ドイツにはクナイプ療法が受けられる地域も含めて、国の規定に基づき審査、認定を受けた療養地「クアオルト」が約370カ所あり、専門医の処方で療養プログラムに参加すれば、医療保険が適用されます。また、ドイツには一定の頻度や期間で保養のための有給休暇が認められる制度があり、その制度を利用して各地のクアオルトを訪れる人も多いようです。

近年は日本国内でも、日本クアオルト研究機構と自治体の連携で、豊かな自然環境を生かした日本型クアオルトづくりが推進され、森林浴やウオーキングなどのプログラムを実施する動きが広まってきています。日本では残念ながら健康保険は適用されませんが、会社が費用の一部を負担する形で、社員にプログラムの体験を推奨する企業が出てきています。

企業研修ではコミュニケーションの活性化も期待

「TIME FOREST」プログラムより。森の中で横になり、瞑想する(写真提供:一般社団法人 森と未来)

2015年に設立された一般社団法人「森と未来」では、こうした森林浴を企業研修に取り入れ、目的や参加者、実施する地域などに応じて森林を活用した人材育成の研修を行っています。

代表理事である小野なぎささんは、大学の森林総合科学科で学んだ後、森を人の健康に活用したいという思いから、企業のメンタルヘルス改善に関わる事業に携わりました。さらに産業カウンセラーと森林セラピストの資格を得ながら、企業研修や講演の実績を積み上げています。

森林の多様性と循環、その癒やしパワーを五感で感じ取り、人間本来の感性を目覚めさせる森との時間を、小野さんは「TIME FOREST」とネーミングしました。そのコンセプトをベースにリーダー育成やメンタルヘルス、地域活性のプログラムを、関東周辺の森で実施しています。私もアドバイザーとして参画していますが、それらの企業向けのプログラムの一例をご紹介しましょう。

上記はあくまで一例であり、講義の内容はその企業や参加者の課題やニーズに合わせてカスタマイズして決めていきます。睡眠についてのレクチャーが入ったり、アロマセラピーを体験して、各自の気分や体調に合わせて精油をブレンドする講座などもオプションで可能です。ハラスメント予防やワークライフバランス、企業の社会的責任について学ぶことも企画しています。

このように、森林でのプログラムは、地域や季節、ガイドによっても内容が変わりますが、ポイントとなるのは見る・聴く・嗅ぐ・触る・味わうの「五感」への刺激が、森林の専門家が付くことで豊かで確かなものになっていくことです。

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