双眼鏡、手ぶれ補正で視界鮮明 遠くのアイドルも眼前
野鳥や動物の観察用と思われがちな双眼鏡だが、近ごろは観劇やコンサートを楽しむ人に売れている。特に注目されているのが、手ぶれ補正機構を搭載した高価格帯の製品。「補正なしがビデオ画質としたら、補正ありはブルーレイ画質のよう」と、評判が広まっている。
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双眼鏡といえば、野鳥観察やスポーツ観戦などで使う道具というイメージを持つ人が多い。実際、海外ではアウトドアでの利用が大半を占めている。だが、日本では舞台やミュージカルの観劇、ライブやコンサートで使うため購入する人が増えている。10倍タイプの双眼鏡を使えば、ステージから数十メートルも離れた遠くの席にいても、最前列にいるような迫力でお目当ての出演者の表情が楽しめるからだ。
10倍タイプ、まるで最前席
特に、アイドルグループのファンにとって、双眼鏡は欠かせない道具だ。先輩アイドルのバックダンサーとして舞台に立つ無名に近いアイドルの卵は、テレビ画面でアップで映ることはまずない。だが、コンサートで双眼鏡を使えば、隅や後ろのほうで踊るお目当てのアイドルの卵を大写しにできる。
ただ、双眼鏡は数千円から十数万円するものまで、価格差がかなり大きい。本体の大きさや重さもピンキリだ。どのように選べばよいのだろうか。
双眼鏡の性能は「8×25」といった具合に2つの数字で示される。最初の数字がレンズの倍率で、この数字が大きいほど遠くのものが大きく見える。後ろの数字が対物レンズ(前方のレンズ)の有効径で、この数字が大きいほど明るく見える。
小規模会場は5~8倍前後
倍率は、ドーム型球場や大型ホールなど大規模な会場ならば10倍以上の双眼鏡がベストだが、劇場や小規模のホールならば5~8倍の双眼鏡がよい。狭い会場で倍率が高すぎると使いづらくなるからで、用途に合わせて適切な倍率のものを選ぶようにしたい。倍率が変えられるズームタイプの製品もあるが、画質を考慮するとおすすめとはいえない。
薄暗い劇場やコンサート会場で使うなら有効径は大きいほうがよい。だが、有効径が大きくなるとサイズや重量が増し、価格もグンと高くなる。室内使用ならば、有効径を倍率で割った「ひとみ径」が3以上ある製品を選ぶのが目安といえる。
最近、観劇やコンサートなど室内で使う人が注目しているのが、手ぶれ補正機構(防振機構)を備えた双眼鏡だ。デジカメの手ぶれ補正機構と同様に、手持ちで発生する細かなぶれや揺れが軽減し、視界がピタッと安定する。
手ぶれ補正がない双眼鏡は数千円から手に入るが、手ぶれ補正機構を搭載したモデルは安いものでも3万円近くし、高いものは十数万円するので、双眼鏡のなかでも高価格品だ。だが、SNS(交流サイト)やブログでは手ぶれ補正のもたらす効果を「ビデオ画質がブルーレイ画質になった!」と驚きとともに表現する人が続出。熱心なファンの間で「どんな席も特等席に変えてくれる」と口コミで評価が広まっている。
手ぶれ補正のない機種で代表的なニコンの8倍モデル「アキュロンT01 8×21」は、わずか195グラムと軽量で、子どもでも手軽に扱える。店頭実勢価格は4300円前後だ。一方、手ぶれ補正機構を備え、画像が安定して見えるキヤノンの8倍モデル「8×25IS」の店頭実勢価格は2万8000円前後になる。重量は490グラムとやや重め。
ただ、双眼鏡は、スペックだけで性能を判断するのは難しい面もある。店頭で双眼鏡を手に取ってのぞいてみることが肝心だ。その際は、双眼鏡をベストな状態に調整してからのぞくことが重要。まず、両目でのぞいた際の視野が円形になるよう接眼部の幅を目幅に合わせよう。次にピントを調整。眼鏡を掛けている人は外した方がよい。
趣味を豊かなものにしてくれる双眼鏡、多少奮発しても後悔はしないだろう。
(日経トレンディネット 磯 修)
[日本経済新聞夕刊2017年9月9日付]
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