秋の気配を感じる頃、これからの季節に向けてワードローブに何を買い足すか思案を巡らせるのは、実に楽しいひと時です。ビジネスウエアやウイークエンドウエアを購入するのも、「外見力」向上のための大切な自己投資です。どうせなら投資は失敗せずに最大の効果を発揮してほしいものです。この秋冬物メンズファッションのトレンドは何か? また何を買えば最大の効果が得られるのか? 買い物にお出かけする前に本稿をご一読頂ければ幸いです。
2017年秋冬メンズ・ビジネスファッションのトレンドを俯瞰(ふかん)すると、「英国調」「ニューボリューム」「クラシックディテール」の3点に集約されます。さらに細かくカテゴリー毎にみると、10のキーワードが浮かび上がります。以下、それぞれを詳しく分析してみましょう。
1. テーマ 英国調の復活
2017年春夏に比べ、秋冬物の方がより表現しやすいこともあり、今季はブリティッシュテイストがより強調されています。
特に1980年代の米ニューヨークで、世界のメンズファッショントレンドをけん引した「ニューヨーク・トラッド派」のデザイナーたちが好んだ、1930年代英国のクラシックなテイストが復活しています。
このニューヨーク・トラッド派の旗振り役だったのがラルフ・ローレンで、今年ブランド創設50周年という特別な節目を迎えているのも、英国調復活の流れと無縁ではありません。
かつて彼に憧れたイタリアの各ブランドのクリエイターや経営者たちが、オマージュをささげていると考えるのが自然でしょう。
2. カラー ベースはブラウン、アクセントはバーガンディ

スーツ、ジャケットなど分量の多いアイテムに用いられるベースカラーには、ブラウン、オリーブなど英国のカントリーカラーであるナチュラルカラーが台頭しています。
特に濃い「チョコレートブラウン」はファッションカラーとして注目されていますが、ビジネスの場では、ふさわしくありません。週末用のジャケットなどに取り入れる方がよいでしょう。
一方、ネクタイなど分量の少ないアイテムに用いられるアクセントカラーの「バーガンディ(ワインカラー)」は、取り入れやすいので早速トライする価値があります。
3. パターン 英国柄の復権
英国伝統の古典柄ヘリンボーン(杉あや柄)、ハウンドトゥ―ス(千鳥格子柄)、グレンチェック(細かいチェックを組み合わせた大柄のチェック)が拡大しています。
紳士スーツのルーツである英国ロンドンのビスポークテイラー(仕立屋)の集まる通りサヴィル・ロウでも、ビジネススーツ用に認められているのは、無地、ストライプ、一見無地に見えるヘリンボーン、細かいハウンドトゥ―ス、シャークスキン(ジグザグ模様)、バーズアイ(鳥の目柄)だけです。
グレンチェックやウインドーペン(窓枠柄)などの格子柄は本来、週末のカントリーハウスで過ごす際のラウンジスーツ用で、ビジネススーツの柄とは認められていません。
あまり原理原則にとらわれると面白みに欠けるので、現在の日本や米国のビジネスシーンであれば、ダークなグレンチェックは許されるということは、覚えておきましょう。
また一方で無地の提案が増えているのも、素材の良さが分かりやすく、原点回帰の表れとして重要なポイントです。