マネー研究所

Money&Investment

損失限定型の投信が人気 基準価格に下限値を設定 リターンは期待薄、保有コストも高め

2017/9/12

PIXTA

 相場が急落しても損失を一定の水準に抑えられる仕組みの投資信託が売れ行きを伸ばしていると聞きました。どのような仕組みなのでしょうか。

◇  ◇  ◇

 三井住友銀行が販売する「SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド(あんしんスイッチ)」は7月28日に運用を始め、同月中に613億円の個人マネーを集めた。月間の資金流入額は公募投信の中でトップ。純資産は約900億円に伸びている。

■「プロテクトライン」設ける

 同投信は「プロテクトライン」と呼ぶ下限値を設けるのが特徴だ。基準価格が下限値まで下がった場合、その時点で繰り上げ償還を決定。運用をやめて投資家に資金を返す。投資家が被る損失は限定される。

 設定時のプロテクトラインは9000円。その後は基準価格の動きに応じて切り上がる仕組みだ。基準価格が1万600円に達すれば1万円になり、さらに1万1111円に届けば、基準価格の90%相当が下限値となる。一度切り上がった下限値は、基準価格が後で下落しても下がらない。

 最大損失リスクを把握できるため、損を恐れる投資初心者にとっては安心感につながるだろう。しかし、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「投資において損失限定とは、リターン限定と同義語と考えるべきだ」と指摘する。

■「期待リターン、設定せず」

 運用を手掛けるアムンディ・ジャパンは「最大の目標は損失を出さないこと。期待リターンは設定していない」と説明する。世界の株式、債券、短期金融資産などに分散投資し、相場状況に応じて配分を見直すことでプロテクトラインを上回る安定収益を目指す。

 運用状況を確認してみよう。運用リポートによると8月14日時点で運用資産全体の約56%を、現金を含む短期金融資産に配分している。株式の比率は先進国を中心に約11%で、残りは先進国国債や高格付け社債などの債券。外貨建て資産はほぼ為替ヘッジ付きだ。

 損失を出さないことを目標とするため、必然的に低リスクでの運用となる。高いリターンを期待できる資産は一般に価格変動リスクも大きいため、組み入れに慎重なようだ。実際、設定日から9月7日までの基準価格の動きを見ると、最低が9971円、最高が1万10円。値動きの幅は39円にとどまる。

■コスト上回る運用成績か見極めを

 購入時の手数料はかからないが、保有期間中に差し引かれる信託報酬などは年約1.44%。うち0.22%は銀行に支払う保証料だ。仮に繰り上げ償還を決めた後、償還日までにさらに資産が値下がりした場合、差額を仏銀行クレディ・アグリコルが保証する。深野氏は「投資家は銀行の信用リスクを負う点にも留意したい」という。こうしたコストを上回る運用成績を上げられるかどうかを投資家は見極める必要がある。

[日本経済新聞朝刊2017年9月9日付]

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL