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つみたてNISA、18年開始 予想上回る120本が対象に 低コスト、長期・分散・積立投資を促す

2017/9/10

PIXTA

 「来年から始まる『つみたてNISA』って知ってる?」。夕食の席で幸子が恵に話しかけました。積み立て方式の新しい少額投資非課税制度(NISA)のことで、長期の資産形成に適した投資信託120本程度が当初の対象になるのだそうです。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中)  筧恵(かけい・めぐみ、25) 

  そもそもNISAって何だっけ。

 幸子 金融商品では通常、値上がり益や配当・分配金に2割の税金がかかるの。一定の投資額までこうした税金をかけないことで、資産形成を促す仕組みがNISA。非課税期間が原則5年の現行NISAは2014年から始まっているわ。来年からはもう一つ、積み立て型のNISAが出来るの。口座開設の受け付けは今年10月からよ。

 良男 なんでわざわざ違う仕組みを作るんだい?

 幸子 「長期・分散・積み立て・低コスト」という投資の大原則を多くの人に実践してもらうのが狙いね。非課税期間も20年間と長いし、分散投資を促すために対象から個別株をはずして、たくさんの銘柄に一度に投資できる投資信託や上場投信(ETF)に絞ったのよ。

  投資手法も違うの?

 幸子 現行NISAは年120万円までなら一度にまとめて投資してもいいけど、つみたてNISAは例えば毎月3万円というふうに積み立てでしか投資できないの。

 良男 文字通り積み立てにこだわった制度だな。

 幸子 現行NISAの口座数はすでに1000万を超えているけど、口座の半分以上が使われていないわ。口座は開いたけど、例えば「今投資したら値下がりするんじゃないか」などと考えて不安になり、なかなか踏み切れない人が多いの。

  気持ちはわかるな。

 幸子 でも投資って「何がいつ上がるか」を必ずしも当てなくてもいいのよ。例えば20年間の毎月積み立てなら、回数は240回。「一発勝負」でなくて「240発勝負」になるからタイミングはあまり重要じゃなくなるの。

 良男 なるほど。

 幸子 毎月定額なら、相場が高いときは少しの量を、逆に安いときはたくさんの量を買うので、投資の平均コストが抑えられて、成績がよくなるケースも多くみられるわ。例えば日経平均株価は最高値だった1989年末の3万8915円に比べて今は半値。でも仮に日経平均に連動する投信に90年以降、積み立て投資していたら、安いときにもたくさん買えているので今では4割弱の利益よ。

  知らなかったな。

 幸子 タイミングを計る投資より積み立てが常に好成績とは限らないけれど、結果的にうまく資産を増やせた例が国内外で広くみられるの。ちなみに世界全体で積み立て投資していたら、もっと大きな利益が出ていたわ。

 良男 対象の投信は金融庁が絞り込んだらしいね。

 幸子 具体的な商品名は10月2日の発表だけど、まず共通の条件として、利益を毎回払い出してしまう毎月分配型は除外したわ。ETFを除き、販売手数料は無料のものだけが対象よ。

 良男 共通の条件以外にも決まりがあるのかい?

 幸子 投信には日経平均株価や世界株指数など指数(インデックス)に連動するインデックス型と、運用者の腕で平均を上回るリターンを目指すアクティブ型があるわ。例えば国内資産が対象のインデックス型なら保有期間中に毎日かかる信託報酬が年0.5%以下、海外資産も0.75%以下がルールね。

  アクティブ型はコスト以外の条件も厳しいそうね。

 幸子 上がる銘柄を当て続けるのはプロでも難しい一方、信託報酬も高いので、アクティブ型の成績は市場平均を下回ることも多いわ。だから運用期間の3分の2以上で資金が流入超過など、実績が投資家に認められているものだけが対象なの。

 良男 なんだか絞り込みすぎの気もするな。

 幸子 日本の純資産上位の10投信で、つみたてNISAの条件を満たすのは0本。一方、米国の上位10投信をみると、8本がつみたてNISAの条件を満たすわ。従来の売れ筋投信が実は長期の資産形成にはベストではなかったってことかもね。

 良男 金融業界は「手数料が低すぎるのでもうからない」って不満らしいね。

 幸子 日本の投信が約6000本もある中、当初は50本くらいしか対象にならないともいわれたの。でも若い顧客層を広げる機会だという認識も広がり、信託報酬などを条件に合うよう下げた運用会社も増えてきたわ。8月末に金融庁が事前相談のあった投信の数を発表したんだけど、当初予想を大きく上回る120本にもなったの。

  その中身は?

 幸子 インデックス投信が99本、アクティブ投信15本、ETF6本。信託報酬の平均はインデックス型の国内株式で0.27%、同じく海外株式で0.37%とかなりの低コストよ。

  現行NISAと両方使えるの?

 幸子 どちらか一つだけだけど、毎年選べるの。例えば今年はつみたてNISA、来年は現行NISA、という選択もできるわ。つみたてNISAの場合は、例えば毎月3万円ずつA投信を買い、2回のボーナス月は2万円ずつ上乗せ、というふうに積立額や対象も併せて契約することになるわ。

■商品数など金融機関で差
ファイナンシャル・ジャーナリスト 竹川美奈子さん
 つみたてNISAの対象投信は120程度になりますが、金融機関で取り扱いは異なりそうです。ネット証券ではほぼすべてを対象にしそうですが、対面型金融機関では投信数を絞り込むところも出てきそうです。対象商品に加え、最低積立金額やサービス内容、販売姿勢をみて、長くつきあえる金融機関を慎重に選ぶことが大事です。
 つみたてNISAと現行NISAは1年ごとに選べますが、併用すると管理が大変です。どちらかに決めて継続するのが現実的です。つみたてNISAは非課税期間が長いので、資産形成層に向いています。一方、余裕資金がたくさんあったり、個別株に投資したかったりする場合は現行NISAが選択肢です。個人型確定拠出年金(iDeCo)と併せて利用するといいでしょう。
(聞き手は編集委員 田村正之)

[日本経済新聞夕刊2017年9月6日付]

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