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ドラマの現場にマナーの神髄 変わる所作、変わらぬ心

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NIKKEI STYLE

TVドラマや映画で、マナーや所作の指導をすることも多いマナーコンサルタントの西出ひろ子さん。脚本の時代設定によっては当然、現代とは異なるマナーや所作が求められることがあります。現代のビジネスマナーにまでつながる所作の背景や、撮影現場で再認識したマナーの本質についてお聞きしました。

◇  ◇  ◇

ドラマや映画の撮影では、監督のご意向で「この作品のマナー指導に入ってほしい」となったときにお声が掛かります。そして、必要なシーンごとに指導に入ります。実際にはマナー指導と所作指導の二つがあります。所作指導では動きの「型」をお伝えしますが、マナー指導の場合は、そのシーンの登場人物の状況や心理状態まで考慮して、「所作として正しいのはこういう動きだが、この場面ではこのように崩してもいいのでは」といったところまで踏み込みます。さらには、室内にあるテーブル、ソファなどの備品の形や置き方から、和装・洋装の着方、帽子やアクセサリーなどの素材や付け方のマナーにまで及びます。

マナーも世につれ変わりますので、時代考証のニーズは大きいですね。脚本で設定された時代にはどういう所作をしていたのか、どのような服装だったのか。テーブルマナーひとつとっても、現代ではしないけれど当時はこれが普通、といったことはよくあります。

「小指を立ててグラスを持つ」のがNGな理由とは

俳優さんから一番よく質問されるのも、テーブルマナーに関してですね。洋食ではカトラリー(食卓用のナイフ、フォーク、スプーンなど)の使い方、座り方、どのように切ってどこから食べればいいかなど細かく質問されることが多いです。和食ではお箸やおわんの持ち方、お茶の飲み方、アイスクリームを食べるシーンではその食べ方など。もちろん、普段の生活では皆さんご存じのことですが、いざ演技となると、一つ一つこれでいいのかと確認されたいようです。

例えばナイフとフォークを使うとき、皆さん意外と両肘を外側に張ってしまいがちです。両腕の脇をちゃんとしめてナイフとフォークを使うのが正しく美しい所作ではありますが、実際に撮影したシーンではこんなことがありました。

高貴な身分の方々と、庶民である主人公たちが食事を共にするシーン。高貴な方々は当然正しい所作が身に付いているでしょうが、招かれた主人公たちは洋食に慣れていないので、肘を張ってカトラリーを使うほうが「自然」になります。このシーンではそのように崩すほうが、リアル感が出ます。

あるいはワイングラスの持ち方ひとつでも、役柄によっては崩した持ち方にすることでキャラクターをより明確に表現できるようになります。

食事などの際に、小指を立ててグラスを持ったりカトラリーを使ったりする方がいますね。女性向けのエレガントマナーの本にも、物を取るときに小指を立てると優雅に見えるなどと書かれているものもあるのですが、これは一般的にはNGなのです。なぜなら、ヨーロッパでその昔、カトラリーがまだなく、手づかみで食べ物を食べていた時代、貴族の方々が小指を立てて食べることで、ちょっとしたおしゃれ感を醸し出していた名残だからです。小指を立てて手づかみで食べるというのが一種のおしゃれでありステータスだったのでしょうね。

つまり、これは貴族が手で食べていた時代をほうふつとさせてしまうので、おすすめしないのです。もちろん、そうした時代設定の映画やドラマを撮影するのであれば、小指を立ててくださいとお伝えすることはあるでしょう。現代でも、紅茶のカップを持つときに小指を立てるスタイルはありますが、この持ち方をなさるのはやはり上流階級の方々であり、一般では「気取っている」と見られるため、行わないほうが上品だと評価されます。

「名刺の渡し方」の基本所作は神道から

時代劇の和の所作でも現代と違うことはたくさんあります。例えば現代では基本的マナーとして、話すときは相手の目をしっかり見ましょうといわれていますね。しかし日本では、目上の方に対しては目を見るのは失礼にあたるので、目を伏せながら話すのが礼儀とされていた時代があります。

