B・ピットが動画配信大手と映画 テーマ・予算が魅力
米人気俳優のブラッド・ピットが代表を務める製作会社プランBエンターテインメントが動画配信サービス大手のネットフリックスと組み、オリジナル映画「ウォー・マシーン:戦争は話術だ!」を製作した。映画館での公開はなく、日本を含む世界190カ国で配信がスタートした。
舞台は2009年のアフガニスタン。オバマ大統領は戦争を収束すべく、歴戦の英雄グレン・マクマーン陸軍大将を駐留米軍の新司令官として送り込む。彼はアフガニスタンを自由で平和な国に建て直すために猪突猛進。米軍の早期撤退を望むオバマ政権を翻弄する……。ピットが主演とプロデューサーを担当。ストイックな愛国者のマクマーンをコミカルに、そして皮肉たっぷりに描く。
プランBはなぜ、ネットフリックスでの配信を選んだのか。プランBの共同社長デデ・ガードナーは「このような反戦・反体制映画は(集客できるか分からず)リスクがあると判断され、製作資金が集まりにくい。今も続く事件を描いており、資金を出す側はおじけづくことが多い」と語る。
大手スタジオは、確実に集客が見込めるアクション映画などに巨額の資金を投入するが、大人向けの社会派ドラマは製作を避け、あまり予算をかけない傾向にある。プランBが大手スタジオと13年以降に製作した作品のうち、アクション大作「ワールド・ウォーZ」を除く5作品が製作費1000万~2800万ドルだ。
一方、チャレンジングな企画はインディペンデント系映画会社が担い手。好例が「ムーンライト」だ。貧困層の黒人でゲイの青年を主役にしたこの作品は、プランBがインディーズ系のA24と製作。今年のアカデミー賞作品賞を受賞した。
自由に作ることができるというネットフリックスとインディーズとの最大の違いは製作費だ。「ムーンライト」が150万ドルに対し、「ウォー・マシーン」は6000万ドル。続く「オクジャ/okja」は5000万ドルという。
プランBの共同社長、ジェレミー・クライナーは「ネットフリックスは作り手からエネルギーを引き出し『何か新しいものができるぞ』と希望を感じさせてくれる」と語る。大手ではチャレンジングな企画だが、インディーズには予算が大きい作品がネットフリックス向きといえそうだ。
ネットフリックスの配信システムは製作者には魅力だろう。通常、映画館での興行収入の半分が配給会社の収入。そこから宣伝費や手数料を引いた分が製作側の取り分だ。一方、ネットフリックスの映画は全世界の1億人の加入者に向けて配信する。大手とインディーズの間を担うネットフリックス。今後も映画界を活性化していきそうだ。
(「日経エンタテインメント!」8月号の記事を再構成。敬称略。文/相良智弘)
[日経MJ2017年9月1日付]
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