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転ばぬ先の不動産学

高台でも浸水の恐れ ゲリラ豪雨で排水追いつかず 不動産コンサルタント 田中歩

2017/9/6

ゲリラ豪雨で都市の被害が増えている(2012年8月、京都府宇治市)

 ここ数年、局地的大雨、いわゆる「ゲリラ豪雨」による被害を伝えるニュースを目にすることが多くなったと思いませんか? ほんの数十分で河川の水位が急上昇したり、道路のマンホールからあふれた雨水が吹き出したりする映像は決して珍しいものではなくなりました。実際、気象庁の調査によると、1時間の降水量が50ミリ以上、あるいは同80ミリ以上の年間の発生回数は増加傾向です。

■「猛烈な雨」、40年前の1.9倍

 気象庁では、1時間に50ミリ以上80ミリ未満の雨を「非常に激しい雨」、同じく80ミリ以上の雨を「猛烈な雨」と表現しています。下のグラフにある赤い直線は、過去の発生回数をもとに中心的な分布傾向を表した回帰直線ですが、筆者が計算したところ、1時間の降水量が50ミリ以上の非常に激しい雨の発生回数は1975年当時に比べ2016年は約1.5倍に、同じく80ミリ以上の猛烈な雨の発生回数は約1.9倍となっていました。

 局地的大雨が増加傾向にある中で、私たちは2つの水害リスクに注意する必要があると筆者は考えています。

 1つは堤防の決壊などで河川が氾濫して起こる浸水のリスクです。河川の流域の低い土地は、当然浸水リスクがありますので、低地で土地選びをするならば、その中でもわずかに高い土地(自然堤防や砂州など)を選んだほうがよいでしょうし、そうでなければ基礎を高くするなどの対策をとる必要があるでしょう。自治体が整備している洪水のハザードマップをチェックして、河川の氾濫による浸水のリスクや程度を確認するのも有効です。

■堤防の内側でも浸水リスク

 もう1つは、大雨などによる地表の水の増加に排水が追いつかず、用水路や下水溝などがあふれて氾濫したり、河川の増水や高潮によって排水が阻まれたりすることによって起こる浸水リスクです。堤防の内側、つまり市街地などにある「内水」による浸水にも注意が必要なのです。内水浸水は河川流域の低地でなくても発生します。高台の中にあるわずかに低い場所でも起こることがありますので、高台にいるから安心ということではないのです。

 ここで問題になるのは、多くの自治体は洪水のハザードマップを整備しているものの、内水のハザードマップの作成が済んでいない自治体が多いことです。筆者が住んでいる千葉県松戸市は、内水のハザードマップが整備されていない自治体の一つです。その松戸市のハザードマップをみてみましょう。

(松戸市洪水ハザードマップより)

 松戸市の洪水ハザードマップによると、松戸駅かいわいは地図の左側を縦に走るJR常磐線あたりが黄色(浸水が0.5メートル未満の区域)に塗られており、さらに西側の江戸川流域が青系の色(薄緑:同0.5メートル~1メートル、薄水色:同1メートル~2メートル、水色:同2メートル~5メートル)に塗られています。一方、常磐線以東はほぼ、浸水が想定されていない区域になっています。

■自治体に報告されない浸水被害も

 次に国土地理院の「色別標高図」を見てみましょう。

 この地図は、緑色の部分が高台で、青色に近くなるほど低地を示しています。この地図上にある〇印は、15年に床下浸水が報告された箇所です(松戸市浸水実績図より)。この2カ所は、洪水ハザードマップ上ではいずれも浸水エリアには該当していませんでした。浸水した理由は、周囲より微妙に低い土地であったり、排水能力を超えた水が配管からあふれ出したりしたことなどが考えられます。

 △印は、数年前の豪雨で、私の膝の高さ(40~50センチ)まで道路に水があふれた場所です。周囲に住宅がないことから松戸市には報告されなかったようで、浸水実績図には掲載されていませんでした。△印のエリアは色別標高図を見てもかなりの高台にあるにもかかわらず、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

(地理院地図:土地条件図)

■被害を最小限に抑える対策を

 △印の部分を国土地理院の土地条件図で調べてみると、「凹地・浅い谷」となっていました。これが意味するのは「周囲に比べてわずかに低い土地」「大雨の際に一時的に雨水が集まりやすく、浸水の恐れがある」ということです。色別標高図では低くなっているかどうかほとんどわかりませんし、実際に歩いてみても、よほど注意深く見ないと低くなっているのがわからないくらいの場所です。このように、洪水ハザードマップには浸水の可能性が記載されていなくても、あるいは周辺より高台にあったとしても、浸水する可能性がある場所というのは存在するのです。

 局地的大雨が増加する傾向にある中、洪水ハザードマップは当然として、地域の浸水実績図などを調べることがとても大事になります。ただ、前述したとおり、浸水実績図は「浸水した」という報告がなされなければ記録は残りません。このため、周辺よりわずかに低い土地になっていないかどうかといったことを土地条件図や現地で注意深く確認することも大事です。

 もし、水害のリスクがありそうな土地を選ぶのであれば、あるいはすでにそうした土地に住んでいる場合は、被害を最小限に抑えるための対策を打てばよいのです。やはり「備えよ常に」ということなのだと思います。

田中歩
 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。

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