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立川談笑、らくご「虎の穴」

座布団1枚に5分の押し問答 ゲリラ落語の困ったオチ 立川吉笑

2017/9/10

PIXTA

 毎週日曜更新、談笑一門でのまくら投げ。今週のお題は「困った話」。ということで、今週も次の師匠まで無事にまくらを届けたい。

 僕のような若手落語家にとって、仕事のほとんどは都内近郊での落語会だ。月に20日ほど大小様々な落語会に出演させていただいていて、その8~9割が都内近郊での落語会、残りが旅公演となる。

 落語会以外の仕事も少しだけあって、一つはこの連載がそうであるように書き物のお仕事。以前、『現在落語論』という単行本を刊行したことがあるおかげか、他の若手落語家に比べて、わりと文章を書く仕事はコンスタントにいただけている気がする。この連載の他にも、『水道橋博士のメルマ旬報』というメールマガジンと、『中央公論』という雑誌で、それぞれ月1回文章を書かせていただいている。

 「落語の創作・稽古」「落語の本番」「書き物」が普段やるべき作業で、そこに「読書」「飲酒」「ネット閲覧」「散歩」を足せば、それが僕の生活のほとんどとなる。

高座に上がる立川吉笑さん(東京都武蔵野市)

 そんな日々の中、たまにやってきて僕を舞い上がらせるのは「テレビ関係の仕事」。やっぱりテレビに呼ばれるとうれしいものだ。仲間と飲んでいるときには「俺たちは落語家だから、落語がやれたらそれだけでいいんだ。後は自分の落語を追い求めるだけだ」などと言っているし、そういう気持ちも確かにあるけど、それでもテレビに呼ばれるとうれしい。そういうものだ。

 そして、テレビに呼ばれたら万難を排して駆けつける。そういうものだ。

 今回はそんな、珍しく「テレビ関係」の仕事の話。

 ご縁があって中京テレビが運営する『Chuun(チューン)』という動画配信サイトの『笑ってOK!』という番組に出演させていただけることになった。

 打ち合わせを終えて、僕は本業ともいえる「短く編集した落語」や「なぞかけ企画」以外に、スタッフさんから提案された「ゲリラ落語」という映像作品を作ることになった。

 ゲリラ落語。

 聞きなれない言葉に、

 「それは何ですか?」

 と咄嗟(とっさ)に質問した。すると、スタッフさんからは

 「ゲリラでやる落語です」

 と返ってきた。

 「ゲリラでやる落語」でゲリラ落語。確かにそうかもしれないけど、情報量が一切増えていないし、何にも解決していない。

 「えっ、どういうことですか?」

 と、再び確認した。

 聞けば、「ゲリラ落語」とは、街の中でただただ落語をやることだった。

 街ゆく人々を落語会のお客様に見立てて、僕は街中でただただ落語をやる。それを少し離れたところから撮影することで、違和感みたいなものを1分くらいの映像に閉じ込めたいらしい。

 撮影当日、呼ばれたのは東京・渋谷。

 ゲリラ感を誇張するには通行人が多い方がいいとは思ったけど、まさか渋谷で撮影することになるとは。用意していただいた控室で着物に着替え、渋谷の街へ出る。

 着物姿というだけですでにチラチラ見られているというのに、僕はこれからこんな人通りの多い場所で落語をやらなければいけないのだ。

 「では、最初の撮影はここでいきましょう!」

 そうディレクターさんに言われ、嫌な予感は確信に変わった。

 目の前に広がるのは渋谷駅前、スクランブル交差点だった。

 信号が青になるたびに四方八方から押し寄せる人・人・人。

 そんなスクランブル交差点の前で落語をやることに。

 企画の演出としては、通行人役のカメラマンが街を歩いていると、どこからともなく出囃子(でばやし)が聞こえてくることに気付く。

(どこから鳴ってるんだろう?何の音だろう?)

 不思議に思いながらキョロキョロ辺りを見回すカメラマン。

 するとそこには大きな座布団が。

 (座布団? 何だあれ?)

 と、そこに着物姿の男が現れ、座り、

 「ようこそご来場いただきましてありがとうございます! 立川吉笑でございまして、一席お付き合いのほどお願い申し上げます」

 と落語が始まる、というもの。

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