どうしても物欲を抑えられません
著述家、湯山玲子さん
バブル世代です。若い頃はブランド物に囲まれていましたが、身軽に暮らしたいと思い始めました。でもどうしても物欲を抑えられず、ついつい買い物をしてしまい、主人に「いい加減にしろ」と言われます。どうすれば物欲と縁を切れますか。(東京都・50代・女性)
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世代に関係なく、ほとんどの人が買い物をエンターテインメントとして楽しんでいる現状を認識しなければなりません。「日本はおカネを払えば楽しいことがいっぱいあるけれど、そうでなければ居場所すらない」と、これ日本を良く訪れている外国人の友人の言葉です。
たとえば今、おカネがない若者たちは路上でたむろしますが、いい年した女性がやるわけにはいかない。居場所はおカネを払ってこそ入れる街中のカフェ。でもそんな場所がない地方では買い物だけが娯楽になってしまうのも致し方ない……。
買い物には「お客様は神様」というサービスを受ける快感があります。おカネを払えば常に、自分が優位で居心地の良い会話が店員と楽しめる。加えて買い物はハンティングの魅力にあふれています。狩人と化した消費者は「ムリ目の値段だけど勇気を出してゲットしちゃえ!」とアドレナリンを放出させ、結果、高揚感と達成感を得る。要するに相談者氏の悩みは「チヤホヤされること」と「高揚感」というお買い物エンタメの快感部分を、いかに他のものに転化できるかにかかっているのです。
チヤホヤは、実は権力や美やおカネを持っていることの対価だったりもしますが、最もお手軽なところで、クローゼットのものを着こなして「おしゃれ」の域を目指すのもアリでしょう。女性誌には「センスの良い着こなし例」が山のように載っているので、もし本気で狙うなら、努力が実を結ぶ率は高い。
高揚感は「ムリ目→工夫や努力→達成」というサイクルから得られるので、日常的に冒険を取り入れてみてはいかが? 屋久島にひとり旅に出かけて、縄文杉の前で自撮りをしてSNSにアップすれば、達成したという高揚感とともに、チヤホヤも手に入るかもしれません。
しかしながら、こうしたチヤホヤや高揚感は、消費から得られるソレより「面倒くさい」ということを肝に銘じてください。重要なことは、お手軽な消費エンタメを続け常におカネの不安を抱えながら、そういう自分を好きになれないというコンプレックスで人生の後半戦を彩っていいのかという話。自分を損ねる中毒的な消費から、自分を生かす「生き金」に意識を変えることをオススメします。
[NIKKEIプラス1 2017年9月2日付]
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