ももクロ 「不動の5人」が長く、幅広く愛される理由
2008年5月に結成されたももいろクローバーZ(以下、ももクロ)。10周年は目前だがその勢いは今も変わらない。5年連続でスタジアムライブを開催し、レギュラー番組は長期化。ファン層は老若男女へと広がっている。メンバーの卒業、加入を繰り返す女性アイドルグループが多いなか、6年以上もメンバーは固定。「不動の5人」が長く、幅広く愛されているのには、3つの理由がある。
ももクロのメインの活動となるライブでは、8月5、6日に味の素スタジアムで「ももクロ夏のバカ騒ぎ2017」を開催。これで恒例の夏ライブは、日産スタジアムでの「夏のバカ騒ぎ2013」から数えて5年連続のスタジアム開催(14年からは2Days)となる。観客動員力の高さは相変わらずだ。
冠番組も長寿化するものが目立つ。テレビ朝日などで放送されている『ももクロChan』は、10年にテレ朝動画の有料配信番組としてスタートし、7年目となる。13年から地上波でのオンエアが始まった際には、「地上波より約20分長いとはいえ、有料のテレ朝動画の視聴者は減るのではないかという懸念もあった。しかし、もっと濃い内容を見たいというコアなファンが多く、視聴者数はほとんど変わっていない」(『ももクロChan』プロデューサーの浅野崇氏)と言う。ニッポン放送での冠ラジオ番組『ももいろクローバーZ ももクロクラブXOXO』も、今年春から6年目に突入している。
新番組は幼児がターゲット
老若男女へとファン層が広がっていることも、大きな特色だ。4月からは幼児向け知育番組『ぐーちょきぱーてぃー』が、Huluでスタート。3~5歳をターゲットにした番組の効果もあってか、最近はライブ会場に親子連れの姿が目立つ。一方、加山雄三やさだまさし主宰のコンサートに出演するなど、ベテランとの共演も多く、中高年層での認知度も高い。
多くの女性グループは新鮮さをキープするために、メンバーの卒業や加入を繰り返す。しかし、「Z」に改名後、6年以上もメンバー固定のももクロが、「長く」「幅広く」愛されるのはなぜだろうか。
1つ目は、「常にチャレンジを続ける姿勢」だ。ももクロは結成当初から『NHK紅白歌合戦』出場(12年)、国立競技場ライブ(14年)といった目標を掲げ、それに向かって全力で挑む姿をファンは応援してきた。最近はさらに大きな会場でのライブといった目標こそないが、『ももいろフォーク村NEXT』で生放送でのパフォーマンスと楽器演奏(14年~)、映画と舞台『幕が上がる』主演(15年)など、新しい試みを続けている。今年も地方自治体と組んで市営の運動場に会場から作り上げた大規模ライブ「春の一大事」、47都道府県ツアーなどに乗り出した。
『ももクロChan』の担当として初期からグループを見てきたテレ朝の鈴木祐啓氏は「常に新しいことに挑み続けているので、その成長を見届けたいというファンは今も同じ目線で応援できる。その一方で、様々な経験を積んだことから、バラエティの企画1つとっても以前より格段に面白いものを見せられるようになってきた」と語る。47都道府県ツアーでは舞台裏に定点カメラを設置したところ、メンバーがグルメレポートやモノマネなどカメラを使って勝手に遊び始めた。「テーマを伝えれば自分たちで企画を成立させられるように、自己プロデュース力が高まっている」と言う(『ももクロChan』プロデューサーの吉田学氏)。
恋愛「妄想」相談も話題に
2つ目は、「結成当初から変わらない身近さ」。ももクロはライブの規模が大きくなる一方、プロモーションで突然地方のCDショップを訪れることなどもある。ユーストリームなどを使った配信も頻繁に行い、楽屋裏などからリラックスした雰囲気の表情も届ける。
ニッポン放送の『ももクロくらぶXOXO』を担当する杉山直氏も「10年近く活動しているのに、最近ようやく芸能人の友達ができたと話すくらいに、どのメンバーも芸能界の色に染まっていない。パワフルなパフォーマンスができるのに、素顔は一般の人に近いのがももクロの魅力です。最近はリスナーからの恋愛相談に経験のないメンバーが妄想で答える企画が人気で(笑)、10代女性からのメールなども増えています」と言う。
また、『ぐーちょきぱーてぃー』も手掛けるキングレコードの宮本純乃介氏は、「何事にもまじめでひたむきに向かう姿勢は昔から一貫して変わらない。清潔なイメージも強く、そうした点も子どもや親御さんが共感して楽しんでもらえる要因」と見る。
3つ目は「活発化する個人活動」だ。ももクロはこの1~2年、女優や声優、ソロコンサートの開催など、メンバー個々の活動を強化してきた。こうしたチャレンジは5人の個性を際立たせ、それぞれのメンバーを「推す」ファンにとって、さらに応援に熱が入る要因ともなる。また、百田夏菜子が中高年女性が中心視聴者の朝ドラ『べっぴんさん』に、佐々木彩夏は若手アイドルが集結するイベント「TOKYO IDOL FESTIVAL」など、従来のももクロファン以外にもアピールできる場に出ることで、ファン層の拡大につながっている面もある。
最近は男性アイドルのように、「息の長い活動ができる存在を目指す」と公言するももクロ。女性アイドルの常識を変える存在として、その快進撃は続きそうだ。
(ライター 高倉文紀、日経エンタテインメント 山本伸夫)
[日経エンタテインメント! 2017年9月号の記事を再構成]
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