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立川談笑、らくご「虎の穴」

東京案内ボランティア さびついたスペイン語で困った 立川談笑

2017/9/17

PIXTA

 前2週の弟子たちのマクラ話を受けて、いよいよ師匠である私の番です。テーマは「困ったこと」。

 今回は、「日本で困っている外国人観光客を助けようとしてみた。東京駅スペシャル」として、私の経験を話します。

 移動に便利な鉄道は私も頻繁に利用します。駅の表示は丁寧に分かりやすく工夫を凝らしてあるし、外国語表記も格段に増えました。先日、都営地下鉄の券売機を見て、外国語対応の充実ぶりに驚きました。英語、中国語、韓国語。さらに台湾向けの中国語(繁体字)、スペイン語、フランス語、タイ語。すごい!

 そこまで充実していても、まだまだ困っていそうな外国人観光客を見かけることって、結構あります。渋谷と北千住、これは私がいつも乗り換えで迷う駅です。東京に住む日本人の私が困るんだから、初めて訪れた外国人はどれほど困っていることか。

 東京駅の八重洲口でデイバッグを背負ったお兄ちゃんが、ひたすら路線図とにらめっこしていました。彼はアフリカ系の米国人。私は英語も話す日本人。

 「こんにちは。どこに行きたいんですか?」

 「あのぉ、ここから近いはずなんですが。どうしても築地駅が見つからないんです」

 「ああ、いま見ているこれはJRの路線図。築地は地下鉄の駅だから、東京メトロの駅にいらっしゃい」

立川談笑一門会で高座に上がる落語家の立川談笑さん

 これは、東京案内ボランティアとしての私がまともに機能したときの話です。考えてみれば、東京都内だけでもJR東日本、東京メトロ、都営地下鉄、私鉄各線とあって、駅には基本的に、それぞれの会社の路線だけが表示されています。あれはずいぶん不便なものだなあ、と思います。とはいえ、都内の鉄道各社すべてを1枚に網羅したら、それは膨大な駅の数になってしまうし、便利な乗り換えアプリでちょちょっと検索すればいいのに、とも思うのですよ。でも、それだったらあの駅に掲示している「わが社限定」の路線図の意義は何なんだろうと。

 また、同じ地域でありながら別の会社の線に乗り換えるたびに初乗り運賃がかかるのは、私たちには当たり前ですが、外国人はなんだかモヤモヤすると聞いたことがあります。この点、海外の都市によっては、範囲限定で電車もバスも会社に関係なく、何日間乗り放題きっぷなんていう、便利なシステムがあるそうです。

 これも東京駅でのことです。こっちはちょっと失敗した話。東海道新幹線のホームでアメリカ人っぽい親子連れに声をかけられました。困り顔のパパが新幹線の切符を出して、

 「これは何番線の何号車に乗ればいいんですか」

 券面にこまごまとした文字が並んでいて、鉄道に詳しくない私には、一見して全く理解できない内容でした。おやおや。今度は私が困っちゃった。大きめの字で「指定特急券」と記載があるのに、列車名も発車時刻も書いてない。指定といいながら、号車や座席の番号もありません。

 「ちょっと待ってくださいねえ」

 券面の文字と格闘することしばし。

 「うーん。私にはお手上げです。駅員さんに聞いてくださいな」

 この日本人は切符の日本語すら理解できないのですよ。わはは。情けないけど、駅員さんに任せたのは我ながら賢明な判断でした。後でよく考えたら、どうやらあれは指定席の回数券か何かだったようです。たぶんあの親子はその後、いったん改札を出てみどりの窓口なりでオープンの回数券から乗車を確定させた指定券に改めて、夢の超特急で名古屋なり京都、大阪なりに楽しく出発したことでしょう。

 今や新幹線の切符にも外国語表記のものがあるそうです。それでも、たとえば旅行業者が間に挟まって「ちょっとでも安いプランがありますよっ」てんで、格安で入手した回数券を手配したとします。その結果、切符は日本語表記だけで外国人にはまるで使い方が分からない、なんてことになっているのかもしれません。もっとも、予備知識もなしにいきなりあの券面だけ見せられたら、日本人だってよく分からないもの。

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