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外国人が「歩きたい」と思う日本の道 それはKISOJI

インバウンドサイト発 日本発見旅

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NIKKEI STYLE

旅の目的の一つとして、街道や古道を「歩く」というカテゴリーが挙げられます。日本に来て、都市や古都を訪れるだけでなく、歴史的価値のある道を実際に歩いてみたいという外国人旅行者は、意外に多いのです。今回は「道」に注目してみました。

ジャパンガイドでもよく街道・古道の取材に行きますが、歩いている日本人旅行者は中高年の方が多く、若者は意外と少ないように感じます。その点、外国人旅行者はバックパッカー・スタイルの若い人も多く、すごくパワフルで楽しそうに見えます。彼らはなぜ日本の道を歩きたいと思うのでしょうか。

スピリチュアルな雰囲気が人気の「熊野古道」

海外でも有名な日本の道というと、すぐ思い浮かぶのが熊野古道です。「紀伊山地の霊場と参詣道」として、一部が世界遺産にも登録されています。

この霊場とは、神道の熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)、仏教(真言密教)の高野山、修験道の吉野・大峯のことです。全国からの巡礼者がこれらの霊場に詣でるために歩いた道が参詣道。三重、奈良、和歌山の三県にまたがる紀伊山地を背景にそれぞれの信仰が育まれてきました。いわば山全体がスピリチュアルスポットなのです。

熊野古道は熊野三山への参詣道の総称で、中でも観光スポットとして人気なのが「中辺路(なかへち)」と呼ばれるルートです。紀伊半島の南西部海沿いに位置する田辺市から、内陸の山間部にある熊野本宮大社、熊野那智大社を経て、紀伊半島南東部の熊野川河口付近にある熊野速玉大社に至る、昔から最もよく参詣に使われた道でした。その中辺路に、外国人観光客に特に人気のコースが2つあります。

1つは田辺市街から熊野本宮大社に至るまでの道。深い森や里山の風景の中、昔の雰囲気を残す古道を歩けるのが魅力です。アップダウンはありますが道路がきれいに整備され、外国語のウェブサイトやマップなどの情報が充実しているので、安心して歩けることも人気の理由でしょう。

熊野本宮大社に着く手前に、約1800年前に発見された日本最古の温泉場といわれる「湯の峰温泉」があり、人々は熊野へ詣でる前にここで身を清めたと伝えられています。川のほとりにある天然の岩風呂「つぼ湯」は、世界遺産の登録資産の1つ。一般の人も利用可能で(有料)、世界遺産の温泉に入るという特別な体験ができます。外国人の利用も増えているようですよ。

もう1つのコースは、熊野那智大社周辺です。熊野那智大社にはバスでも行けますが、途中下車して大門坂という昔ながらの石畳を30分ほどかけて歩いて登るのがおすすめ。古道の趣が残る坂道で、全ルートを歩く時間がない人でもプチ古道散策が楽しめます。山頂に着くと熊野那智大社と青岸渡寺(せいがんとじ)、そして那智の滝が見えてきます。朱色の三重塔の後方に雄大な滝が眺められるという、外国人が大好きな風景が特に人気を呼んでいます。

熊野古道を訪れる外国人は、昔の道を歩きたいという思いとともにスピリチュアルな雰囲気にもひかれています。単なるウオーキングではなく、歩いているうちに瞑想(めいそう)のような気分が味わえると語る人もいました。大都市以外の日本を体験したい人、自然が好きな人にも人気のエリアです。

どちらのコースもすばらしい写真とともに広く紹介されて有名になっていますが、外国からの旅行者も安全に旅ができるように外国語の情報を充実させ、看板なども含めたコース整備がきちんと行われていることが人気の最大の理由だそうです。

