橋爪功さんとの2人芝居で学んだこと(井上芳雄)第6回

井上芳雄です。9月14日から『謎の変奏曲』という舞台に出ています。橋爪功さんとの初共演で、セリフだけのストレートプレイの2人芝居も初めて。ミュージカルを中心にお芝居をしてきた僕にとって、ずっとしゃべりっぱなしの舞台は大きな挑戦です。大ベテランの橋爪さんの演技からは教えられることが多く、日々得るものがあります。

『謎の変奏曲』 東京:9月24日まで 世田谷パブリックシアター、大阪:9月30日~10月1日 サンケイホールプリーゼ、新潟:10月3日 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館、福岡:10月7~8日 大野城まどかぴあ(撮影:引地信彦)

ノルウェー沖の孤島で、1人暮らしをしているノーベル賞作家のもとに、地方新聞の記者と名のる男が訪ねて来るところから物語は始まります。作家を橋爪さん、記者を僕が演じています。

記者の目的は、作家の最新作である恋愛小説『心に秘めた愛』の取材なのですが、その小説は男女の往復書簡の形式で、やりとりが突然ぷっつりと終わっています。その謎をめぐって、世代の違う2人の男が愛についての心理ゲームのような会話をしていくうちに、お互いにいろんな変化が起こっていきます。2人の関係性が二転三転するどんでん返しが面白く、僕は台本を初めて読んだとき、ぐいぐい引き込まれました。 

フランスの劇作家エリック=エマニュエル・シュミットの作品で、1996年にパリでアラン・ドロン主演で初演されました。日本では過去に2回上演されていて、仲代達矢さんと風間杜夫さん、杉浦直樹さんと沢田研二さんが演じています。

言葉の強弱や高低で感情を表現

僕は、今回のお話をいただくまで作品を知らなかったのですが、こんな傑作があったのかと驚き、日本であまり知られてないし、ぜひやりたいとお返事しました。ずっと2人でしゃべっているので、演じるのは大変だろうなと思いましたが、難しそうとかよりも、とにかく面白い本だからやってみたいという気持ちでした。

今回は、橋爪さんという素晴らしい俳優さんと初めて一緒にやらせてもらうのも貴重な経験です。75歳(9月17日で76歳)でこれだけセリフ量の多い舞台をやられるのは、すごいことです。橋爪さんとは経験も技術も違うから、同じようにはもちろんできないし、とにかく足を引っ張らないように、と思って稽古に臨みました。

僕はミュージカルを中心に、音楽活動もしたりと、セリフだけの芝居をずっとやっているわけではないので、そこを突き詰めている俳優さんと同じ舞台に立つのは、厳しいことです。足りないものも多くて、正直苦しい。でも逆に、役者としてステップアップする大きなチャンスをいただいたと考えて、学べるものは全部吸収しようと思いました。

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