スマートフォン(スマホ)に採用され注目を浴びている有機ELディスプレー。店頭には有機ELを搭載した大型テレビも登場し始めた。次世代大画面テレビの本命と呼ばれる有機ELテレビだが、従来の液晶テレビと何が違うのだろうか。メーカー担当者、そしてオーディオビジュアル評論家に聞くと、大きな違いは「薄さ」と「黒の表現」だという。実際に見ていると、その違いは驚くほどはっきりとしていた。
薄くて曲げられる有機EL
iPhone Xにも搭載され話題になった有機ELディスプレーだが、2017年は有機ELテレビにとっても変化の年となった。東芝、ソニー、パナソニックと国内メーカーが4K有機ELテレビを発売したのだ。2015年から製品を発売しているLGエレクトロニクス・ジャパンも5月にハイエンドモデルを投入。選択肢が一気に広がった。
調査会社のGfKジャパンによるとボーナス商戦を迎えた2017年7月時点で、国内テレビ販売に有機ELが占める割合は数量で2%、金額で10%。「正確な判断を下すには時間が必要だが、とりあえず出だしは順調」だという。
ただまだ高価な製品だけに、従来の液晶テレビと何が違うのかは気になるところ。そこで国内で発売されている有機ELテレビのパネルを生産しているLGディスプレイをグループに持つLGエレクトロニクス・ジャパンを訪ね、同社の金敬花(キム・キョンファ)さん、そしてオーディオビジュアル評論家の小原由夫さんに、平成生まれのライターが有機ELテレビの特徴を聞いた。
小原由夫さん(昭和世代のオーディオビジュアル評論家) 小沼さん、有機ELテレビについてはどの程度まで知っていますか?
小沼理(平成生まれのライター) 正直、名前くらいです。そもそも僕はテレビを持っていないんですよ。今はパソコンでも映画や番組が見られるサービスもあるので、わざわざテレビを持つ必要を感じないんですよね。
金敬花さん 小沼さんは25歳? 統計データで見る典型的な日本の若者ですね。でも、海外では若者にもテレビは普及していますし、大型化も進んでいるんですよ。
小沼 えーっ、テレビ離れは世界的なものではないんですか。
金 日本の市場が特殊だと思います。
小原 まあ、日本と世界の違いは後でくわしく聞くことにして、せっかくだから実機を見てみましょう。
金 これがハイエンドクラスのW7Pシリーズです。

小沼 透明なガラス板に映像が映っていますが……。
金 これは有機ELテレビをガラスに貼り付けているようなデザインを採用しました。
小原 横から見てください。
小沼 うわ、本当に薄いんですね。

小原 「壁掛けテレビ」ではなく「壁貼りテレビ」といったところでしょうか。テレビの本体はこの画面と、下にあるスピーカー部分です。チューナー類などはスピーカー部分に内蔵しています。
金 すごく軽いので取り付けも簡単ですよ。約7.6キログラムと1人でも持てる重さです。軟らかくて曲がるので、設置するときは必ず2人以上で持つようにしていますが。