実は田辺市熊野ツーリズムビューローにはカナダ出身のプロモーション事業部長、ブラッド・トウルさんがいて、長年にわたり外国人観光客の誘致に力を入れてこられたのです。私たちが取材に訪れたときもブラッドさんが一部を案内してくださったのですが、有名観光地はもちろん、飲食店やお土産屋の店員さんなど観光ルートのすべての方と親しく、その信頼関係と交流の広さには驚かされました。

そんなブラッドさんと夫のシャウエッカーが、古道散策中に「この景色がいいですよね~!」と意気投合して盛り上がっていた場所があります。しかし、私にとっては「え、ここ?」と思えるような、ごくごく普通の風景でした。

それが下の写真です。「熊野古道」という標識がなければ、日本中どこでも見られるような里山風景ではないでしょうか。でもシャウエッカーいわく、「山と森、田んぼや段々畑があり、民家が見える。ここに小川が流れていたら完璧!」。よく言われる「外国人と日本人が感動する部分の違い」をしみじみ感じました。

江戸時代にタイムスリップ感「木曽路」

熊野古道と人気を二分するのが「木曽路」です。江戸時代の五街道の1つ「中山道」のうち、長野県から岐阜県にかかる一部の区間のことで、奈良井宿、福島宿、妻籠宿、馬籠宿など11の宿場町がありました。現在でも、当時の街道と宿場の様子が一部きれいに残されています。特に妻籠宿と馬籠宿は景観が非常によく保存されていますが、そこには町並みから電柱を撤去したり昼間の車両通行を規制したりするなど、地元の方々の保存への強い思いがあるのです。

木曽路を訪れる外国人旅行者は、特に「歩きたい」という願望が強いように感じます。彼らは昔の日本が好き。特に伝統的な田舎の日本が大好きで、なるべくそのようなところを歩きたいと思っています。月並みな言い方ですが「タイムスリップ」体験をしたいと思っているのです。それが妻籠と馬籠でできる。歴史的な町並みと雰囲気を残し、田舎の風情もあって、とても人気があります。

妻籠と馬籠の間を結ぶ「馬籠峠」のコースは、旧中山道という昔ながらの街道を実際に歩けますし、約8キロメートルというほどよい長さの行程。両宿間での荷物の運搬サービス(有料)もあるので、身軽に峠越えができます。有料ですがヒノキの薄板でできた完歩証明書(英語版あり)も発行してもらえます。

馬籠峠を歩く外国人は急増しており、公益財団法人「妻籠を愛する会」の調査によると2016年は総数4万5373人のうち外国人は2万3160人と半数を超えています。

木曽路は、「日本の田舎・地方」というカテゴリーの中では飛騨高山と白川郷に次ぐ人気観光スポットです。シャウエッカーが歩いたときには、同じように昔の建物が残るスイスの田舎の雰囲気とよく似ていると感じ、日本に来るスイスの友人には木曽路をすすめているそうです。

交通アクセスもよく、名古屋からJRで中津川駅下車、そこからバスで馬籠宿まで約25分。将来的には、2027年開業予定のリニア中央新幹線が中津川にも止まるので、鉄道マニアのシャウエッカーは木曽路にますます行きやすくなるかもと喜んでいます。

のどかな風景と寺社のたたずまい「山の辺の道」

熊野古道にも木曽路にも既に多くの外国人観光客が訪れていますが、これから紹介する山の辺の道(奈良県)は、まだ外国の人たちにはそれほど有名ではありません。しかし取材に行ったシャウエッカーとライターのサムは絶賛しており、特にサムは2016年の個人トップ10取材地に入れているほど。日本人にとっては少し地味な印象がある山の辺の道の、何が外国人の彼らをひきつけたのか……。その理由をお伝えする前に、取材のきっかけとなったエピソードが面白かったのでご紹介したいと思います。

それは10年ほど前、シャウエッカーが取材で秋田県八幡平のホテルに泊まったときのこと。夕食のダイニングルームで、宿泊客の席は個別のテーブルに分かれていたのですが、誰かの声掛けでみんなが1カ所に集まって食事をすることになり、それがすごく楽しかったのだそうです。そのとき、バイクで日本中を旅しているという男性に「今まででどこが一番よかったですか?」と質問したところ、返ってきた答えが「山の辺の道」でした。以来、いつか必ず行きたいという思いが常に胸の中にあったそうです。

