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相手に会わずに進める仕事 残念なメールは卒業しよう

日経ウーマンオンライン

2017/9/13

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メールでのコミュニケーションは、何かと誤解を招きがちです。プレゼンノウハウに詳しい池田千恵さんに注意点をお聞きしました。

■せっかくの配慮が裏目に出た残念なメール

先日、会社宛てに来たメールの中に、何をどうしてほしいのかがよく分からない文章があり、理解するために何度かメールを読み直し、やはりよく分からないので質問のメールをし、回答のメールを待つということがありました。

やり取りの経緯からすると、

・ 私が書いた本を講座のテキストとして使いたい

・ しかし都合により買うことができない

・ ついては送ってほしい

という意味だろうと、だいたいの推測はできるのですが、

「受講者負担が都合によりできない」

「主催者受領ができない」

「講師直接受領としてほしい」

など、漢字が多かったり、受講者は誰で、講師が誰で、主催者が誰で、という固有名詞もなかったり、送るのは郵送なのか、代金はどうするのかについてなど詳しい手順もなかったりで、はて、と考えてしまったのです。

以前の記事「『指示待ち残業』は防げる 3つのメール術で残業ゼロ」でもお伝えした通り、確認のためのメールを何度も往復させてしまうことが「指示待ち残業」が増える原因と考えており、このようなやり取りは私の仕事の中ではなるべく排除したいのですが、人生すべてネタ。飛んで火に入る夏の虫。送り主には申し訳ないですが、詳しい内容を推測されない形で今回の記事のいけにえとさせてもらうことにしました。

実は、メールを送ってくださった方とは以前から面識もあり、実際にお話しするととてもよい方です。失礼のないように、ないように、と丁寧に書こうとしたら漢字が多くなってしまったのだろう、簡潔に書こう書こう、と思ったら必要な要素まで抜けてしまってかえって分かりにくくなってしまったのだろうということも推測できます。ただ、すごくもったいないなとこのメールを見て思いました。メールだけを読んでいては、そのようなお人柄や、実際の仕事ぶりが伝わらないので、面識がなければ「分かりにくいメールを書く人」という印象だけが残ってしまうからです。

今後、働き方改革に伴うテレワークの普及や、グローバル化による海外の人とのやり取りが増えるにつれ、対面で会うことをほとんどせずに仕事が進められる状況も増えていくことでしょう。となると、せっかく配慮したつもりの文章が誤解され、仕事の進捗の遅れにつながる可能性があります。

対面でやり取りをせずに仕事を進める機会が今後多くなってくるからこそ気を付けたい、メールでのコミュニケーションのコツについて解説します。

ポイントは次の4つです。

1.自分の「ふと思った」感覚を信じる

2.漢字が多い表現をひらがなに変える

3.「念のためおばけ」に気を付ける

4.聞かれた質問にだけ答える

順番に説明しましょう。

1.自分の「ふと思った」感覚を信じる

気を利かせたつもりが一周回って意味が分からない行動をしてしまうこと、実は私にはよくあることです。(後で、しまった、と反省します)

例えば、取引先との会食の席で向かいの席の人のビールが空になりそうなとき、つぐかどうかの判断に時間がかかり、結局つがないという判断をしたけれど、実はさっとついだほうが印象がよかった、という場合があります。

「ぬるいビールが半分残っているところに冷えたビールをついでしまったら、ビールにこだわりがある人ならおいしくないから嫌かもしれない」

「最近は乾杯だけ付き合いでビールを飲む人が多いから、お代わりをつぐことはかえって迷惑かもしれない」

「そもそも女性だからってビールをつぐ役目をするのって、こびてるみたいで今どきおかしいんじゃないか?」

など、さまざまな思いを巡らせているうちに、隣の人がスマートにビールをつぎ始める姿を見て「ついだほうがいい、とそのとき思ったなら、あれこれ考えずについでしまえばよかった」と後悔することも。

この話は冒頭のメールの話と一見関係ないように見えるかもしれませんが、大いにつながっています。というのも、分かりにくいメールを書く人は、最初にふと感じた自分の素直な気持ちを疑ってかかっているからです。

