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家計改善、送金、お釣り投資… スマホでフィンテック 第6回 身近なフィンテック

2017/8/29

昨今、新聞やニュースでフィンテックという言葉を見聞きしない日はありません。金融をIT(情報技術)の力で便利にしようというのがフィンテックで、いろんな応用形が考えられますが、今のところビットコインのような仮想通貨やブロックチェーンの話が多いですね。そのため印象としては「世界を変える近未来のすごい技術」「でも自分には関係ないや」となりがちなんですが、実は違います。広義のフィンテックはとっくに我々の生活に入り込んでいるし、幅広く使われてもいるのです。今回はそうした「身近なフィンテック」の中でも、特に「スマートフォン(スマホ)で使えるフィンテックアプリとサービス」を紹介しましょう。

最初の動画では、「総合資産管理アプリ」に成長した家計簿アプリを解説しています。家計簿というと「主婦が家計の節約のためにチマチマ記帳するもの」という印象があるかもしれませんが、MoneyForward、Zaim、Moneytreeなど昨今の家計簿アプリは全く別物です。口座情報を登録していけば、複数の金融機関にまたがった資産の全体像がリアルタイムで集計されるだけでなく(アカウント・アグリゲーション)、住宅ローンの残高、クレジットカードの利用額、ネット通販でたまったポイントの総額と有効期限、スマホ代、アプリによっては個人型確定拠出年金「iDeCo」の残高まで、家計に関するほとんどのことが把握可能になります。

金額の推移もグラフで表示でき、クレジットカードを使えばすぐ表示されるので不正使用にも気づきやすくなります。時には「先月はちょっと趣味の支出が多すぎましたよ」と注意メールも来るなど、家計専門の秘書を雇ったような感覚です。家計改善のためには「現状はどうなっているのか」を把握するのが一番大事だと思いますが、今はそれが無料のアプリでできてしまうんですね。これぞ身近なフィンテックです。それにお金をためるには日々の節約より、毎月無駄に払っている固定費など太い部分をズバッと見直す方が効果が大きいので、むしろ男性にこそお勧めです。

また紙の家計簿同様、日々の買い物の内容や金額の記録ももちろんできますが、その点もフィンテック。レシートをスマホカメラで撮るだけで、品名・金額だけでなく店名や電話番号など細かい情報まで一瞬で拾ってくれ、費目はAI(人工知能)が自動分類してくれたりもします(レシート読み取りではレシーピ!というアプリが活躍します)。主要な家計簿アプリでも「何ができる・できない」は少しずつ異なっていますが、基本的にはどれも無料ですので、いくつかダウンロードして試してみるのがいいでしょう。ただ金融機関の口座情報を預ける以上、しっかりした会社が作った実績のあるアプリを選ぶべきです。動画ではこの「情報セキュリティー」についてもじっくり解説しています。

さてスマホでフィンテックといえば、最注目は「キャッシュレス決済、個人間の送金」でしょう。現金・小銭要らず、サインレスで素早く支払えるのは本当に便利なものです(しかもポイントが付く分現金より得)。先日も中国アリババ集団の支付宝(アリペイ)が来春にも日本でサービスを開始するという報道がありましたが、2004年に始まったアリペイのユーザーは今や5億人もいるのだとか。テンセントの微信(ウィーチャット)は9億人以上が使う「中国版LINE」ともいわれるアプリですが、こちらにも微信支付(ウィーチャットペイ)という決済・送金機能が内蔵されています。インドも含め、クレジットカードや銀行網など社会インフラの普及が遅れていた国では、近年スマホ決済が爆発的に広がっているようです。そこで2本目の動画ではキャッシュレス決済と個人間の送金につき、日本の現状を解説しました。

