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ご飯にシチューかけ? ハウス食品の提案、狙いは旦那

日経トレンディネット

2017/9/21

日経トレンディネット

ハウス食品はシチューの新たな市場を開拓すべく、新ブランドを投入する。それが、シチューかけご飯専用ルウ「シチューオンライス」。味は「チキンフリカッセ風(鶏肉のクリーム煮)ソース」「ビーフストロガノフ風ソース」の2種だ。

ハウス食品は約50年前に「シチューミクス」を発売し、家庭料理としてのシチュー市場を開拓した老舗メーカー。そのハウス食品がなぜ今、シチューかけご飯を仕掛けようとしているのか。同社食品事業二部の宮戸洋之部長によると、その背景にはシチューにおける「2011年問題」があったという。

■旦那が「シチューは物足りない」

「それまでほぼ横ばいだったシチュー市場が2011年を機にダウンし始めた。その原因を分析したところ、シーズン期間のメニュー登場頻度が減っており、特に1週間のなかで頻度が最も高い金曜日が減少していた」(宮戸部長)。ただ従来型のアンケートなどの調査手法で理由を聞いても、その明確な理由は分からなかったという。

そこで同社は消費者の本音を探るため、ウェブ共創プラットフォーム「Blabo!(ブラボ!)」上に「More シチューエーション プロジェクト」を設け、約1万4000人に「シチューに関して潜在的に感じている“モヤモヤ”」を募集。2015年5~11月までの約半年間で出たさまざまな意見を分析したところ、意外な本音が見えてきた。

寄せられた意見の中で衝撃的だったのは「旦那がご飯のおかずとして物足りないと思っている」というものだったという。また、クリームシチューを作る動機として「主人の帰りが遅い」が上位にあった。

この2つの意見を結びつけ、2011年の東日本大震災を機に金曜日の外飲みを自粛する「旦那」が増えた結果、シチューの金曜日の登場頻度が減少したのでは、という仮説に至ったのだ。

■シチュー復活の鍵は「ワンディッシュ化」

さらに、鍋つゆや簡便調味料など時短調理が可能な競合メニューと提供価値を比較したところ、「常備食材で調理できる」「作り置き温め直しができる」という点でシチューは有利だが、「『ほかにおかずを用意しなくていいひと皿メニューである』という主菜としての価値が弱まっていることが分かった」(宮戸部長)。

同社の調査によるとクリームシチューのとろみが強く具材感が多いほど主菜として食べるユーザーが多い一方、とろみが少ないほどシチューを副菜や汁物ととらえるユーザーが多いという。そして前者にはシチューを食べる頻度が高いヘビーユーザーが、後者には頻度が低いライトユーザーが多いことも見えてきた。

「クリームシチューの顧客構造と実態」(ハウス食品調べ)。クリームシチューのとろみが強く具材感が多いほど主食として食べるユーザーが多い一方、とろみが少ないほどシチューを副菜や汁物ととらえるユーザーが多いという

ライトユーザーの食卓でのクリームシチュー登場頻度をアップさせるには、主婦の望むおかずが1品で済む「ワンディッシュ化」が必須。そこで同社が着目したのが、一部ユーザーで定着している「かけシチュー」だった。

同社が行った調査によると、クリームシチューをご飯で食べる人の中で“わけ派”が約8割で、“かけ派”は約2割だった

同社によれば「かけシチューを愛好している世帯は、シチューのヘビーユーザーが多い傾向がある」という。「これは、ひと皿料理で調理の手間や洗い物の手間が省けるという作り手の満足度と、食べ手の満足度が高いことに起因している」と宮戸部長は分析する。

そこで「旦那も喜ぶ、ひと皿シチュー」という戦略コンセプトのもと、ひと皿で完結する「クリーム味の新ライスメニュー」を提案すべく、「ごはんにかける専用シチューの素」を開発した。市場拡大のためのコアターゲットは、「クリームシチューに潜在的な不満を抱えている、『かけ派ではない』主婦」だという。

2017年8月14日発売の、ごはんにかける専用シチューの素「シチューオンライス」(参考価格248円)。「チキンフリカッセ風(鶏肉のクリーム煮)ソース」「ビーフストロガノフ風ソース」の2種類

だが「ご飯にシチューをかける」ことに抵抗を感じる人は少なくないはず。そうした層を「かけ派」に転向させるため、どのような仕掛けをしたのか。シチューかけご飯に抵抗を感じる筆者が、実際に作って食べてみた。

■「堂々と食卓に出せる」という声も

シチューというと「時間をかけて煮込む」イメージが強いが、多忙な主婦にも気軽に作れるよう、同商品では「調理の時短化」も追求している。例えばジャガイモやニンジンはシチューの具の定番野菜だが、煮えるのに時間がかかるため使用せず、野菜はタマネギとシメジのみ。これにより下ごしらえから煮込み時間を合わせて約10分、調理時間を短縮できるという。

実際に作ってみたが、ニンジンやジャガイモがないと、非常にラクだった。ジャガイモの皮をむく手間がないので、煮込むまでにかかった下ごしらえの時間は10分足らず。いためた時点で火が通る素材ばかりなので、煮込み時間も短くて済み、作り始めてから30分前後で完成した。いため物のような「超時短」料理を作り慣れている主婦からすると30分は微妙な時間かもしれないが、通常のシチューよりはるかに短時間で作れるのは確か。

味については、「最初のひと口でインパクトを感じ、後半まで飽きずに食べられる味。既存のクリームシチューを好む子どもよりもやや上の、そろそろ舌の肥えてきた年代にも好まれる味をイメージした」(同社)とのことだが、果たしてどうか。

同時に2品作り、まずビーフストロガノフ風ソースから食べてみたが、予想よりはるかに濃厚な味でご飯が進むのに驚いた。通常のシチューよりかなり塩味が濃く、単独でシチューとして食べるにはつらいが、ご飯にかけてちょうどいいバランスだ。これと比較すると、チキンフリカッセ風ソースは塩味がやや控えめで、シチューとしてもそのまま食べられる味。濃い味付けが好きな人、かけシチューに抵抗を感じる人は、ビーフストロガノフ風から試すといいだろう。

「ビーフストロガノフ風ソース」はかなり濃い色。「チキンフリカッセ風ソース」も通常のクリームシチューよりは色が濃いめ。これは、ご飯にかけたときに白一色で寂しくならないよう、あえて濃い色になるように仕上げているとのこと
通常のシチューで1皿分に使う肉は50g程度だが、チキンフリカッセ風は鶏肉を1皿分100gも使用し、作り方にも鶏肉を大きくカットするよう書いてある(「もも肉を約6等分に切る」)せいか、肉料理のようなボリューム感がある

発売前に行った試食調査では「カレーのようなワンディッシュメニューのレパートリーが増えてうれしい」という声のほかに、「(シチューかけご飯に抵抗感があったが)メーカーが製品化してくれることで、堂々と食卓に出せる」という意見もあった。

同社では大人の男性イメージとして、俳優の遠藤憲一氏を起用したテレビCMを8月25日からオンエア。男性も食べざかりの子どもも満足する食べ応えを表現することで、年間約10億円の販売を目標にしている。

(文 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2017年8月8日付の記事を再構成]

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