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バイオリニスト神尾真由子 新企画は室内楽

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NIKKEI STYLE

バイオリニストの神尾真由子さんが11月、「室内楽プロジェクト」公演をする。2007年のチャイコフスキー国際コンクールに優勝して以来、世界を舞台にソロで活躍しているが、親しい仲間との室内楽への関心も強い。独奏やオーケストラとの協奏曲とは異なる仲間数人との室内楽の魅力を聞いた。

8月15日、ロシアから帰国したばかりの神尾さんとソニー・ミュージックスタジオ(東京・赤坂)で会った。彼女は夫のロシア人ピアニスト、ミロスラフ・クルティシェフさんとサンクトペテルブルクに暮らしている。子育てに忙しい中でも、公演のために頻繁に日本とロシアを行き来している。「ソリストなのでひとりの仕事が多い。ひとりで旅をしてオーケストラと1~2日合わせ、本番を弾いてまた次の場所に移動する。今回は子供を連れてこなかった。夫が留守番で子守をしている」と神尾さんは世界中を巡る演奏旅行の状況を語る。

無伴奏や協奏曲とはひと味違う室内楽の楽しみ

東京に到着して早々、さっそくバイオリンを取り出して弾き始めたのは、メンデルスゾーン作曲「バイオリン協奏曲ホ短調作品64」の有名な第1楽章。オーケストラはいないから、鳴っているのはバイオリンの独奏パートのみだ。「私の演奏活動はコンチェルト(協奏曲)のコンサートが全体の80%を占める」と話す。

無伴奏曲やピアノ伴奏によるバイオリンソナタとは異なり、バイオリン協奏曲はオーケストラとの共演だ。ただ、共演といえども「オーケストラと対決する構図」を持つ作品は多い。そのためか、メンデルスゾーンの協奏曲もバイオリンのパートがそれだけで自立した独奏曲として聴けるほどだ。バイオリニストのひとり旅の性格は、彼女が協奏曲の独奏パートを試奏するシーンからも見えてくる。

ひとりきりになりがちなバイオリニストにとって「ほかの音楽仲間たちと数日間のスケジュールを共にし、室内楽を演奏するのはとても楽しい経験になる」と神尾さんは言う。そして彼女が望んでいた室内楽の公演が今秋実現する。11月3日、東京オペラシティコンサートホール(東京・新宿)で開く「神尾真由子 室内楽プロジェクト」だ。彼女がメンバーを選び、それぞれの演奏家が賛同し、集まって練習し公演する。

室内楽プロジェクトの共演者はピアニストの佐藤卓史さん、ビオラ奏者の横溝耕一さん、チェリストの山上薫さん、コントラバス奏者の高橋洋太さん。「室内楽のコンサートをしないかという話をもらって、ぜひ引き受けたいと答えた。佐藤君は私がとても尊敬しているピアニストだし、よく共演していて、人間的にも一緒に仕事をしやすいし、音楽的にもしっかりしている人なので、すぐにお願いした。チェロの山上さんとはドイツで知り合って、日本でブラームスの『バイオリンとチェロのための二重協奏曲』を演奏したこともある。ビオラの横溝君は私の元同級生で、彼の紹介もあってメンバーが決まった」と説明する。

オーケストラに負けない厚みと深みを出せる

演目としてこのメンバー4人もしくは5人が弾く曲が挙がっている。基本は交響曲の作曲家であるマーラーの珍しい「ピアノ四重奏曲(断章)イ短調」、ブラームスの「ピアノ四重奏曲第1番ト短調」、それに神尾さんが最も弾きたがっているというシューベルトの「ピアノ五重奏曲イ長調『ます』」だ。ピアノ四重奏曲はピアノとバイオリン、ビオラ、チェロの4人、ピアノ五重奏曲はこれにコントラバスを加えた5人による演奏となる。

そもそも「室内楽」の定義は何か。同じパートを同じ楽器の複数奏者が弾けば合奏となり、その最大編成がオーケストラによる交響曲や管弦楽曲、協奏曲やオペラの管弦楽伴奏となる。逆に1人で弾けば独奏曲だが、2人ならばどうか。ここが微妙なところで、バイオリンとピアノによる「ソナタ」や2台ピアノやピアノ連弾などは「器楽曲」と呼ばれる。神尾さんはこれまでの自らのCDについて「バイオリンソナタやバイオリン協奏曲をレコーディングしたことはあるが、(3人以上で演奏する)室内楽はやっていない」と話す。弦楽三重奏曲やピアノ三重奏曲など3人編成から始まり、弦楽四重奏曲や弦楽六重奏曲なども含むが、合奏団やオーケストラにまでは至らない様々な演奏家数人による音楽を「室内楽」と言っているようだ。

