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使わなきゃ損! 個人型DC iDeCo

iDeCoは試算が大事 老後不安の解消にねんきんネット iDeCoで投資デビュー(8) オフィス・リベルタス 大江加代

2017/9/20

 iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入したいと考える方の多くは、その理由として「老後資金は公的年金だけでは足りないから」「掛け金が全額所得控除になるから」ということを挙げられます。実際にセミナーなどでこうしたメリットを紹介しながらiDeCoの話をすると、ほとんどの方が「利用したい!」とおっしゃるのですが、それを拒むハードルが2つあります。1つは契約する金融機関選び、もう1つが金融商品選びです。金融機関選びについては「iDeCoの金融機関選び 口座管理料だけで即決はダメ」などで解説しましたので、今回は金融商品選びにシミュレーション(試算)を活用しようという話をしたいと思います。

■シミュレーションは立派なフィンテック

 フィンテック(金融と情報技術の融合)という言葉が数年前から使われるようになりましたが、そのずっと前から、多くの運営管理機関(金融機関)はiDeCoの加入者サービスの一つとして資産配分のためのシミュレーションを提供してきました。ウェブサイトの画面に自分の掛け金額や自分が決めた資産配分をセットして、期待リターン通りに運用されれば60歳時点で残高はいくらぐらいになるか、を示してくれるものです。さらに「マーケット(相場環境)が良かったときや悪かったときには運用結果がどうなるか」もわかります(これはあくまで過去のデータに基づく予測にすぎませんが)。

 そもそも投資信託を買ったことがない方にとって、元本割れするかもしれないこと、運用結果がどれくらいの金額になるのかわからないことは、限りなく不安なものです。「欲張る気はない、預金よりちょっと高いリターンでいい」と思いながらも、実際にはどのカテゴリーの資産にいくら配分したらいいのか皆目見当が付かない、という方も多いでしょう。そんなときには勘で当てずっぽうに決めるのではなく、数値を入れてシミュレーションしてみるのが有効です。最悪の場合、どれくらい元本割れする可能性があるのかを試算することで、自分はその損失額に耐えられるかどうかを判断材料にできるからです。

 またシミュレーションですから、数値や商品を変えていろんなパターンの結果を何度でも確認することができます。資産配分をいろいろ変えて試してみると、自分の肌感覚にしっくりくる配分も見えてきます。ここではいくつかの資産にうまく分散投資することが重要です。本来であれば持っている資産全体での分散効果を考えた上で、運用益非課税のiDeCoのメリットを享受すべきなのですが、最初のうちはiDeCoの中だけでの分散投資でもいいと思います。数年間、iDeCoで運用してみた結果を確認してからもう一度資産全体での分散を検討するのも悪くありません。

 ただし、シミュレーションを行う場合には3つの留意点があります。(1)多くのシミュレーションは具体的な商品ではなく、東証株価指数(TOPIX)やMSCI-KOKUSAIといった株価指数(インデックス)を使っているため、アクティブ型投信の運用成果を知るのにはあまり参考にならないこと (2)試算に使っている過去のマーケットデータは定期的に更新されるので、一度試算したら終わりではなく少なくとも数年おきにやり直す必要があること (3)あくまでも試算であり、受取金額を保証するものではないこと――です。

■実際の受取額に近い数字がわかる

 さて、利用をお勧めしたいもう一つのシミュレーションのサイトが日本年金機構の「ねんきんネット」です(https://www.nenkin.go.jp/n_net/index.html)。これはiDeCoのシミュレーションではなく、公的年金のシミュレーションです。iDeCoの運用を考える上で、なぜ公的年金の試算が必要なのでしょう?

 それはiDeCoで老後資金を作るには、まず自分がこれから準備する「目標額」をつかむことが欠かせないからです。そのためには、老後にどんな暮らしをしたいか、それには月いくらかかりそうかということだけではなく、国からもらえる年金でどのぐらいカバーされるのか(サラリーマンなら会社からもらう退職金や企業年金も)を把握する必要があるのです。

 しかし、50歳未満の方に郵送で届く「ねんきん定期便」は今まで納めた保険料に基づいた年金額しか載っておらず、実際に受け取れる額よりも大幅に少ない額となってしまっています。そこで「ねんきんネット」で試算すると、下のグラフのように「いつから、いくらもらえるか」が一目でわかります。このように65歳以降、死ぬまでずっともらえる金額がわかると、老後へのもやもやした不安がだいぶ晴れますよね。

ねんきんネットの試算結果(例)

 なおこの「ねんきんネット」の利用には最初に登録が必要です。年金手帳に記載されている基礎年金番号とメールアドレスを使いますが、到着後3カ月以内の「ねんきん定期便」があれば、これに記載されている17桁のアクセスキーでも大丈夫です。

 余談ですが、9月13日に厚生労働省が「10万6000人に対し約598億円の支給漏れ」と発表した「加給年金」や「振替加算」は、ご夫婦双方の条件で支給の有無や額が決まるため、ねんきん定期便やねんきんネットには記載されていません。これらには本人の情報に基づいた内容だけが表示される仕組みだからです。

 今や人生100年時代といわれ、昔よりも長い老後の資金計画を立てておく必要が出てきました。シミュレーションを使って運用のリスクや老後資金を「見える化」し、人生100年時代を生き抜く資産形成・管理術を身に付けてください。iDeCoはそのためのいいきっかけになると思います。

大江加代
 大手証券会社で22年間勤務し、一貫して勤労者の資産形成に携わる。確定拠出年金については法の成立前から10年以上企業型の現場で関わり、のべ25万人に対する投資教育の企画・運営にも携わった。現在はオフィス・リベルタス取締役で、NPO確定拠出年金教育協会理事として情報サイト「iDeCoナビ」も創設。http://www.dcnenkin.jp/

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