FRB 121102はしばらくの間、すっかり活力を失ったかのように見えていた。しかし2017年8月26日、ブレークスルーチームは、1時間に15回のバーストを観測した――これはFRB 121102から発せられたバーストとしては、2016年の同時期以来、最も多い回数だ。今回のバーストはまた、これまでで最も高い周波数帯で確認されており、これは電波バーストの放出が非常に変動しやすいものである可能性を示している。
なぜFRB 121102が再び活発になったのか、また今回のバーストが、こうした現象の発生源を突き止める手がかりとなるのかどうかはまだわからない。研究者の間には、今回電波バーストが観測された原因は、発生させる力が何かということとはあまり関係がなく、むしろ周期的にこれを増大させている宇宙空間のさまざまな「レンズ」にあるのではないかという意見もある。
「(FRB 121102の)『高速電波バーストの嵐』は、これまでにも幾度か観測されています。2016年8月から9月にかけては、超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)がずっと空振りを続けたあと、突如として爆発したかのように、毎回バーストが観測されるようになったのです」と、米コーネル大学のシャーミ・チャタジー氏は言う。
「恐ろしいほどのエネルギーを放出」
「2016年と2017年で、同じ月にバーストが観測されているというのも驚きです。これはあるいは、電波を増大させている何かのレンズがそうした幾何学的な配列を形作る特定の時期に、バーストが観測しやすくなるということなのかもしれません。これはまだまるで根拠のない無謀な推測に過ぎませんが、正解でないと決まったわけでもありません」
謎に包まれた高速電波バーストの発生源に関しては、これよりもさらに無謀な、数々の推測が展開されている。過去に提唱されてきた理論には、原始ブラックホールや中性子星の衝突のほか、地球外文明の関わりを示唆するものもある。とはいえ一般に、エイリアン説は真剣な議論の対象にはならない。
「天文学会では、今回の高速電波バーストの発生源に地球外生命体が関わっている可能性は低いという意見が大勢を占めており、これにはわれわれも同意します。それでも、発生源が深い謎に包まれていることは確かです」とシーミオン氏は言う。「宇宙には、技術を持った生命体を生じさせる能力があることは間違いありません。この可能性を最初から排除することは、科学者としては怠慢でしょう」
現在、研究の対象となっているのは主に超新星爆発の残骸で、極めて高密度で強力な磁場を持つ中性子星の「マグネター」だ。この回転する中性子星は、宇宙空間に向かって大きなフレアを発生させているが、フレアが連続した高速電波バーストと関連しているのかはまだわかっていない。
また、FRB 121102が活動がとても活発なせいで、マグネターの磁力が枯渇したということもあり得るとロー氏は言う。「電波バーストは恐ろしいほどのエネルギーを放出しているのです」
(文 Nadia Drake、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年9月6日付]