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森林浴で体験 ストレスに効く「4つのR」

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

「健康経営の取り組みの一環として、メンタルヘルス対策のプログラムに森林浴や森林での保養を取り入れてみたいと考えている。森林浴にはリラックス効果があると聞くが、企業研修ではどのようなことが行われていて、どんな効果が期待できるのだろうか」。これは、IT関連企業人事部勤務のTさん(42歳)からの質問です。森林浴の効果などについて、帝京平成大学現代ライフ学部教授の渡部卓さんに伺いました。

◇  ◇  ◇

従業員のメンタルヘルス対策のために企業が行う研修には様々なものがありますが、リラクゼーションを目的としたプログラムの中でも、私が特にお勧めしたいのが、「森林養生」を取り入れた研修です。具体的には、ガイドと共に森林を散策しながら五感を刺激し、呼吸法やヨガなどのリラクゼーションを体験するフィールド活動に、座学やディスカッションを組み合わせ、ストレス緩和やメンバー間のコミュニケーションの活性化を図る研修です。

私はストレスマネジメントに有効な方法として、「4つのR」を提唱しています(「休みベタな管理職ほどしっかり休む ヒントは4つのR」参照)。4つのRとは「リラクゼーション(Relaxation)」「レスト(Rest)」「レクリエーション(Recreation)」「リトリート(Retreat)」の頭文字をとったもので、森林養生ではこの4つのRすべてを組み合わせて、体験することが可能なのです。

森林浴は「Shinrin-yoku」として米国でも注目

森林や緑の多い場所を散策する「森林浴」という言葉は、皆さんもよくご存じだと思います。また、実際に森林浴で癒やされたり、安らぎを覚えたりしたことのある方もいらっしゃることでしょう。

森林浴という言葉は、1982年に林野庁が「森林浴構想」を発表したのが始まりとされています。都市部で生活している方はあまり意識されないかもしれませんが、日本の国土の7割程度は森林が占めていて、世界でも有数の森林国と言えます。林野庁から提唱された森林浴は、そうした自然休養林などの国有林を整備、有効活用して、森林でのレクリエーションを楽しみながら、心身の健康づくりに役立てようとしたものです。

この森林浴は近年、欧米でも注目され、米ワシントン・ポスト紙でも、カリフォルニア州などを中心に「Shinrin-yoku」(Forest bathing)として広まっていることが紹介されています。また、中国でも国を挙げて森林の整備、健康増進への活用の取り組みが進んでいます。

癒やし効果を科学的に実証した「森林セラピー」

森の癒やし効果は古くから感覚的、体験的に語られてきましたが、その効果を科学的に検証し、ストレスの緩和や心身の健康の維持・増進、病気予防などに生かすための取り組みとして誕生したのが「森林セラピー」[注1]です。

森林セラピーでは、森林ウオーキングなどの運動を通じたフィットネス・プログラムや、森林の中で呼吸法やヨガなどを体験するリラクゼーション・プログラムが行われます。また、食事はその地域の食材を使ったヘルシーな郷土料理が楽しめたり、近隣の温泉が利用できたり、医師による健康相談が実施されたりすることもあります。

森林セラピーの取り組みは2004年に、林野庁の支援のもとに産・官・学が連携し結成された、森林セラピー研究会(現NPO法人〔特定非営利活動法人〕森林セラピーソサエティ)などを中心にスタートしました。森林がもたらす癒やし効果の検証や、応用的な研究がなされ、都市部との比較実験なども実施。2006年には癒やし効果や病気の予防効果が科学的に認められ、かつ環境が一定水準で整備された森林地域を「森林セラピー基地」、散策路を「セラピーロード」[注1]と認定する制度も始まりました。

森林セラピーを推進するNPO法人森林セラピーソサエティによれば、森林地域と都市部での検証結果を比較すると、森林地域ではストレス時に高まる交感神経の活動が抑えられ、「ストレスホルモン」と呼ばれる唾液中のコルチゾールの濃度が低下することが分かりました。また、森林浴を行うと、緊張感や疲労感が緩和されて活気が増し、血圧や脈拍数が低下するなど、心理的にも身体的にも、リラックスした状態になることも確認されました。さらに、2日間の森林浴では、がん細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞(NK細胞)が活性化し、主な抗がんたんぱく質が増加することも確認されています。

自治体が保養地「クアオルト」を整備・活用する動きも

自然療法が公的に認められているドイツでは、1800年代後半にセバスチャン・クナイプ神父によって確立された「クナイプ療法」が浸透していますが、クナイプ療法の柱の1つである運動療法にも、森林散策が取り入れられています。

[注1] 「森林セラピー」「セラピーロード」はNPO法人森林セラピーソサエティの登録商標

ドイツにはクナイプ療法が受けられる地域も含めて、国の規定に基づき審査、認定を受けた療養地「クアオルト」が約370カ所あり、専門医の処方で療養プログラムに参加すれば、医療保険が適用されます。また、ドイツには一定の頻度や期間で保養のための有給休暇が認められる制度があり、その制度を利用して各地のクアオルトを訪れる人も多いようです。

近年は日本国内でも、日本クアオルト研究機構と自治体の連携で、豊かな自然環境を生かした日本型クアオルトづくりが推進され、森林浴やウオーキングなどのプログラムを実施する動きが広まってきています。日本では残念ながら健康保険は適用されませんが、会社が費用の一部を負担する形で、社員にプログラムの体験を推奨する企業が出てきています。

