エンタメ!

井上芳雄 エンタメ通信

役者は何でもできないといけない(井上芳雄) 第5回

日経エンタテインメント!

2017/9/2

井上芳雄です。前回までラジオ、ナレーションと今年からしゃべりの仕事が増えたことを話しました。僕はミュージカル俳優が本業だと思っていますが、それだけやっていればいいという考えではありません。松本幸四郎さんがよく「役者は何でもやる必要はないけど、何でもできないといけない」とおっしゃっています。僕もその通りだと思っていて、とても好きな言葉です。今回は、それについて話そうと思います。

今はミュージカル・ブームといわれています。チケットが完売するような公演が増えましたし、人気作のロングランや再演も盛んです。映画でも『ラ・ラ・ランド』や『美女と野獣』が大ヒットして、歌や踊りに世の中の関心が高まっているように思います。

ですが振り返ると、あまり注目されない時期も長かったのです。6~7年くらい前だと、ミュージカル舞台の宣伝をしようにも、できるメディアは限られていました。記者会見には、演劇を扱う媒体の人たちが来てくれるだけで、カメラも1、2台あるかどうか。情報は広く発信されなくて、人知れず静かに上演して、舞台写真もあまり残らずに終わり、見た人だけが「よかったね」と言ってくれるような作品もありました。

僕は17年前、東京藝術大学の学生のときに、『エリザベート』というミュージカルの皇太子ルドルフ役でデビューして、そのままプロになり、ミュージカル俳優としてキャリアを重ね、主役をやらせてもらえるまでになりました。子どものころからミュージカルが大好きでプロをめざし、ミュージカルの舞台で育ててもらった身としては、素晴らしい舞台の数々が世の中に知られないのは、悲しいことでもあります。

そうした状況のなかで、ミュージカルの魅力を知ってもらえるように、自分にできることはなんでもやろう、それが自分の役割でもあるという考え方が強くなりました。

■ミュージカルに興味を持つきっかけに

もちろん俳優の仕事として、演技力や感性を磨くことが第一であると思っています。特に主役はそれが大事で、俳優としての実力に引かれてお客さまが来てくれるのだと思います。それだけで劇場がいっぱいになれば言うことはないのですが、そうではないことも多いので、まずは公演があることを知ってもらい、舞台の魅力にふれてもらわないといけない。僕の存在を知ってもらえることが、ミュージカルに興味を持つきっかけになれば、という思いで、活動の幅を広げるようになりました。勝手にミュージカル界の「広報部長」のようなつもりでもあります。

だから、「何でも屋です」というつもりは全然ありません。でも、引き受けた仕事で「こうしてください」と言われたら、何でも対応できるようになりたい。

エンタメ! 新着記事

ALL CHANNEL