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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店を訪れた。お盆休みが明けても本の動きはまだ鈍い。天気が良くない日が続いているのも路面店である同店の客足に響いている。そんなさえない週にも底堅く売れているのが、中心客層とは違う若手ビジネスパーソン向けの本だという。中でも担当者が注目するのが、創造的な生き方を支援するロングセラーの新装版だった。

新版刊行と書店独自の賞で伸ばす

その本はジュリア・キャメロン『新版 ずっとやりたかったことを、やりなさい。』(菅靖彦訳、サンマーク出版)。原著の刊行は1992年、邦訳が最初に出たのは2001年というロングセラーだ。これを少し小ぶりのハンディーな判型の並装本に改め、今年の5月に発売した。八重洲ブックセンターは、この本を書店独自の賞「八重洲ブックチョイス・サマー」のビジネス書部門に選んだ。このため重点的な販促展開がかかり、売り上げが伸びている。

そのものズバリのタイトルからもわかるように、自己啓発書という方がしっくりくるだろう。原題は「ジ・アーティスツ・ウェイ」といい、著者自身も「アーティストのための支援ツール」と位置づける。「私たちは全員創造的であり、いくつかのシンプルなツールを使えば、誰でももっと創造的になれる」というのが著者の主張の中心だ。

創造性を磨くツールブック

まず基本ツールが示される。1つはモーニング・ページ。毎朝3ページ、心に浮かんだことをありのままに書くというものだ。もうひとつはアーティスト・デート。自分の中の内なるアーティストと過ごす週2時間ほどの時間のかたまりだ。田舎道での散歩でも1人で映画を見にいくでも構わない。この2つをルーティーンにしながら過ごす12週間のプログラムが本書では提示されていく。第1週は「安心感を取り戻す」、第2週は「アイデンティティを取り戻す」、第3週は「パワーの感覚を取り戻す」……といった具合だ。各週ごとにエッセーとエクササイズ、課題、チェック項目が示される。まさにツールブックという通りの実用的なつくりだ。

「ブックチョイスとして押し出してから、ウチではあまり取り込めていない20~30代の読者が反応している」と、ビジネス書を担当する副店長の木内恒人さんは話す。1階の入口近くの棚に文芸書部門、文庫部門のブックチョイスと並べて展開しているほか、ビジネス書売り場の2階では、レジ前の平台に店頭販促(POP)で飾り立てて並べており、来店客の目を引き付ける。誰もが作家やアーティストになりたいわけではないのに、若いビジネスパーソンが買っていくのは、仕事の中で創造性が求められる局面が、昨今思いのほか増えているからなのかもしれない。

若手ビジネスパーソンが書店回帰?

それでは先週のベスト5を見ていこう。

(1)これで金持ちになれなければ、一生貧乏でいるしかない。金川顕教著(ポプラ社)
(2)スタンフォード式 最高の睡眠西野精治著(サンマーク出版)
(3)孫社長にたたきこまれたすごい数値化仕事術三木雄信著(PHP研究所)
(4)ダークサイド・スキル木村尚敬著(日本経済新聞出版社)
(5)9プリンシプルズ伊藤穣一、ジェフ・ハウ著(早川書房)

(八重洲ブックセンター本店、2017年8月20~26日)

1位はランキング狙いのまとめ買いも入ってのランクインだが、「店頭での動きも良く、これも若い層に受けがいい」(木内さん)という。自由な時間でお金を稼ぎながら人生を楽しむ6つの思考法を説いている。2位と4、5位には7月下旬以降、本コラムで紹介した本が並んだ。3位の三木雄信氏の本は元ソフトバンク社長室長による孫正義氏の関連本で、数値化仕事術という形で独特のビジネススキルをまとめている。冒頭に紹介した本はベスト5には入っていないが、8位に食い込んでいる。堀江貴文『多動力』も6位につけており、1位の金川氏や三木氏の本と合わせて、若い読者をひきつける本の動きが目立っている。

(水柿武志)

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