また、和のマナーや所作で難しいのは、さまざまな流派があることです。大きくは公家礼法と武士礼法に分かれますが、「道」のつく茶道などではさらに流派によって所作が変わります。当然、どれが正しいとか正しくないということはありませんが、例えばドラマで裏千家の主人公が出てくるのであれば、当然ながら裏千家の所作である必要があります。

和の所作はそのように複雑な流れはありますが、その背景には大きな存在として神道があります。日本人として、神道からきている作法の型を押さえておけば美しく自然な所作になります。

例えば、相手先に訪問して持参した菓子箱を差し上げるときは、まず自分のほうに正面を向けて置き、次に箱の対角を持って右回りに90度回し、さらにもう一度90度回します。こうして相手のほうに箱を向けてから、両手でお渡しします。このような物の授受、渡し方の作法は神道で玉串をささげる所作と同様です。最初は自分向きに持っておいて、右回りに回転させてささげます。

実は、名刺交換も同じです。名刺も、まず自分向きに持ち、ここで名のります。その後、右手で名刺の左上を持ち、180度右回りに回転させ、相手向きにしてお渡しするのが正式な型です。

いつも申し上げていることですが、マナーとは相手の立場に立った思いやりの心です。物に対しても同じで、大切に扱おうという気持ちが物に対する所作の基本となります。名刺を最初から相手向きに持ってそのまま渡す方もいらっしゃいますが、こちらは作法からみると簡略化された型といえます。差し上げる名刺を丁寧に扱う作法が、相手へのより深い敬意を表すことになります。

息長く活躍できる人が体現するマナーの神髄

撮影現場のマナー指導では、監督との打ち合わせでマナーや所作の方針が決まってから、ドライ(カメラを通さない本番前のリハーサル)の際に役者さんたちに具体的にお伝えします。マナーをお伝えしている場でありながら、撮影現場ではすばらしいマナーの神髄を見せていただくこともたびたびありました。

何年か前になりますがとても印象に残っているのが、中堅の男性俳優の方です。語学堪能でスマートな雰囲気の方ですが、細かいことでも貪欲に質問をしてこられて、仕事への情熱や姿勢はすばらしいものでした。その俳優さんに「ワイングラスの持ち方」について私から2度、お伝えしたことがあったのです。

その日はパーティーシーンの撮影でした。まず建物の中に男性が入る際に、どのタイミングで帽子を脱げばいいか、ワイングラスはどのように持つか、といったご質問が事前にありました。私にとってはその日が初日だったので知り合いもおらず、和気あいあいのスタッフの方たちから少し離れて立っていたところ、その俳優さんはわざわざ皆さんの前で私の名前を呼ばれて「先生、ワイングラスはこう持てばよいですか」と、同じ質問をしてくださったのです。それをきっかけに、現場の皆さんにマナー指導者である私の存在を知っていただくことができ、その後、スタッフの皆さんからも、マナーに関することでいろいろとご質問をいただくようになりました。本当にマナーのある方だと思いました。

他にも、あるベテランの女優さんは、撮影現場では一切台本を見ることなく、スタッフと雑談したりしていますが、本番になると完璧に演技をこなされます。スタッフへの気配りもこまやかで、こういう方だからいつまでもずっと人気者なのだということがよく分かります。

息長く活躍されている役者さんやタレントさんには気配りや思いやりのマナーがすばらしい方がたくさんおられます。決して型だけではない、思いやりの心から生まれるマナーが備わっていればこそ、ずっと活躍し続けることができ、お仕事の成功につながるのだということを実感します。

西出ひろ子
 マナーコンサルタント・美道家。英国の民間企業WitH Ltd.ウイズ・リミテッド日本支社代表を務めたのち、ヒロコマナーグループの代表として、ウイズ株式会社、HIROKO ROSE株式会社、一般社団法人マナー教育推進協会を設立。企業などでの研修・コンサルティング、マナーを軸に健康、美容、ファッションなどトータルな人材育成、人材プロデュースを行う。NHK大河ドラマや映画などのマナー、所作指導も行う。著書は70冊以上、最新刊に「かつてない結果を導く超『接待』術」(青春出版社)。

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