隣からの「もらい火」 損賠請求難しく、保険で備え

新潟県糸魚川市で2016年に起きた大規模火災は、ラーメン店からの出火後、強風で120棟が全焼した
新潟県糸魚川市で2016年に起きた大規模火災は、ラーメン店からの出火後、強風で120棟が全焼した

全国各地で大規模な火災が起きている。隣接する家屋や店舗が火事になり、その「もらい火」で被災する事例も相次ぐ。昨年12月には新潟県糸魚川市で大規模な火災が発生。この夏に、築地場外市場(東京・中央)では7棟が全焼した。大規模火災や延焼に対して、どのような補償を受けられるのか。木造住宅が多い日本には、特殊な補償の仕組みもある。

「重大過失」が左右

「あっという間に火が燃え広がった」。8月3日午後、築地場外市場の一角で発生した火事。店舗が燃えてしまったある店主はこう振り返る。当時、店は営業しておらずけが人はなかったが、店舗と売り物はほぼ焼けてしまったという。その後、別の被災者から「失火者から損害賠償は受けられない」と知る。

隣家が火元となり、延焼による被害を受けた場合、損害賠償を受けられるはずだと普通考える。実際、日本の民法第709条は「故意または過失によって他人の利益を侵害した場合、その損害を賠償しなくてはならない」と定める。しかし火災に関しては別の法律の規定がある。

別法の「失火責任法」は、失火の場合、重大な過失がある場合を除き、例外的に民法の規定を適用しないとしている。延焼で被災しても原則、失火者に対して損害賠償請求はできないというわけだ。というのも日本では昔から、木造住宅が密接し延焼しやすい。失火者とて自身の財産も失っており「賠償責任まで負うのは酷」という考え方が法律の根っこにはある。日本固有の考え方だ。

築地の火災では、火元となったのはラーメン店。今後、「重大な過失」の有無がどう認定されるかが事態を左右する面があるものの、現状と日本の法律の考え方の原則に従えば、延焼の被災者は自身で加入していた火災保険の範囲内で補償を受けることになりそうだ。前述の店主は「復旧まで時間はかかるが、いま受けられる補償で前を向いていくだけだ」とし、別の店舗で営業を続ける。

もちろん、過去の裁判などで「重大な過失」を認定したケースはある。天ぷら油を火にかけたまま台所を離れた、電気ストーブをつけたまま寝て布団に引火したなどの例だ。しかし必ずしも、こうした行為をしたから重過失認定を受けるわけではない。個々の事例の分析を待ち判断する。

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