調べてみると、山の辺の道は「古事記」や「日本書紀」にも記され、文献に残る日本最古の道といわれることが分かり、ますます興味がわいてきたとか。三輪山から奈良に通じる全長約35キロメートルの道で、桜井駅から天理駅までの約16キロメートルはハイキングコースとしても有名です。歴史的にたいへん重要な道路で、三輪山を御神体とする大神(おおみわ)神社や石上(いそのかみ)神宮をはじめ、数々の寺社や古墳などが見られます。

でも外国人にとっては、魅力のポイントは木曽路と同じなのだそう。「日本の田舎の経験ができる道」というのが行ってみたい最大の理由で、それに寺社と歴史の魅力が加わるといえるのだそうです。

取材に行ったサムとシャウエッカーも、のどかな雰囲気が非常に気持ちよかったといいます。森の中や果樹の間を通り、小さい村を抜け、田んぼの横の道を歩き、神社やお寺の建物を眺め……。大和平野もきれいに見えて、日本の田舎の風景をたっぷり楽しめたそうです。サムのトラベルリポートもそのような写真が満載でした。

現在、最も整備されている天理から桜井までのルートには4カ国語の看板があり、歩きやすくて人気があります。京都や大阪はにぎやかなので少し静かな雰囲気にひたりたいという人にはぴったりの場所かもしれません。シャウエッカーもまだ全部歩いていないので、また行きたいと話していました。

木曽路も山の辺の道も、途中でバスや電車に乗ることもできるので、長い距離ではなく少しだけ歩いてみたいという人にも向いているそうです。

これからの注目ルート「四国の遍路道」と「みちのく潮風トレイル」

さて、これから外国人に人気が高まりそうな道もあります。ジャパンガイドが注目している道を2つ挙げてみましょう。

1つは、四国八十八カ所霊場を巡る「遍路道」。言うまでもなく日本で最も有名な巡礼の道ですが、外国人の間でも既に知名度がかなり上がってきています。外国語のウェブサイトがたくさんできているからです。四国を訪れる外国人観光客はまだ少ないのですが、その中にあってお遍路ルートを歩く外国人は増えつつあります。やはりスピリチュアルな雰囲気にひかれるというのが理由で、これからさらに増えると予想されています。

もう1つは、東日本大震災の復興プロジェクトの一環として整備が進んでいる「みちのく潮風トレイル」です。北は青森県八戸市から南は福島県相馬市まで、太平洋沿岸の既存の遊歩道や自然道をつないで、1本の長いトレイルをつくろうという壮大なプランです。津波で破壊された部分の復旧や再整備が必要な箇所もあるため、準備が整った区間から順次開通しており、全線開通するのは2019年3月になる見込みだそうです。

太平洋沿岸ですが、海だけでなく森や里、登山道なども含み、変化に富んだ景観が楽しめるルートになりそうです。ジャパンガイドが被災地取材で訪れている岩手県田野畑村の北山崎の景勝地もその一区間。将来全線が開通したらぜひ歩いてみたいと思っています。

シャウエッカー光代
 ジャパンガイド取締役。群馬県生まれ。海外旅行情報誌の編集者を経て、フリーの旅行ライターとなり、取材などで訪れた国は約30カ国。1994年バンクーバーに留学。クラスメートとしてスイス人のステファン・シャウエッカーと出会い、98年に結婚。2003年、2人で日本に移住。夫の個人事業だった、日本を紹介する英語のウェブサイト「japan-guide.com」を07年にジャパンガイド株式会社として法人化。夫の著書「外国人が選んだ日本百景」(講談社+α新書)「外国人だけが知っている美しい日本」(大和書房)などの編集にも協力。

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