企業研修ではコミュニケーションの活性化も期待

2015年に設立された一般社団法人「森と未来」では、こうした森林浴を企業研修に取り入れ、目的や参加者、実施する地域などに応じて森林を活用した人材育成の研修を行っています。

代表理事である小野なぎささんは、大学の森林総合科学科で学んだ後、森を人の健康に活用したいという思いから、企業のメンタルヘルス改善に関わる事業に携わりました。さらに産業カウンセラーと森林セラピストの資格を得ながら、企業研修や講演の実績を積み上げています。

森林の多様性と循環、その癒やしパワーを五感で感じ取り、人間本来の感性を目覚めさせる森との時間を、小野さんは「TIME FOREST」とネーミングしました。そのコンセプトをベースにリーダー育成やメンタルヘルス、地域活性のプログラムを、関東周辺の森で実施しています。私もアドバイザーとして参画していますが、それらの企業向けのプログラムの一例をご紹介しましょう。

上記はあくまで一例であり、講義の内容はその企業や参加者の課題やニーズに合わせてカスタマイズして決めていきます。睡眠についてのレクチャーが入ったり、アロマセラピーを体験して、各自の気分や体調に合わせて精油をブレンドする講座などもオプションで可能です。ハラスメント予防やワークライフバランス、企業の社会的責任について学ぶことも企画しています。

このように、森林でのプログラムは、地域や季節、ガイドによっても内容が変わりますが、ポイントとなるのは見る・聴く・嗅ぐ・触る・味わうの「五感」への刺激が、森林の専門家が付くことで豊かで確かなものになっていくことです。

そのために、これらのプログラムでは、普通に歩けば1時間もかからないような森の中を、2時間かけてゆっくりと歩きます。ときどき立ち止まって、緑や空を仰いで目を休めたり、風の音や鳥のさえずりに耳を澄ませたり、樹木の葉の香りを嗅いだり、口に含んでみたり。裸足になって草や落ち葉の上を歩いたり、小川のせせらぎに足をひたしたり、各自がお気に入りの木を見つけ、木が天に向かうように「森呼吸」をしたり、シートを敷き横になって森の多様性や循環を感じながら瞑想をしたり……。さまざまな方法で自らの五感を刺激して、心身の感覚を目覚めさせます。

こうした森での研修を経て、振り返りのグループディスカッションなどを行うと、オフィスでのそれよりも朗らかに建設的な議論ができることが多いようです。実際に参加した企業の人事部の方からは、「森の中で自然体となり共に時間を過ごすうちに、反目していた社員同士の間に共通言語が生まれコミュニケーションが活発になった」「それまで知らなかった上司の素顔に触れて親しみやすくなった」といった声が寄せられたりしたという報告を受けました。

職場のES(従業員満足度)やエンゲージメント(組織のビジョンなどに向けての自発的な貢献意欲)に意識の高い米国の企業では、1年に1~2回は、リゾート地での研修が実施され、私も経験しています。日本では予算など難しい面もあると思いますが、ストレスマネジメントやモチベーションの向上などのためにも、ぜひ積極的に社員研修に取り入れてほしいと思います。

体験プログラムに参加し、森や自然との親しみ方を学ぶ

先述した森林セラピー基地やセラピーロードに認定された森は現在、全国に60カ所以上あり、企業研修を受け入れている地域もあります。認定の森をまとめたホームページから各地域の詳細説明や問い合わせ先が明記されたページが見られますので、確認のうえ、問い合わせてみるといいでしょう。

各地の森は個人でも訪れることができますが、アレルギー症状が出たり、スズメバチやクマに遭遇するといった懸念もあります。そうしたリスクを回避するためにも、初心者の場合は森をよく知るガイドが同行するプログラムに参加することが望ましいと思います。

ガイドが同行する森林プログラムで五感を刺激する方法を体験しておけば、緑が多い公園や神社など、都市部でも身近な森で、自分なりのストレスマネジメントを実践していくのに役立つでしょう。

【まとめ】

・森林養生ではストレスマネジメントに重要なリラクゼーション・レスト・レクリエーション・リトリートの「4つのR」をすべて体験できる

・「森林セラピー」は森林浴の癒やし効果や病気の予防効果が科学的に実証されている

・森の中で五感を刺激し、リラックスすることで、意識やコミュニケーションの改善も期待できる

・専門家による森林養生を体験しておけば、身近な森で自分なりのストレスマネジメントを実践するのに役立つ

参考資料

・小林功ら. 森林浴の歴史について. 群馬パース大学紀要第15号

・林野庁 研究・保全課研究班.「森林セラピー」推進への行政の関わり. 森林科学 48(2006年10月)

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渡部卓
 帝京平成大学現代ライフ学部教授、ライフバランスマネジメント研究所代表、産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ。1979年早稲田大学卒業。米コーネル大学で人事組織論を学び、米ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院でMBA取得。複数の企業勤務を経て2003年会社設立。職場のメンタルヘルス対策、ワークライフコーチングの第一人者。著書に「折れない心をつくる シンプルな習慣」(日本経済新聞出版社)など。

(ライター 田村知子)

[日経Gooday 2017年8月21日付記事を再構成]

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