離婚しても連帯保証人? 改正民法、債権者に通知義務弁護士 志賀剛一

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Case:16 新婚のとき、夫の名義で賃貸マンションを借り、その際に私は妻として連帯保証人になりました。その後、私は夫と離婚。実家で両親と暮らしていましたが、突如、訴状が裁判所から送られてきました。元夫がそのマンションに住み続けていたのは知っていましたが、訴状によれば家賃の滞納はすでに10カ月を超えているうえ、元夫は貸室をまだ明け渡していないため、月々10万円以上の賃料相当損害金を請求され、累計が100万円以上となっています。借り主である夫、貸主の双方から事前に何の連絡がないまま、訴訟の被告にされましたが、私はまったく関係ないはずです。なんとかならないでしょうか。

連帯保証人、主債務者と同じ責任

「連帯保証」とは、主たる債務者(主債務者)と同じ責任を負う契約を指します。通常の保証とどこが違うかというと、連帯保証の場合、債権者から請求された場合に「まず主債務者に請求してくれ。主債務者が払わなかったら私が払う」という趣旨の言い分が認められていません。債権者は主債務者、連帯保証人のどちらに請求することも可能なのです。「連帯保証人には絶対なるな」と世間ではよくいわれますが、親戚や友人などから保証人になることを頼まれると、情にほだされて嫌とはいえない場合が多いと思われます。しかし、連帯保証人には保証料などが払われることはほとんどなく、なんら経済的な見返りがない無償行為にもかかわらず、主債務者と同じ重い責任を負担することになるのです。

相談のケースでは、賃貸借の契約を結んだとき、元夫が賃借人、元妻の相談者(Aさん)が連帯保証人で、離婚後、しばらくたってから10カ月に及ぶ滞納賃料の請求が来ました。Aさんとしては、離婚して自分はマンションから退去したので、ひょっとすると「連帯保証人ではなくなっている」との認識だったかもしれません。しかし、連帯保証契約はAさんと貸主との契約で、Aさんが夫と離婚して退去したとしても、貸主が承諾しない限り、連帯保証人を脱退することはできません。この点はAさんの認識不足でした。

金融機関の住宅ローンなどで連帯保証を脱退することは銀行がまず承諾しませんが、賃貸借の場合、連帯保証人を別の人に差し替えてもらえる場合もあるので、相談のケースでは離婚の際、貸主に申し入れをしてみるべきだったと思います。また、家賃保証会社に一定の手数料を支払って連帯保証人を代行してもらい、不動産賃借人との間で保証委託契約を締結してもらう方法もあったでしょう。

もっと早く請求してくれれば…

それにしても「10カ月滞納し、訴訟に発展してから知らされるのは遅すぎる。せめて数カ月の時点で知らせてもらえれば、ここまで債務が膨らまなかったのに」と考える人がいるかもしれません。しかし、元夫がこのマンションを貸主に明け渡さない限り、いずれにしても毎月、延滞賃料は発生し続けるのです。そして連帯保証人には原則的に賃貸借契約の解除権はないと解されているため、滞納賃料を支払わざるをえないのです。仮に賃貸借契約が解除されたとしても、貸室の明け渡しが完了するまでは賃料に相当する損害金が発生し続けます。この損害金は賃料の2倍以上に定められている場合も少なくありませんし、原状回復費用も保証の範囲になります。「踏んだり蹴ったり」というほかありません。

もっとも、賃主が権利行使を著しく遅滞したときは、著しい遅滞状態となった時点以降の賃料ないし賃料相当損害金の保証人に対する請求が「権利の乱用」として許されないとする判例もあります。しかし、この判例においても約3年分を超える請求が権利の乱用と認定されたにすぎず、相談のケースの10カ月分(といっても大変な額ですが)の滞納だと、連帯保証人の支払い義務を否定する結論にはならないだろうと予想します。

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