これらはすべて形にすることで実現する効果です。

相手を理解し、相手が求めるものを理解し、形にすることこそがビジネスの根幹です。

そして、形にするためには、口で話すだけではなく自分の手を動かすことが重要なのです。

仮に「こんな感じで作っておいて」と伝えて、それをしっかりと形にできる部下や後輩に恵まれていたとすればその間は困ることはありません。しかしその部下や後輩が経験を積んでいくことで、やがて口だけで指示をしていた人の存在価値はなくなっていきます。

部下や後輩も、やがて知識や経験を手に入れるからです。そして形にしてきた経験があるから、顧客が求めることについてもより敏感になっていることでしょう。良いことを言うけれど形にできない人と、形にする力を持ち、良いことも言えるようになった人、どちらが周囲に求められるかは一目瞭然です。

OAスキルが重要だというわけではない

それはなにもOAスキルを高めようということではありません。

たしかに、ちょうど今の40代後半以上の人たちの中には、OAスキルが極端に低い人たちがいます。新卒で社会に出た頃は、卓上電話とメモ用紙が仕事のツールだった人たち。その後のIT技術が進化する中でも、タッチタイピングが面倒だからと練習せず、ワードやエクセルも「よくわからないからやっといて」と部下や後輩に丸投げしてしまっていたような人たちです。さすがにメールを操れない人はほとんどいませんが、それでも、履歴を残さなければいけないから必ずメールで連絡する必要があるようなことですら、すぐに電話で済まそうとする人たちもいます。

しかし大事なことはOAスキルの有無ではありません。別に手書きでもなんでも、形を示せるかどうかが重要なのです。

一番の問題は、自分で形にすることを忘れてしまうこと。忘却はやがてキャリアの価値の喪失につながってゆきます。

そうならないためにも、私たちは気づいた時点で、形として成果を残すことを意識しなければいけません。示したい意見の根拠と結論をしっかりと定義しつつ、それらを文書の形で残す。必要な補足情報があればそのための資料も用意する。

別にきれいなパワーポイントや精緻なエクセル分析が重要だということではないのです。手書きでだって問題ありません。

自らの価値を、見えて、残る形で示す。

自分の手を動かすことを怠らないでいれば、いなくてもよいおじさんになる可能性は激減し、いつまでも主要なメンバーの一人でいられるのです。

平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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