カーオーディオ、進むスマホ連携 音声入力操作に魅力
スマートフォン(スマホ)の普及に伴い、自動車内のエンターテインメントシステムが急速にスマホに接近している。
アップルのiOSにはApple CarPlay、AndroidにはAndroid Autoというスマホとクルマのエンターテインメントシステムを連携する仕組みがある。両陣営とも自動車メーカーと組んで、スマホネーティブな環境を進めつつある。
今回はApple CarPlay、Android Autoの両方に対応する車種をいち早くラインナップしているメーカー、アウディジャパンの田代友康プロダクトマーケティングマネージャーに話を伺いながら、実際の使い勝手を試した。
なお車両はAudi A5 Coupe 2.0TFSI quattro sportを使用。全グレードでApple CarPlay、Android Autoに標準対応する。
野間:まずApple CarPlay、Android Autoの機能と、従来のアウディのクルマでオーディオやナビゲーションを司ってきたマルチメディアインターフェース(MMI)の違いについて教えてください。
田代氏(以下、田代):MMIは車両に搭載されているシステムでナビゲーションやオーディオなど、様々な機能を網羅しています。アウディユーザーにとっては慣れたインターフェースです。MMIにはインターネットに接続したサービスもあります。
Apple CarPlayやAndroid Autoは慣れているスマホのインターフェースそのままで使えるのが特徴です。特にSiriなど音声認識を使ってナビゲーションやメッセージ送信できるのは強みです。
例えばナビゲーションを起動するにはステアリングに装備されたマイクボタンを押して音声認識インターフェースを起動し、「東京タワーに行く」と発話します。それだけで目的地がセットされ、アップルマップやグーグルマップを使ったナビゲーションが即座にスタートします。
メッセージ機能は同じく音声認識を使い、連絡先に登録したユーザーを指定、メッセージを音声認識で入力し送信します。また返信があった場合は同じく読み上げ機能を使いメッセージを聞くことが可能です。ドライバーは目線をディスプレーに移動することなく、安全にメッセージのやりとりができます。
もちろんハンズフリー電話をかけることも可能です。こちらも連絡先に登録したユーザーを音声入力で指定することができるため、コントローラーを左手で操作したり、目線移動することがないので安全性が高くなっています。
野間:これまでUSB接続、Bluetooth接続などで携帯電話やスマホを車両と接続することができましたが、それとの違いはなんでしょうか?
田代:アップルの場合であれば、Apple MusicやAmazon Musicなどのアプリをそのまま使え、シャッフルプレイをSiriの音声コマンド入力で直接再生するといった使い方ができます。特に口語に対応し、「近くのラーメン屋へ行く」といった抽象的なコマンドが使えるのはスマホならではの機能でしょう。
野間:iPhone陣営とAndroid陣営で世界を二分している状況で、片方にしか対応していないメーカーも多いです。この中でアウディはなぜ両方にいち早く対応したのでしょうか?
田代:日本市場ではiPhone陣営がシェアが高いですが、世界的に見るとAndroid陣営のシェアが高い。アウディはワールドワイドで販売しているので、様々なユーザーに使ってもらえるように両方に対応しています。ただiPhoneとAndroidではシステムの設計思想が異なる点もあり、両方に対応して行くのは非常に大変です。これはメーカーとして親密に開発することで最終的に綺麗にまとまった、使いやすい形になっています。
野間:具体的にiPhoneとAndroidとでは、どのように違うのでしょうか?
田代:iPhoneの場合はホーム画面のようなアイコンが並ぶようなインターフェースです。一方Androidはカード形式となっており、上下にスクロールして選択するようになっており、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)としては全く違います。一方音声認識は同じで、ハンドルに設置されているマイクボタンを押すことで音声認識が起動します。
Apple CarPlayはiPhone搭載のiOSに標準搭載されているため、最新のiOSであれば接続するだけですぐに使えます。一方Androidでは Android Autoというアプリをあらかじめインストールする必要があります。
野間:「Audi」という名前でアプリを検索すると「MMI connect」というアプリが出ますが。
田代:MMI connectは車両に搭載されているMMIをコントロールするアプリです。マップを車に送ったり、リモートでロック&アンロック、ステータスレポート、カレンダー連動などが可能な別アプリです。逆にCarPlayやAndroid Autoではロック&アンロックやステータスレポートは使えません。
また「MMI connect」は車両に搭載されるSIMを使って通信をしており、通信量は毎月1GBまでの契約で新車購入時から3年間無償です。その後は2年間延長可能で、費用は2年間で3万6720円(税込み)となっています。ほとんどのユーザーが初回車検時に延長しています。
Apple CarPlayやAndroid Autoでは通信はスマホ側のSIMを利用します。
野間:ナビゲーション機能は車両搭載のMMIにもあり、Apple Carplayのアップルマップや、Android Autoのグーグルマップにもあります。機能がかぶっていますが、どんな違いがあるでしょうか?
田代:例えば、行き過ぎてUターンしなければならない場面ではMMIナビゲーションが早めの場所で指示してくれるのに対し、アップルマップやグーグルマップはかなり遠くまで行かないと指示が出ません。また複数地点の経由地設定ができるのはMMIナビゲーションだけとなり、メーターパネル内に地図が表示されるので見やすいです。一方スマホナビでは方角のみとなります。まとめるとMMIナビは多機能かつきめ細かいというところでしょうか。
一方スマホナビの良い点は起動がスピーディ、目的地が1箇所で明確になっている場面で、音声認識を使って指示するとすぐにナビを開始できる点でしょう。MMIナビはセンターコンソールに設置されたコントローラーを使って目的地設定を階層的に設定する必要があり、かなり手間になっています。
また右ハンドルモデルの場合、MMIを使うときに左手でコントローラを動かすことになるため、右利きの人にはやりにくいこともあります。その点でも音声認識が使えるスマホナビに軍配が上がります。
野間:ロングドライブで多数の目的地があり、じっくりと設定できるときはMMI、普段のりでパッとどこかに行きたい場合は音声入力でスマホナビが早く使いやすいので、使い分けると良さそうですね。
◇ ◇ ◇
スマホを日常から使いこなしているユーザーにとって、自分の慣れ親しんだインターフェース、スマホ内部の音楽コンテンツを利用したり、アプリを使うことができる Apple CarPlay、Android Autoは非常に魅力である。
特に、最近ではストリーミング音楽サービスが充実しており、わざわざ音楽コンテンツをスマホ内にダウンロードする必要もなく、好きな音楽を好きなだけ聞くこともできるようになってきた。キャリアの回線契約も格安SIMと呼ばれる大手キャリア以外が提供している回線サービスを利用すれば、比較的安価に大容量のデータ通信をすることができる。
一方車両に搭載されている従来のカーエンターテインメントシステムは多機能できめ細かなサービスが魅力であるが、タッチパネルに対応していないことや、コントローラーを左手で使わなければならないなど、煩雑な面も持っている。またレンタカー、人のクルマを運転するときは、慣れていないために特に使いにくく感じるであろう。
一長一短があり、どちらが優れているというものでもない。目的によって使い分けるのが賢い使い方といえるだろう。
今後対応車種が増えていくが、使用しているスマホに対応するメーカー、車種を選ぶ、という選択もありえる。対応車種を購入した場合、ぜひ活用していきたいものだ。
(ライター 野間恒毅)
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