なぜかいつもトラブル その生きづらさ、ADHDかも
ADHDとは、発達障害の一つ「注意欠如・多動性障害」のこと。原因は「先天的な脳の神経伝達物質のアンバランスという仮説があるが、よくわかっていない。以前は成人すれば症状は改善すると考えられていたが、今は成人の総人口の3~4%、約400万人がADHDといわれる。ADHDに対する認識が広がったことで、自分もそうではないかと受診する人が増えている」と昭和大学医学部精神医学講座の岩波明教授は言う。
ADHDの特性は、不注意、多動性、衝動性の3つ。「部屋を片付けられず、忘れ物やケアレスミスが多いのは不注意の症状の一つ」とどんぐり発達クリニックの宮尾益知院長。待つことが苦手で落ち着かないのは多動性の症状、思ったことをすぐに口に出してしまうのは衝動性の症状だ。「女性に多い症状は『おしゃべり』。特に人の話を遮っておしゃべりを始めたり、言わなくてもいいことをつい言ってしまう。これは多動性と衝動性によるもの。それが原因で他人との付き合いが苦手になることも」と宮尾院長は指摘する。
ADHDは不注意優勢型、多動性・衝動性優勢型、混合型の3タイプに分類される。大人になってADHDに気付くケースが多いのは不注意優勢型だという。「このタイプは、子どものころは、本人の努力や周囲のフォローで学校生活に適応しやすく見過ごされがち。大人になって職場や家庭のストレスを感じる状況下で適切な対応ができず、ADHDが明るみに出ることがある」と岩波教授は言う。
家庭では家事と育児をうまくこなせず、職場ではミスを連発。人間関係でもトラブルが起こりがち。「不真面目な社員、ダメな母親、付き合いづらい人と評価され、ADHD女性は生きづらさを感じている」(宮尾院長)。
次回の記事では、専門家による治療やケアの手法について紹介する。
昭和大学医学部精神医学講座教授。医学博士、精神保健指定医。発達障害の臨床研究を行う。2015年より昭和大学附属烏山病院長を兼任、ADHD外来を担当。著書に『大人のADHD』(ちくま新書)ほか。
どんぐり発達クリニック(東京都世田谷区)院長。医学博士。専門は小児精神神経学、発達行動小児科学、神経生理学。発達障害の臨床経験が豊富。監修書に『女性のADHD』(講談社)ほか。ADHDの子どもの親も診療を行っている。
(ライター 海老根祐子、構成:日経ヘルス 羽田光)
[日経ヘルス2017年10月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。