ゲームで対戦「eスポーツ」 世界にファン1億人
勝者が決まった瞬間、会場に詰めかけた人から上がる歓声。視線を集める選手たちがみせたのは、力の強さでも足の速さでもありません。コンピューターゲームのうまさです。8月26日に千葉市で開かれたオンライン対戦ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」の日本リーグ決勝戦には4000人を超えるファンが観戦に訪れました。
こうしたゲームを競技と捉え、チームなどで競う「eスポーツ」が注目されています。8月に米国で開いた「Dota2」というゲームの大会の賞金総額は2478万ドル(約27億円)に上りました。
ゲーム市場などのリサーチ会社Newzooの調べでは、2016年のeスポーツ業界の収益はおよそ世界で4億9300万ドル。他のメジャースポーツと比べれば小規模ですが、米国を中心に急拡大しています。海外事情に詳しいジャーナリストの渡辺史敏氏によると、引退した元プロスポーツ選手がeスポーツのチームを買収して参入する例もあるそうです。
メジャースポーツからの参入もあります。米プロバスケットリーグのNBAは18年からバスケットボールゲームのeスポーツリーグを開催する予定です。
eスポーツが注目される背景には「既存スポーツのファンの年齢が高くなり、eスポーツによって若者にアプローチしたい」(渡辺氏)という事情があります。16年時点のeスポーツのファンは世界におよそ1億6200万人。このうち半数以上は35歳以下という調査があります。若者の関心を引きつけるために既存スポーツなどもデジタルの世界に入り込んできたといえます。
日本のeスポーツは「海外と比べて7年くらい遅れている」(日本eスポーツ協会の筧誠一郎事務局長)そうです。家庭用ゲーム機が浸透した日本ではゲームは友人や家族と楽しまれ、「競技」と捉える人はまだ少ないためです。ただ娯楽の多様化によって若者がスポーツなどから離れがちという背景は日本も同じです。景品表示法によって高額賞金の大会を開きにくい事情もありますが、様々な工夫によってeスポーツを若者の取り込み策として生かす動きは出てきそうです。
■Sun-Gence社長の梅崎伸幸氏「日本市場、スマホゲームに強み」
日本でのeスポーツの現状などについて、プロeスポーツチーム「デトネーション・ゲーミング」を運営するSun-Gence(千葉県市川市)社長の梅崎伸幸氏に聞きました。
――デトネーション・ゲーミングにはいろいろなゲームタイトルのチームが所属しています。海外でもそれが一般的なのでしょうか。
「そのゲームタイトルがいつ終わるかも分からないし、チームが不調に陥るかもしれない。人気ゲームタイトルをいくつか持っておくことが大事だ。人によって好きなゲームが違うので、いろんなファン層をカバーできる」
――プロとして活躍できるのは何歳までなのでしょうか。
「ゲームタイトルによって違う。格闘ゲームだと、30歳をこえても活躍している人がいる。ただ、近年は25歳くらいが引退ラインと言われている。より若いプレーヤーに反射神経で負け出す時期ということもあり、将来に不安を覚える。将来に不安を覚えるとなかなかゲームに集中できなくなるので、そうなったら引退した方がいいということになる」
――これまでプロeスポーツチームを運営してきて分かったことはありますか。
「最初はeスポーツを日本で広めていくためには海外と同じやり方でいいのだろうと思っていた。しかし、日本と海外で実力差があるにしても、マーケティング規模の違いが根本的な問題になった。日本では市場規模が小さ過ぎてチームスポンサーを取れない。例えば、アメリカの有名トップチームは1社のスポンサーだけで4、5千万円だが、日本の場合は10分の1以下がほとんどだ。海外のいい選手を引き抜くことや、いいコーチを雇うことも難しい」
――今後、日本での市場規模が大きくなることはありえますか。
「日本の特色があって、海外と比べてスマホゲームが強い。日本のメーカーもスマホでのeスポーツを意識したタイトルを作り出している。もっと増えていけば、状況も変わってくるのではないかと思う」
(久保田昌幸)
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