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仮想通貨、かさむ「採掘」コスト 後発組に高い壁 仮想通貨の実相(3)

2017/9/25

 IT(情報技術)大手GMOインターネットとネット関連大手DMM.com(東京・港)の相次ぐ参入表明で改めて脚光を浴びるインターネット上の仮想通貨(暗号通貨)のマイニング(採掘)。ビットコイン相場などの上昇で収益源としての注目度が高まる一方、コンピューター関連費用の増加などにより採算があいにくくなっている。

 マイニングとはブロックチェーンを使った売り買いや送金に絡むデータの流れが真正かどうか、第三者がコンピューターで暗号を解きながら検証する作業。仮想通貨システムを維持するうえで欠かせない作業だ。マイニングを手掛けるマイナー(採掘者)は作業量(計算の量)に応じた報酬をその仮想通貨で(ビットコインのマイニングならビットコイン、イーサリアムならイーサリアムで)受け取れるので、一般に「採掘」と呼ぶ。採掘した仮想通貨は市場で売却すれば円やドルなどの法定通貨ベースで収益があがる。

■作業量の大きさが勝敗を左右

 マイニングは基本的には作業量の大きさが勝敗を左右する。「早く大量の作業を終えた者の勝ち」のシビアな世界だ。だが、コンピューターの性能争いが過熱し、電気の消費量拡大や地球環境への悪影響が懸念されるとの声も少なからずあがっている。半面、イーサリアムのように既存のイーサリアム保有者を優遇し、過当競争を防ぐ枠組みを作ったら作ったでマイナーの新規参入を阻み、市場の厚みをなくしてしまいかねない。

 マイニングの優劣を測る物差しの1つが採掘速度(ハッシュレート)だ。ハッシュ関数とよばれる演算を1秒間でいくつ処理できるかを示す。ハッシュレートを上げるほどコイン獲得の可能性は高まるが、コンピューターの処理能力を上げなければならない。外為証拠金(FX)や仮想通貨のシステム開発に強いクロスブリッジ(東京・中央)の三浦洋一社長は「10ギガ(100億)ハッシュ/秒あたり2ドル以上のコストがかかるようだ」と話す。実際のマイニングの現場ではギガではなくテラ(1兆、10億の1000倍)ハッシュ単位での激しい戦いになった。足元のドル建てビットコイン価格の4000ドル前後でも元を取れるか不透明だ。

■関連機材の価格が上昇

 足元では画像処理半導体(GPU)などマイニング関連機材の価格が上がり、GMOやDMMを含めてこれからマイニングを始める企業の初期投資額はかさむ。GMOは35億円以上かける。日本勢が扱う半導体チップは中国企業よりも高性能とされるが、国内ではデータセンター管理の人件費などの固定費が最小限にとどめても高くつく。GMOでは一年を通じて気温が低い北欧にデータセンターを置き、コンピューターを冷やすための電気代を減らすほか、地熱や水力などの再生可能エネルギーも使ってトータルのコストを抑える予定だ。投資資金の一部を一般から募り、成功報酬をビットコインで出す「クラウドマイニング」も導入する。

 マイニング業界は先んじてシステム投資を終えた中国勢が優位にたっている。情報サイト「blockchain.info」がハッシュレートの規模を基にリアルタイムで集計しているビットコインのマイナー勢力図によると、中国企業の占める割合は拠点がわかっている分だけで5割を超える。上位の「Antpool」や「BTC.com」は8月に分裂したビットコインキャッシュ(BCC)のマイニングにも関わり、「今後のBTC分裂問題を左右する大きな存在」(国際通貨研究所の志波和幸・主任研究員)にもなっている。DMMは「2018年中にマイニング企業の世界トップ10に入る」を目標に掲げるものの、中国の背中はまだ遠いようにみえる。

■仮想通貨のマイニングとは

 データ承認作業の報酬としてビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を受け取れるマイニングにはどんな設備が必要なのか。誰でもできるものなのか。マイニングについてQ&A形式でまとめた。

◇  ◇  ◇

Q:マイニングをするには何が必要なのだろう。

A:作業用コンピューターと計算能力を増強するための高性能な画像処理半導体(GPU)を組み込んだパソコンがあればいい。マイニング用のソフトウェアは無料で入手できる。かつては一般のパソコンレベルの性能と安価なGPUでもマイニングはできたが、競争激化でよりハイスペックなものが求められている。本格的にやるには専用ハードウエアを何台もつないで競争力を高めなければならず、電気代も相当かかるので個人では難しくなってきた。

 東京の秋葉原あたりではアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などの米国製GPUが人気で、品薄状態が恒常化している。価格も高い。低コストで効率よく稼げる時代は終わったといえる。

Q:電気代の点で中国が有利と聞いたけど、本当だろうか。

A:電気代が安いとされる中国勢が有利なのは確かだ。人件費も安いだろう。ただ高性能で消費電力の小さいコンピューターを使ってコストを下げられるほか、GMOのように、寒冷地で熱がこもりにくく割安な地熱エネルギーなどを使える北欧に拠点を持つ戦略はある。

Q:コンピューター知識の乏しい個人はまったく手を出せないのだろうか。

A:マイニング企業のハードウエアに小口で投資する「クラウドマイニング」が1つの選択肢だ。マイニング企業の集まりである「マイニングプール」に出資し、配当や報酬の形でコインを得る手法もとれる。海外ではマイニングプールを投資商品とみなして取引するウェブサイトが存在する。だが国の規制が及んでいないため、「計画倒産」などの詐欺にあう確率は低くない。

 12日は米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が「ビットコインは詐欺」と述べ、物議を醸した。悪意を持つ人物が入り込みやすい世界であることは十分意識しておいたほうがよさそうだ。

〔日経QUICKニュース(NQN)編集委員 今晶〕

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