばかりに気を取られ、ノルマをこなすことやランニングアプリの指示通りに練習することばかりに意識が向くと、「自分の体を見る」ことを忘れがちになります。もっと自分の体と対話し、痛みが生じれば自分の体をチェックしてその原因を探る。アプリに合わせるのではなく、自分の体に練習を合わせることが、ケガを防ぐ上では重要です。
痛む部位に負担がかからないトレーニングを
さて、ご質問の本題「どのような練習メニューを追加すればいいか」ですが、まず上体の筋肉を鍛えるトレーニングをお勧めします。腹筋などを含めた上体を鍛え、腕がしっかり振れるようになれば、腰から下の部位にかかる負荷を軽減できます。
膝などに痛みが残っているときは、浮力で負荷がかかりにくい水中トレーニングも良いでしょう。例えば、プールで腕をしっかり振りながらウオーキングするトレーニングがあります。なるべく足を使わずに上半身を鍛えるには、脚にビート板を挟んで腕かきだけのクロールで泳ぐ練習でも上体は鍛えられます。走れないときは持久力が落ちますから、この練習なら呼吸器官もある程度、鍛えられるでしょう。
膝の痛みがなくなってきたら、膝周りの筋肉を鍛えるといいでしょう。自重でのスクワットでもいいですし、階段の上り下りも効果的です。ウエイト機器を使ったレッグカールもいいでしょう。重りの負荷を上げてもし痛みが出てきたら、脚に力を入れたときに、屈伸したときの膝やつま先の向きが体に対して真っすぐ(平行)になっているかを確認しましょう。こんなところからも、負荷をかけて思いっきり脚に力を入れたとき、あるいは回数を重ねて筋肉が疲労してきたときに、左右の脚のバランスの崩れや癖が表れるといった、痛みの原因が見えてくるかもしれません。
ケガをするのもしないのも、ランニングを楽しむのも楽しまないのも、自分次第だと私は思います。周りの仲間の成績や目標タイムにとらわれず、普段から自分の体と対話しながら、トレーニングの量やペースを決めて取り組んでください。痛みが生じる前に何か異変のような、「体が発する声」に気づくはずです。
平均寿命が伸び「健康寿命」の大切さが度々話題になる昨今ですが、健康的にランニングを楽しめる「ランニング寿命」が1日でも長く続くような意識改革が、これからは重要になってくると思います。


(ライター 高島三幸)
[日経Gooday 2017年9月12日付記事を再構成]