犬にも感情がある? MRIで迫る動物の脳、最前線

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/9/25

――絶滅したフクロオオカミの脳もスキャンしたそうですが、現代のイヌと比べてどんな違いがありましたか。

タスマニアタイガーとも呼ばれるフクロオオカミは、1936年に絶滅したと考えられています。姿はイヌやオオカミによく似ていますが、有袋類は1億年以上前に別の哺乳類から分岐したグループであり、実際にはイヌの仲間ではありません。

わたしの目的は、フクロオオカミの脳がイヌの脳と似ているかどうかを確かめることでした。残されている標本が少ないため苦労しましたが、最終的にふたつの脳をスキャンすることができました。その結果、フクロオオカミの脳はイヌのものと大きく異なり、タスマニアデビルやカンガルーといった他の有袋類に近いことがわかりました。

標本の分析によって前頭葉の相対的な大きさがわかり、彼らがどの程度の問題解決能力を持っていたか、また社会的だったかどうかをある程度推測することができました。フクロオオカミはイヌほど社会的ではなく、むしろかなり非社会的だったようですが、前頭葉内部の連結を見ると、問題解決能力はかなり発達していたことがわかります。ペットにはまったく向いてないでしょうね(笑)

――大型動物の脳の3次元復元を行う団体を設立するそうですね。

「ブレイン・アーク」というこの団体の目的は、大型動物が地球上から姿を消す前に、脳のデジタルアーカイブを作っておくことです。(参考記事:「動物たちを記録して守る『写真の箱舟』 絶滅する前に」)

われわれが今、再び大量絶滅の時期に入ろうとしている可能性が高いことは、多くの科学者が認めています。これはひとつには気候変動の影響ですが、人間が開発などによって動物の生息域を減らしてきた結果でもあります。

大型動物の脳を研究することにより、なぜ特定の種が他の種よりも絶滅しやすい傾向にあるのか、逆になぜ他の種は生き延びるのかを解明したいと考えています。

――イヌの脳研究のこれからの課題を教えてください。今回の研究で、動物への接し方は変わりましたか。

イヌのプロジェクトでは、彼らが学習する仕組みをより詳しく研究する予定です。イヌが実際に学習しているときに、MRIで神経経路がどう変化するかを調べていきます。この研究はイヌと一緒に暮らし、彼らを訓練し、問題行動への対処の仕方を探るうえで大いに役立つでしょう。

わたしの生活への影響はまず、以前よりもたくさんのイヌが家の中にいることです(笑)。また仕事がある日の大半は、イヌと一緒に過ごしています。

今回の研究のおかげで、動物の内に秘められた性質をより深く理解し、彼らはたとえそれを表す言葉を持たなくとも、人間とよく似た感情を持っていることを実感しました。彼らは言わば「人類ではない人間」なのです。(参考記事:「犬は人が思っているよりもずっと『人間らしい』」)

(文 Simon Worrall、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年9月13日付]

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