ふと感じた感覚を、「いやいや、これじゃあ相手には伝わらない」と打ち消して、あれこれこねまわした結果、かえって意味不明な表現になってしまうことが多いのです。

2.漢字が多い表現をひらがなに変える

苦手意識を持つからこそ、それを克服すべくあれこれと考えてしまう気持ちは分かるのですが、実は「ふと思った気持ち」を大切にして、そのまま質問すれば済む話も多いのです。

頭の中にふとでてきた言葉が「受講者負担」「主催者受領」「講師直接受領」など、話し言葉で使わない表現ということはありえません。シンプルに「テキストが欲しい」「でもこちらでは事情があって買えない」「だからお手数ですが池田さんのほうで買って送ってほしい」と書けば、それでOKです。つい漢字で書いてしまった表現を、ひらがなにするだけでもだいぶ分かりやすさは変わってきます。

ちなみに、もしメールを送った相手から「このメールは、こういう理解でいいですか?」という質問のメールが返ってきたら、「あなたは分かりにくいメールを送りましたよ」のサインですので、発信力を鍛えるきっかけとしてみてください。

3.「念のためおばけ」に気を付ける

もう一つのポイントは「念のため」を疑うことです。(私は「念のためおばけ」と呼んでいます)

発信に苦手意識を持っている人は、分かってもらいたいと思うが故に、あれもこれもの情報を「念のため」と詰め込んでしまうことが多い気がしています。しかし、あれもこれも、念のためを繰り返して肥大した情報は、相手の「で、結局何が言いたいの?」の質問に太刀打ちできません。

例えば、相手に最終確認だけをしてもらえばよい資料を、「念のため現段階のものです」と途中経過を添付していませんか? 送られた相手は、最終確認だけすればいいはずなのに送られてきた、未完成の資料をどう扱ったらいいか迷ってしまいます。

先日もこんなことがありました。取材してもらったインタビュー記事を「途中ですが念のため送ります。最終的なチェックは、上の許可を得てからになります」というメールをもらったのです。

私の本音としては「私がチェックする段階じゃないものをなぜ、念のため送るのだろうか?暗にこの方向性でいいのか確認してほしいと思っているのだろうか?」というものだったので、質問メールをしたところ、「今はチェックしないで結構です」という返事が。だったら最初から送らなくてもよかったのでは……じっくり読む時間を取ってしまってムダだった、と思ってしまいました。

メールの「CC」機能も「念のため」おばけがよく出るものです。「念のためこの人の耳にも入れておこう」と、CCがものすごい人数になっていませんか? CCに入れられたメールを見ていないからといって、CCに入れられた相手を責めることはできません。「CCで入れましたけど」という抗議をするのなら、CCではなく直接相手にメールをすればよかっただけの話です。(ある企業の幹部に聞いた話ですが、CCメールは見ない、と決めているそうです。こういう方は忙しい人は特に多いです)

このようなミスは「念のため」を疑うことで防ぐことができます。念のためを疑った上で、それでも送らなければいけない、と思ったメールなら、その資料を送った理由と相手にどうしてほしいかを明確に伝えることができるはずです。

4.聞かれた質問にだけ答える

質問メールには、聞かれた質問だけ答えればよいのに、質問されると「責められている」と感じて言い訳をする人もいます。これも、前述の「ビールつぎで気を回し過ぎた人」のような状況です。

「はい」か「いいえ」で答えてくれれば済むメールに、「そうできなかった理由」と「今後の対策」は必要ありません。「そうできなかった理由」と「今後の対策」を教えてください、と言われて初めて、答えればよいだけの話です。先回りし過ぎたり、相手の意図を深読みする必要は何もないのです。

コミュニケーションに苦手意識を持っている人ほど、コミュニケーションをとても難しいものだと捉えています。シンプルに、思ったままを伝えようと心がけるだけでもだいぶメールのやりとりがラクになりますよ。お試し下さい。

池田千恵
株式会社 朝6時 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。外食企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。企業や官公庁、個人に向け、図を活用したプレゼンテーション資料作成術、企画書作成術や会議進行術など、「伝わる」コミュニケーション全般について指南。女性のキャリア形成、ダイバーシティなどをテーマに講演、著述活動も行う。「絶対! 伝わる図解」(朝日新聞出版)、「描いて共有! チーム・プレゼン会議術」(日経BP社)などプレゼン・図解に関する著書多数。最新刊は「朝の余白で人生を変える」(ディスカヴァー21)。

[nikkei WOMAN Online 2017年9月4日付記事を再構成]

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