タイやチーフも粋に着くずす 南イタリア流の気品
「シャマット」オーナー、ヴァレンティーノ・リッチさん
一段上の格好良さにたどり着くには、トレンドに敏感であることに加えて自分のスタイルを確立することが必要です。「ファッション先進地域」といわれる南イタリア。今回は2002年、バーリ近郊に誕生したオールハンドメイドのサルトリアブランド「シャマット」創立オーナーのサルト(仕立て職人)、ヴァレンティーノ・リッチさんを訪問して、ファッションについての考え方を伺いました。
サルトの上質な仕立てによる美しいウエアが必要不可欠
「思春期、流行のブランド品を手に入れたくて祖父にお小遣いをねだったとき、祖父はこう言いました。『私のクローゼットから好きなものを全部持っていくといい』。初めて祖父のクローゼットに足を踏み入れたとき、そこにあったシャツ、ジャケット、スーツ、すべてが芸術品のような輝きを放っていて、僕はしばらく身動きできずにいました。美しいジャケットのフォルム、アイロンがかけられたばかりのシャツの匂い、今も忘れることができません。思えばあのときに受けた衝撃と感動が、今の自分の原動力になっているのかもしれません」(ヴァレンティーノさん)。
今も裁断は必ず自らがおこなっています。いわゆる、ファッションピープルとは一線を画した彼のサルトスタイル。それがピッティでの流行を生み出しているとも言われるほど、業界の一部では絶大なる支持を得ている洒落者中の洒落者です。
普段はブルー系を着ることが多いそうですが、夏場は(写真のように)ソラーロのコットンスーツの出番も増えるそう。カジュアルスタイルでは、デニムシャツを合わせるのが好み。ネクタイの結び方からチーフの入れ方まで、くずし加減が絶妙です。
ヴァレンティーノさんの「個性=スタイル」の作り方を探ってみましょう!
【STYLE 01】
シルクシャンタンを使ったブルー&ブラックのスモーキング。光沢があり「派手すぎ?」と思いきや、彼が着ると、ハッとさせるほどの美しさと落ち着きがあります。
ヴァレンティーノさん曰く、「サイズ感。そして自信をもって着ること」がポイントだそう。
【STYLE 02】
夏場、ある一定の気温を超えたら、このスーツの出番です。太陽熱を遮断するという最新テクニカル素材に、伝統的なテーラー技術を施したスーツは彼のスタイルの特徴です。「グレイは、あくまでも若々しくエレガントに着こなします」(ヴァレンティーノさん)。
【STYLE 03】
ゴールドボタンのブルージャケットに、デニムシャツでカジュアルダウンしてもこの気品。
「定番アイテムだからこそ、素材のクオリティやサイズ感を大事にしたい」と、ヴァレンティーノさん。大人の余裕を表現するのに、ピッタリの装いです。
【STYLE 04】
自宅に友人を招いてテラスで食事したり、休日家族と過ごすときの定番スタイル。
上下デニムにもかかわらず、こんなにエレガントに見えるのは彼だからこそ。カジュアルですが、このフィッティング感覚が上品さの秘訣でしょう。
クローゼットまで覗かせていただきました
【CLOSET 01】
ネクタイもチーフ同様、バラエティ豊か。比較的濃い色が多いようです。「インパクトの強い柄物のデザインも好きです」(ヴァレンティーノさん)。
ヴァレンティーノさんのようなベースがクラシックな装いには、こういった小物が映えるのです。
【CLOSET 02】
靴はデザインだけでなく、フィット感重視で満足できるものだけを所有。これはすべてビスポークです。シャマットでも、同じシューズをオーダー可能とのこと。
「もし僕と好みが同じだったら、ぜひ履いてみてほしいですね」(ヴァレンティーノさん)。
【CLOSET 03】
ジャケットの一部を公開。ヴァレンティーノさんが気に入っている、コーンケープショルダーのジャケットがズラリ。これらはすべてハンドメイドのス・ミズーラです。自身のスタイルが確立されているので、統一感がありますね。
【CLOSET 04】
その日の気分によって、瞬時にセレクトされるチーフ。そのときによって同色のグラデーションだっだり、逆にピリッと目をひく差し色だったり。シンプルリネン、光沢のあるスカーフ柄、ドット柄シルクなど、万能に使いこなします。
Photograph/Giovanni Santarelli,Stefano Triulzi,Massimiliano Ninni Coordination & Text/Miki Tanaka, Minako Shimada
[MEN'S CLUB 2017年 8月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。