長時間旅行の疲れを軽減 「貧乏ゆすり」が意外に有効

日経Gooday

疲労の予防策は、エコノミークラス症候群の予防法とまさに同じ(c)fred goldstein-123rf

エコノミークラス症候群の予防法は、こまめに水分をとって、定期的にトイレに行くなどで立ち上がって歩くことといわれていますが、これがまさに、疲労の予防にもなります。歩いて、ふくらはぎなど脚の筋肉を動かすことで、血流を促すんですね。ですから、座席はできれば、すぐに立って歩ける通路側を選ぶといいでしょう。

奥まった窓側の座席だと、隣の人に気兼ねして、席を立つのを遠慮してしまいがちです。また、トイレに立つ回数を減らそうと、水分摂取も控えてしまう。すると、体内の水分が不足して、血液が粘り気のある状態になり、ますます血流が悪化してしまいます。それが、エコノミークラス症候群だけでなく、疲労を招く原因にもなります。

理想的には、のどが渇いたと感じる前にこまめに水分をとり、30分に一度は立ち上がって歩くようにすると、疲労はかなり軽減できるはずです。少なくとも、1時間に一度は歩いてほしいですね。距離はトイレに行く程度で構いません。

――通路側の座席が取れなかった場合はどうすればいいでしょう。

席を立って歩くようにするのが一番なのですが、窓側の座席で立ったり歩いたりしづらい場合などには、座ったままでかかとを上げて、足を小刻みに上下に動かす、いわゆる「貧乏ゆすり」を意識的にするのが有効です。

――「貧乏ゆすり」ですか。一般的に貧乏ゆすりは無意識に出てしまうもので、マナー的には良くないものというイメージがあります。

そうですね。ただ、貧乏ゆすりは、健康面では良い効果があることが分かってきているんですよ。例えば、英国で行われた調査では、デスクワークなどで1日7時間以上座っている人は、5時間以下の人に比べて、死亡リスクが高まることが分かっています。しかし、1日7時間以上座っている人でも、貧乏ゆすりを頻繁にしている人では死亡リスクは高まらず、さらに、座っている時間が1日5時間以上6時間未満の人では、貧乏ゆすりを頻繁に行うことで、死亡リスクが低下することも分かりました[注1]

この結果についてはさらに詳しい研究が必要とされていますが、意識的に貧乏ゆすりをすることで、血流を改善する効果はあるといえるでしょう。歩くときには、足首の関節を引き上げる脛(すね)の筋肉や、心臓から送られてきた血液を戻すポンプの役割を果たしているふくらはぎの筋肉が、弛緩(しかん)と収縮を繰り返しています。貧乏ゆすりをすることで、この歩くときと同じような動作をすることになるんですね。ただ、確かにマナー的には気になってしまう人も多いと思いますので、席を立つのが難しい場合に限り、隣の人が眠ってしまったときなど、周囲に配慮しながら行うといいでしょう。

――エコノミークラス症候群の予防法が、疲労の予防にもなるということでしたが、エコノミークラス症候群の予防で勧められている、弾性(着圧)ストッキングの着用も有効でしょうか。

足を締め付ける弾性ストッキングは、むくみの予防には効果的です。ただし、締め付けが強すぎて、逆に血流を悪くするものもあるので、私はお勧めしません。疲労の予防には、足を温めて血流を促すレッグウオーマーなどの方が適しています。移動時の服装でも、生地が硬いジーンズなどは避けて、足を締め付けない、伸縮性のあるストレッチ素材のものを選ぶといいでしょう。

◇  ◇  ◇

ずっと座っていること自体が、乗り物による長時間移動の際の疲れの原因であり、その疲れを軽減するにはこまめに立ち歩くことや、貧乏ゆすりが有効なことは分かった。次回はもう一つの疲れの要因だという「環境」について詳しく伺っていく。

[注1]Hagger-Johnson G,et al. Sitting Time, Fidgeting, and All-Cause Mortality in the UK Women's Cohort Study. Am J Prev Med. 2016;50(2):154-60.

梶本修身さん
大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授、東京疲労・睡眠クリニック院長。1962年生まれ。大阪大学大学院医学系研究科修了。2003年から産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。2017年9月には、最新著書『すべての疲労は脳が原因3〈仕事編〉』(集英社新書)、『なぜあなたの疲れはとれないのか?』(ダイヤモンド社)、『“人疲れ”が嫌いな脳』(幻冬舎)を出版。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)他、テレビ・ラジオでも活躍中。

(ライター 田村知子)

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