室内楽曲を弾く楽しみを神尾さんに聞くと、「ハーモニーを作ること」を挙げる。「バイオリンはもちろん最も好きな楽器だが、弱点もある。自分1人でハーモニーやポリフォニー(多声部)を作るのが難しい点だ」と語る。バイオリンは弦4本を使って複数の音を同時に鳴らしたり、別々のリズムで複数音を組み立てたりすることが機能的に困難だからだ。「室内楽だったらハーモニーやポリフォニーを楽しめる。バイオリンやビオラの弦が奏でる音を様々に組み合わせれば、オーケストラに負けない厚みと深みを出せる」と室内楽の可能性を語る。

大量の室内楽曲を聴き始めるにはまず名曲から

室内楽はバイオリニストの演奏技術面から見るとどうなのか。「それはもちろん協奏曲の方が技術的には難しい。パガニーニやイザイが作曲したバイオリンの無伴奏曲などは演奏技術が難しい最たる分野だ」と指摘する。その一方で、室内楽では他の演奏家との息の合わせ方や間の取り方などを含め「経験がないと弾けない」と言う。「リハーサルではケンカになることも多い。トレーニングしてきた国や学校や先生が違うと意見が対立し、スムーズにいかない場合も多い」。自分だけでどうにかできる世界ではない。その代わりに「1人だけで弾く怖さはないし、オーケストラと対決する構図もないから、コンサートは楽しい」と話す。

神尾さんはソロで脚光を浴びてきただけに「室内楽の勉強をそんなにしてきたわけではない」と言う。「弦楽四重奏団一筋という演奏家もいるし、室内楽にキャリアのすべてを懸けている人もいる。その点をわきまえて『室内楽もできます』ではなく、『やらせていただいています』という謙虚な気持ちで、不定期に『室内楽プロジェクト』を開催していければいいなと思っている」。室内楽は聴き手だけでなく演奏家にとっても魅力的な分野なのである。

室内楽には名曲が多いことも神尾さんは指摘する。ただ、大量の作品が存在するため「どこで名曲に当たるか分からない人も多いと思う」。そんな人のために「曲が書かれた背景を知っていると聴きやすいし、内容が分かってくるから退屈しない」と神尾さんはアドバイスする。

室内楽入門としてはまず、どこかで聴いたことがある名曲から聴き始めるのがいい。神尾さんが薦めるのはシューベルトの「ます」。多くの人が名前だけは聞いたことがあるだろう。音楽の教科書にも載っている。「私の小学校では『ます』は給食の音楽だった」と彼女は思い出す。「その頃は私もあの有名なメロディーしか知らなかったが、作品全体はとても長い。『ます』のメロディーは全体のほんの一部分だったんだなと今では思う」。全5楽章から成り、演奏時間は約37分に及ぶ。第4楽章がシューベルト自身の歌曲「ます」から採ったメロディーによる変奏曲なのでその名で呼ばれる。

一流のソリストが親友と奏でる至福の室内楽

シューベルトは演奏家にとって弾くのが困難な作品を書いた作曲家でもある。バイオリンでもピアノでも弾きにくいという声を聞く。「歌曲中心の作曲家だったので、イメージするままに曲を書いていた。バイオリンが最も鳴る音域を考えていない。どう見てもいちばん鳴らない音域を使って作曲したりしている。速いパッセージでもないのに、あまりにも非合理的な指の動かし方を強いられるので、弾くのが難しい」と神尾さんは指摘する。

それでも「シューベルトは私が好きな作曲家。今回の室内楽プロジェクトでも当初から『ます』を弾きたいとお願いしていた」と彼女は言う。仲間と弾くのを楽しみにしている様子だ。今のところ室内楽曲をCDレコーディングする予定はない。「室内楽プロジェクト」の続編がいつになるかも決まっていない。ひとり旅の合間を縫って、自らも十分に楽しめる室内楽公演にも取り組みたい考えだ。

傑出したソロの腕前で活躍してきた演奏家が、ある時期から仲間との室内楽に傾倒する例は多い。神尾さんが尊敬し、20世紀最高のバイオリニストといわれるヤッシャ・ハイフェッツも、ピアニストのアルトゥール・ルービンシュタイン、チェリストのエマニュエル・フォイアマンやグレゴール・ピアティゴルスキーと共演を重ね、「百万ドルトリオ」と称賛された。ピアニストのマルタ・アルゲリッチさんや内田光子さんも室内楽に力を入れているようにみえる。一流のソリストは親友と室内楽を奏でる至福の世界にたどり着く。バイオリン協奏曲や独奏曲にはない魅力を室内楽から引き出せれば、神尾さんの新たな芸術世界が開けてきそうだ。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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