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イタリアのマエストロ、ルイージがかけ抜けた日本の夏

松本の音楽祭に4年連続出演、読響とは初共演

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NIKKEI STYLE

イタリアの世界的指揮者ファビオ・ルイージ(1959年ジェノヴァ生まれ)が今年8月下旬、1週間あまりの間に松本、東京、横浜で2つのオーケストラ、計4公演を振り、圧倒的な印象を残した。

 ◇   ◇   ◇

松本市では第26回セイジ・オザワ松本フェスティバルに招かれ、サイトウ・キネン・オーケストラとマーラーの「交響曲第9番」を8月18日と20日の2回、キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)で演奏した。ルイージの起用は2014年以来4年連続。総監督の小澤征爾を除けば、最も登場頻度の高い指揮者だ。マーラーの交響曲も過去に「第2番『復活』」「第5番」を手がけており、フェスティバルの売り物の一つになりつつある。

セイジ・オザワ松本フェスティバルでマーラー指揮者の存在感

小澤も米ボストン交響楽団の音楽監督を務めた時期(1973~2002年)に交響曲全集のCDを完成するなど、マーラーを得意としていた。「第9番」はサイトウ・キネン・オーケストラとも2000年12月~01年1月に松本、東京で演奏したが、冬の特別公演だった。夏の本フェスティバル期間中に同オーケストラが「第9番」に挑むのは、ルイージとが初めてに当たる。

過去に指揮した2曲が「超」のつく名演だったので期待したが、もともと形をつけにくい第1楽章がばらけているのにまず、驚く。いかに世界の名手を集めても、普段から一緒の楽団で弾いていないと、自然な一体感はなかなか生まれない。ルイージ自身、「第1ヴァイオリンのメンバーの多くが『この曲を弾くのは初めて』といい、それなりの苦労があった」と、リハーサルの舞台裏を明かす。だが管楽器のソロが活躍する第2、第3楽章の名人芸の連発がオーケストラ全体を引き締め、弦の分厚い合奏が長く同じ旋律を繰り返す第4楽章は非の打ちどころのない名演奏に結晶。客席も沸いた。

ルイージは今年4月、NHK交響楽団(N響)の定期演奏会で「第1番」を指揮。95年の初来日以来、N響や札幌市の国際教育音楽祭パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)のオーケストラ、サイトウ・キネンだけでなく、音楽総監督を務めていた時代のシュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン州立歌劇場管弦楽団)との日本ツアーでもマーラーを取り上げてきた。ここ数年はめがねをかけた横顔までが、指揮者でもあったマーラーに似てきている。

 松本での2回目の公演を終えた翌日、8月21日には東京へ移動。休むことなく、初の共演となる読売日本交響楽団(読響)との2回の特別演奏会(24日の東京芸術劇場と25日の横浜みなとみらいホール)のリハーサルを始めた。曲目の中心はドレスデンにゆかりの深い作曲家R・シュトラウスの交響詩2曲、「ドン・ファン」と「英雄の生涯」。間に「交響曲の父」と呼ばれるハイドンの「交響曲第82番『熊』」をはさんだ正攻法で、指揮者とオーケストラの「お見合い」には最適の選択だった。

読響との初共演、R・シュトラウスの基本に立ち返る

初日の練習の終わり近くに東京・池袋の東京芸術劇場へ赴き、ルイージの話を聞いた。

――読響とは全くの初共演になる。

「実は昨年8月の来日時、下調べを目的に、セバスティアン・ヴァイグレさんが指揮した読響定期演奏会を東京のサントリーホールで聴いた。偶然にもR・シュトラウスばかりのプログラムで、演奏至難の大曲『家庭交響曲』がメイン。過去に客演した多くの同僚が話してくれた通り、素晴らしいオーケストラで、高い技量を備えていることがわかった。今回、自分のリハーサルでも要求をすぐ実現し、響きやフレーズがどんどん美しくなっていくさまには、大きな喜びを覚えている」

