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得々家計

子や孫への贈与 非課税枠は「学・住・婚」にあり

NIKKEIプラス1

2017/9/14

教育資金贈与信託が人気商品に

 祖父母が子や孫にお金を非課税で贈与できる制度が増えている。高齢者の財産を若い世代に移して経済を活性化させたい国の政策だ。資金使途や非課税枠などの条件を知っておこう。

 お金や不動産などの財産を一定以上もらうと贈与税がかかる。贈与された金額が大きいほど税率が上がって負担が重くなるが、もらい方や資金使途によっては非課税になる。ただし、いろいろな非課税制度が併存しているため、ランドマーク税理士法人の清田幸弘代表税理士は「どれをどう使えばいいか悩む人が多い」という。

 まず贈与税には、もらう人1人当たり年間110万円の基礎控除があることを知っておきたい。この範囲内であれば資金使途を問わず、贈与税はかからない。これは毎年1月1日から12月31日までの贈与で計算するので「暦年贈与」という。

 このほか、生活費、教育費など、その都度必要なお金の援助は原則非課税になる。「父母、祖父母は子どもや孫を扶養する義務があり、その費用に課税することはなじまない」(藤曲武美税理士)からだ。ただ「もらったお金を実際は使わずに運用に充てる場合などは課税対象になる」(清田税理士)。

 さらに、資金使途によってはまとまった金額を非課税で一括贈与できる。2009年にスタートした住宅取得資金の非課税贈与は、もらう人が20歳以上で年間合計所得金額が2000万円以下であることが条件。通常700万円(一定の省エネ住宅などは1200万円)まで非課税になる。国税庁によると昨年は約5万9000人におよそ4800億円が贈与された。

 13年から教育資金も非課税贈与できるようになった。30歳未満の子どもや孫1人につき1500万円が上限。金融機関に専用口座を作り、使途は学校の入学金、学習塾の費用など教育関連に限られるが、教育費を一度にまとめてもらっても課税されないのがミソだ。信託協会によると今年3月末で累計契約数は約17万9000件、およそ1兆2400億円が贈与された。

 15年から始まった結婚・出産・育児資金の非課税もある。こちらは20歳以上50歳未満の子どもや孫1人につき1000万円が上限。金融機関に専用口座を作る必要がある。

 こうした非課税贈与の仕組みを子どもや孫が使いこなすにはどうすればいいだろうか。辻・本郷税理士法人の浅野恵理税理士は「一度に多額のお金をもらうのだから、父母、祖父母には費用の詳細や今後の見通しを詳しく説明して納得してもらうことが大切」と助言する。

基礎控除を超える贈与は申告が必要

 ただ特定の子ども、孫にだけ贈与が偏ると兄弟仲が悪くなり、相続の際にもめる原因になるかもしれない。また親の家計への配慮も必要だろう。非課税枠が多いからと言ってかなりの金額を親からもらうと親の家計が回らなくなる。いったん贈与したが、親の家計がたち行かないので「もう一度親に戻すと課税対象になる」(藤曲税理士)ので注意が必要だ。

 夫婦どちらの親からもらうかもポイントだ。片方の親が孫の非課税枠を全部使ってしまったため、もう一方の親がへそを曲げてしまったという話がある。教育資金の非課税枠は1人当たり1500万円だから仲良く半分ずつ出してもらうのも手かもしれない。ただ、贈与する人が複数いても、専用口座はもらう人1人当たり一口座しか作れないので、どの金融機関を選ぶか調整が必要になる。

 父母、祖父母が自らの相続対策も念頭に置いている場合はどうしたらいいか。この場合は目的別非課税もさることながら、暦年贈与の基礎控除を長期間使って祖父母や父母の財産を移していくことを考えることが大切。もっともこのやり方も特定の子どもや孫だけに集中すると相続時にもめる場合があるので注意したい。

(後藤直久)

[NIKKEIプラス1 2017年9月9日付]

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