シリコンバレーで発見 日本株が上がる理由(藤田勉)一橋大学大学院特任教授

テスト走行で公道を走るグーグルの自動運転車(米カリフォルニア州)
テスト走行で公道を走るグーグルの自動運転車(米カリフォルニア州)
「米シリコンバレーを視察して分かったのは、日本で考える以上にAI革命の実用化が進んでいることだった」

筆者は9月に、米サンフランシスコ・シリコンバレーを訪問し、人工知能(AI)と金融とIT(情報技術)が融合したフィンテック関連企業を視察した。現地では日本で考える以上に、自動運転、フィンテック、ロボットなどAI革命の実用化が急ピッチで進んでいる。その結果、AI革命を起爆剤として、日本株が長期的に上昇するとのシナリオに自信を深めた。

AI革命で世界を圧倒する米国は、株価上昇率でも圧倒する。2010年代の株価上昇率(17年8月末時点、以下同)は、米国が122%と日本の78%を大きく上回る。先進国の株式時価総額上位は、1位アップル、2位アルファベット(グーグルの持ち株会社)、3位マイクロソフト、4位フェイスブック、5位アマゾン・ドット・コムと、米国IT企業が独占する。時価総額はいずれも50~90兆円台である(1ドル=110円換算)。

生き残るのは敏しょうで賢い企業

これらを追いかけるのがアジア勢で、中国のアリババ集団とテンセントがともに40兆円台、韓国のサムスン電子が20兆円台となっている。ちなみに、日本の日立製作所やパナソニックはそれぞれ3兆円台にとどまる。

米国株市場では激しい淘汰が進んでいる。10年前のトップ企業であったIBM、インテル、シスコシステムズなどは時価総額ランキングを大きく落としている。かつてトップ企業であったAOL、ネットスケープ、サン・マイクロシステムズ、ヤフーは今では独立企業として存在していない。IT企業で上位に生き残っているのはマイクロソフトのみだ。

このように、IT業界では生き残るのは強くて大きい企業ではなく、敏しょうで賢い企業である。激しい淘汰はとどまるところを知らず、近年は画像処理半導体企業のエヌビディア(時価総額11兆円)、映像ストリーミング配信事業者のネットフリックス(8兆円)、デジタル送金事業者のペイパルホールディングス(8兆円)、電気自動車製造業のテスラ(7兆円)などが急成長している。もしかしたら10年後、現在トップを走るアップルやアマゾンなどは圏外に去っているかもしれない。

ソフトバンクに高い評価

今回の視察によって、日本株投資のヒントがいくつか得られた。第1に、ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンク)に対する評価は、シリコンバレーでも大変高い。過去に、ヤフー、アリババへの投資で成功したソフトバンクは、総額10兆円の「ビジョン・ファンド」を掲げてシリコンバレーに大投資を展開しつつある。その圧倒的な資金規模と、中国、インドなどへのリーチを持つ力は高く評価されている。

ソフトバンクはエヌビディアの大株主になっており、自動車配車アプリ運営企業であるウーバーテクノロジーズやリフトに出資を検討中と伝えられる。すでにアジアの同業者に出資しており、これらへの出資が実現すると国際的な配車アプリ事業において、優位に立つことが想定される。ソフトバンクは今後、自動運転の分野に本格的に参入することが予想される。

トヨタも勝ち組の可能性

第2に、自動運転時代がそこまでやってきている。シリコンバレーの街中では、グーグルの自動運転試験車が数多く走行している。公道を自動運転車が頻繁に走ってデータを収集しているのである。日本ではこれはできないので、自動運転車の開発にはかなりハンディを負っているといえる。

これに危機感を覚えたのが、トヨタ自動車である。トヨタ自動車の時価総額は20兆円と、日本企業の中で唯一の世界的な大企業といっても過言ではない。トヨタはシリコンバレーで著名研究者をスカウトしてAI研究所を設立した。さらに、エヌビディアと提携しているほか、ウーバーなどにも出資している。そして、ベンチャーキャピタルを設立して、現地のスタートアップ企業に出資している。トヨタはAI企業に変身するだけの豊富な資金力と高い技術力を持つだけに、勝ち組になり得る。

ソニーや任天堂にも勝機

第3に、ソニーや任天堂のソフトの力の高さが注目される。シリコンバレーには何でもありそうだが、AIに関連した基本技術で唯一欠けているのが、拡張現実(AR)である。ソニーや任天堂の強みは、AR技術に加えて、キャラクターなど世界有数のコンテンツやゲームのノウハウを持つことである。また、ソニーは自動運転用画像センサーでも世界トップクラスであり、1999年にAIBO(アイボ)を発売したロボットのパイオニアでもある。

その他にも、キーエンス、日本電産、村田製作所、ルネサスエレクトロニクスなど、世界最高水準の技術を持つデバイスメーカーは、自動運転、ロボットの開発・製造に欠かせない。キーエンスの時価総額は7兆円と、日本のIT企業では断トツに大きい。

世界で活躍できるかがポイント

筆者は、2020年に向けての相場のテーマはAI革命であると繰り返し述べてきた。世界的にAI関連株の上昇が続く一方で、AI革命に乗り遅れた米ゼネラル・エレクトリック(GE)やIBMの株価は不振である。IT企業のアマゾンの株価が大きく上がる一方で、他の小売業の株価は振るわない。

このように、AI相場の特徴は世界で活躍できる勝ち組と、それ以外の負け組が明白になることである。よって、AI相場における投資では「その企業は世界で通用するか」という基準が大変重要である。結論として、ソフトバンク、トヨタを筆頭に時価総額の大きい企業がけん引する形で日本株は上昇軌道に乗るであろう。

7月7日付コラム「陰る政権と日本株 浮揚させるのはAI戦略」で指摘したが、安倍晋三政権は成長戦略としてAI戦略を実行しようとしている。衆院選で与党が勝利し、政権が安定すれば日本株にも追い風となろう。相場の「高値波乱」に注意を払うべきとの考えに変わりはないが、長期的に日経平均株価は3万円を目指すとみている。

藤田勉
一橋大学大学院国際企業戦略研究科特任教授、SBI大学院大学教授、シティグループ証券顧問。2010年まで日経ヴェリタスアナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。経済産業省企業価値研究会委員、内閣官房経済部市場動向研究会委員、北京大学日本研究センター特約研究員、慶応義塾大学講師を歴任。一橋大学大学院修了、博士(経営法)。1960年生まれ。
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