――日本のオーケストラ全般に対し「技術は優れているが、響きの個性に乏しい」といった指摘が、特に欧米の音楽評論家からなされているが。

「私はオーストリア(グラーツ音楽大学、ミラン・ホルヴァート教授のクラス)で指揮を学び、トーンキュンストラー管弦楽団やジンフォニカー(ウィーン交響楽団)など長くウィーンのオーケストラと働き、ドレスデンの音楽総監督も務めた。つまり、マーラーやR・シュトラウスと直結したシューレ(流派)にどっぷり浸り、自らの音楽を究めてきた。先輩奏者が地元音大の教授を兼ね、世代から世代へとシューレを受け渡しながら、100年単位で独自の響きを育んできたウィーン、ドレスデンの伝統に匹敵するものが、一朝一夕に身につくと思う方がおかしい。同様に、若い音楽家がいくら傑出したテクニックを携えて現れ『天才』と宣伝されても、本当に心からの響きを奏でるまでには、うんと時間がかかるのも事実だ」

「日本では、例えばN響の場合、これまでサヴァリッシュ、シュタイン、ブロムシュテット……と、ドイツの古き良き伝統に立脚したマエストロたちを切れ目なく招いてベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、R・シュトラウスなどドイツ・オーストリア音楽の演奏法を吸収してきた。ただ、私たちの世代はN響や読響に、ウィーンやドレスデンのイミテーションを持ち込むのは間違いだと思っている。日本人楽員も国際的な傾向に漏れず、ヨーロッパや米国に留学するのが当たり前で、様々なシューレが混ざり合う結果、世界のオーケストラの音が均質化しつつある。現代の指揮者に課せられた使命は作品とシューレの基本を踏まえつつ、R・シュトラウスならR・シュトラウスにふさわしい響きをそれぞれのオーケストラの能力や個性を見極めながら、再現していくことにあると思う」

――これまでドイツ語圏での仕事が中心だったが、来年4月にはズービン・メータさんの後を受けてフィレンツェ五月音楽祭劇場(テアトロ・マッジォ)の音楽監督に就き、母国での大きな職責を手中に収める。

「私はつねに、働きたい場所で働いてきた。現在はチューリヒ歌劇場の音楽総監督(20年までの契約)とデンマーク国立放送交響楽団の首席指揮者(19年までの契約)を兼務している。ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場首席指揮者の契約は今年4月で満了となったが、今後もフィラデルフィア管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団など米国のオーケストラには客演していく。フィレンツェを引き受けた背景には、イタリアの文化政策への強い危機意識がある。かつて、イタリアの歌劇場は政府が手厚く保護していた。2000年に突然、独立採算の方針が打ち出され、民間スポンサーの獲得が欠かせなくなった。ところが米国や日本と違い、イタリアのスポンサーには文化支援の見返りとしての税の控除がない。これが大問題。イタリアの改革はいつも、第1歩が恐ろしい早さで実行されるのに、第2歩を伴わない。私はフィレンツェのシェフとして、税制の改善を求める運動の先頭にも立つ」

「メータさんとは良好な関係にあり、今後もフィレンツェで指揮していただくが、上演方針は劇場の中興の祖である大指揮者ヴィットーリオ・グーイの原点に立ち返り、毎年9月から翌年3月までを『ラ・トラヴィアータ(椿姫)』『リゴレット』といったポピュラーな演目、フィレンツェ五月音楽祭(マッジォ・ムジカーレ・フィオレンティーノ)会期中の4~5月は特別な作品に絞る。18年はヒンデミットの『カルディヤック』、19年はライマンの『リア』を私が指揮する予定。演出をかつてないほど斬新なものにするとか、何か特別な意義がない限り、マッジォに『アイーダ』『トゥーランドット』などの名作がかかる機会はなくなった、と覚悟してほしい」

 ◇   ◇   ◇

読響との初共演2日目、横浜みなとみらいホールの終演後、再び楽屋を訪れた。「初日より、リラックスできた。彼らも素晴らしく演奏してくれた」。めったにハイなテンションをみせないルイージだが、この日は破格に上機嫌だった。ハイドンの古典的に引き締まった響き、R・シュトラウスの豊麗でありながら、音の行間に隠された作曲家の内実のようなものまで感じさせた解釈のそれぞれが、世界一線のマエストロの仕事だった。だが、かつてドレスデンのシュターツカペレと来日した時のR・シュトラウス、N響やサイトウ・キネンとのマーラーなどの圧倒的成功に比べると、「一見(いちげん)さん」にできることの限界や、現在の読響のアンサンブルが抱える問題点などが、どうしても気になった。再度の共演に含みを残しつつ、ルイージは日本での夏を終えた。

(コンテンツ編集部 池田卓夫)

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