ふとした胸のハリが気になって、乳がん検診を予約するとき。
下腹部の痛みが続いて、婦人科を受診しようかなと思ったとき。
来月、会社の健康診断があると分かって、自分の体調不良がふと心配になったとき。
「もしも、がんが見つかったら」という不安から、検診の直前にがん保険が気になる方もいるようです。
でも、直前の加入で本当に対応できるのでしょうか。
保険に入ってから、がん検診?
もしもがんが見つかったら……と想像すると、治療方法のことや仕事のこと、家庭のことなど、さまざまな不安があることでしょう。もちろん、お金の不安もつきものです。
そんなとき、がんの備えとして頭に浮かぶのは「がん保険」が多いようですが、がんになったときにも、健康保険の高額療養費や傷病手当金、障害年金などの公的制度は使えます。あなたが今までにためた貯蓄もこれからの生活の味方ですから、公的保障も考えつつ、がん保険を考えてくださいね。
では、本題のがん保険に戻ります。
がん保険は、がん以外の病気には無力ですが、その名前の通り、がんにはとても手厚い給付です。最近は、入院給付金や診断給付金だけでなく、通院治療、放射線や抗がん剤治療、先進医療などのさまざまな特約が登場し、進化しているのも特徴です。
私のところにご相談にいらっしゃる方が想像するがん保険は、「がんと診断されたら診断給付金100万円」というような、一時金タイプが中心です。では、がん保険に加入して、その1週間後にがんが見つかった場合、がん保険の診断給付金100万円はもらえるのでしょうか。
がん保険には3カ月の待ち期間あり
実は、がん保険に加入して1週間しかたっていない場合、診断給付金はもらえません。
がん保険には、3カ月(または90日)の待ち期間が設定されています。
つまり、保険の申込書と健康状態の告知書を書いて、保険料も支払って、がん保険の加入ができたとしても、実際の保障は、加入から3カ月たたないとスタートしないのです。
よく「本人ががんになっていることを知らなくても、ダメなのですか?」と聞かれますが、保険契約上、本人が知っていたか、知らなかったかは関係ありません。加入から3カ月以内に見つかったがんは、加入したときにはすでに体の中にがんがあったということで、保険給付上の区切りをつけているのです。
「それはおかしい!だって、保険料を払っているんだから、加入して1週間でも診断給付金を出すべきでしょ!」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
でも、もしもそんな商品があれば、私なら、「検査の前日、あるいは、検査結果が出る前日までに加入して、もしものときには、1カ月分の保険料で診断給付金の100万円はしっかりと受け取るようにしておこう」と(ずる賢く?)考えます。
こんな状況がOKであれば、がんと診断される可能性が高い人ばかりが、がん保険に加入することになります。すると、保険会社が契約者に支払う保険金は膨大な金額になり、その結果、私たちががん保険に支払う金額も相当高い金額になってしまうのです。
保険は、保険金を受け取る可能性が高いほど、支払う保険料も高くなる仕組みです。
つまり、がん保険に加入して1週間後にがんと診断されても診断給付金を受け取ることができる保険では、かえって、私たちが手軽な保険料で加入できないような保険料になる可能性があるのです。
そこで、加入から3カ月というのを一区切りにして、その間に見つかったがんは保障しないルールになっているのです(加入から3カ月経過後にがんと診断された場合はちゃんと診断給付金を受け取ることができます)。
3カ月以内にがんと診断されたらどうなる?
せっかく手続きしたがん保険ですが、加入から3カ月以内にがんと診断されると、その保険は無効となります。
そのため、「今回のがんでは診断給付金を受け取ることができなかったけれど、もしかしたら、再発するかもしれないから、再発に備えて加入しておこう」ということもできません。原則として、支払った保険料は返金されますが、「支払った保険料が戻ってきたからよかった」と思えないのが、がん治療の不安が残るがん保険の複雑なところなのです。
健康は財産と、昔からいわれています。つい、がんの備えというとがん保険に頼りがちですが、普段から検診をちゃんと受けて、からだのメンテナンスを大事にしましょう。
また、自治体によって、検診を受けられる条件や内容は差があります。下は一部の自治体の検診例です。自分が住んでいる自治体の検診条件などを一度調べてみて、がん保険加入や検診スケジュールの参考にしてくださいね。


[nikkei WOMAN Online 2017年6月26日付記事を再構成]