海城の1学年の定員は320人。17年の合格実績は東大49人、京都大学6人、一橋大学17人、東京工業大学11人、そして国公立大学医学部医学科は35人。受験一本という教育方式を改めたが、92年以降も高い進学実績をあげている。海城OBは「スパルタのイメージは全然ない。先生の面倒見がよくて、仲間とのつながりは卒業後も強い」という。
一流大学の進学実績では、筑駒、開成、そして灘中学・高校が全国トップ3という位置づけは変わっていない。しかし、2番手校の競争は激化、ランキングは大きく変わった。海城のライバル、巣鴨高校や桐朋高校、東京学芸大学付属高校など国立大付属校も進学実績が伸び悩んでいる。一方で台頭したのが都立日比谷高校や神奈川県立横浜翠嵐高校などの公立高校、そしてグローバル人材教育を標榜する渋谷教育学園幕張中学・高校だ。
モンゴルの進学校と提携
競争が激化する中、海城は改革を次々実施。柴田校長のもとで今年度からは「KSプロジェクト」と呼ぶ新たな取り組みにも着手した。KSとは「Kaijo School」の略だ。従来の授業の枠を超え、個性的な人材を育成するのが狙いだ。その一講座として9月から始まるのが「新城門プロジェクト」というモンゴルの小中高一貫の進学校「新モンゴル校」との提携事業だ。新モンゴル校は海外の名門大学にも多くの留学生を送っているが、日本の医学部への進学を希望する生徒が増えているという。
しかし、国立大は2次試験の数学が難しい。そこで3カ年計画で、海城と新モンゴル校両校の医学部志望者が、切磋琢磨(せっさたくま)する場として「国公立医学部数学講座」を開設。海城の数学教師の講義を音声・動画通話ソフト「スカイプ」を活用して配信する。両校の生徒が数学だけではなく、医療に関する様々な討論もするという。全く違う環境の人材は互いに刺激しあい、モチベーションが高まったり、新たな発想が生まれたりする可能性もある。
ITの有力起業家も次々
欧米や中国と提携する高校は出始めているが、モンゴルの提携校というのは聞いたことがない。斬新なアイデアを出したのは、海城の数学教師だという。柴田校長は「現場からの声で改革しないと成果が出ません。海外とつないだり、支援したりするのが私の役割です」と話す。
改革元年以降、海城はユニークな研究者や起業家も輩出している。歴史書「応仁の乱」がベストセラーになった国際日本文化研究センター助教の呉座勇一氏のほか、ドリコム社長の内藤裕紀氏、じげん社長の平尾丈氏など有力ベンチャーの起業家が次々生まれている。「東大スパルタ受験校」というイメージを一新、グローバル人材育成に本腰を入れる海城。改革の手は緩めそうもない。
(代慶達也)