もちろん日本でもキャッシュレス決済はおサイフケータイで04年からできましたが、肝心のガラケーが減っていく中でサービスは縮小気味。代わって出てきたのがスマホで支払うApple Pay、楽天Pay、Android Payなどの新サービスです。Origami Payのように居酒屋の和民のグループ店舗で使うと5%割引になるとか、日本交通のタクシーに1000円以上乗ると初乗り料金の410円を1度だけキャッシュバックするなど、割引が魅力的なものも出てきました。全体像は下の表の通りで、押さえるべきポイントは2つ。「核になる技術」と「事前チャージの要・不要」です。

技術でいえば、FeliCaチップ搭載スマホで店頭の端末にタッチして払う方式と、店側がタブレットなどに表示したQRコードを読み取って支払う方式に分かれます。チャージについては、お金を銀行口座やコンビニからあらかじめチャージしておく方式と、チャージ不要でスマホに取り込んだクレジットカードから引き落とされる方式に分かれます。Apple Payは「タッチ決済でチャージ不要(Suicaは要チャージ)」、楽天Payは「QRコードでチャージ不要」、Android Payは「タッチ決済で要チャージ」などとなります。アリペイやウィーチャットペイは「QRコードで要チャージ」ですね。タッチ決済は店側の導入コストが高いため、インドや中国で普及しているのは圧倒的にQRコード方式です。

実際はこのように規格が乱立しており、他にも「使える店が限られる」「高額支払いに対応できない」「日本のApple Pay、Android Payは海外では使えない」などの問題があり、日本でスマホ決済が広がるのは少し先になりそうです。しかし一方の「個人間での送金」では便利なアプリやサービスが登場しており、送る側は手数料無料で24時間いつでも送金できる、相手の銀行口座番号を知らなくても構わないなど、既にかなり便利になっています。子供のお小遣いをLINE Payであげている親もいるし、飲み会の割り勘を払うのもアプリで完結します。かつて「決済は銀行の聖域」といわれましたが、フィンテックがそれに風穴を開けた格好ですね。

3本目の動画では「お釣り投資」など、スマホを使うちょっと変わった投資や金融サービスを取り上げています。例えばOne Tap BUYは、日米の株を金額指定で手軽に買えるサービスです。実際にはワンタップとはいかずスマホを3タップする必要があるようですが、それでも手軽なことには違いありません。銘柄数も何千もある米国株・日本株の中からそれぞれ30ずつに絞り込んでいて、1000円とか1万円から金額指定で買えますので、ファナックやキーエンスのような超値がさ株にも手が届くわけです。アプリの中には投資のイロハを記した30ページ程度の漫画が9巻入っていて、「証券会社が破綻したらどうなるか」や「投資と投機の違いは」などが分かりやすく解説されており、私も勉強になりました。

他にも自動貯金アプリのfinbeeでは、カード決済のお釣り相当額を自動的に貯金用の口座に移してくれるおつり貯金や、「1日5000歩歩いたら(あるいは歩かなかったら)500円貯金する」といった歩数貯金ができます。その月の貯金額に対して0.1%のfinbeeポイントも付きますので、お金をためる習慣のない人にはうってつけです。こういったサービスは他にも複数登場していて、マメタスというアプリではやはりカード決済のお釣り相当分を、ロボアドが低コストな海外の上場投資信託(ETF)で運用してくれます。これはもう「お釣り国際分散投資」ですね。またおつり投資アプリのトラノコでは、運用に用いる専用ファンド(トラノコファンド。内容的にはETFの組み合わせ)をリスク度合いに応じて3種類も用意している凝りようです。これらは「何だか難しそう」と敬遠されがちな投資のハードルを一気に下げてくれましたし、普通に暮らしているだけでも自然と貯金や投資ができているというのが素晴らしいと思います。ちりも積もれば……といいますから、「お釣り投資なんて大した額にはならない」と決めつけるのは早いかも。

他にも住宅ローンの借り換えを検討している人にはモゲチェックというアプリが役立ちますし、保険業界でもスマホ活用は進んでいます。日進月歩の世界ですので、半年後に同じテーマを解説しようと思ったら、今回とはまた違ったフィンテックアプリが多数登場しているんでしょうね。

(マネー研究所編集長 大口克人)

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