70歳以上の医療費、まず世帯合算で負担減らそう年間上限も新設

病院や薬局の窓口で1カ月に支払った医療費が一定額(上限額)を超えた場合、超過分の還付を受けられる高額療養費制度。その上限額が8月の診療分から、70歳以上の人を対象に引き上げられ、負担増になるケースが出ている。来年8月には上限額が一部でさらに上がる。高齢者が家計を守るには「世帯合算」など、負担を少しでも減らせる仕組みを理解し、加入する医療保険制度に申請することが大切だ。

1400万人が対象

国全体の医療費は2016度、14年ぶりに減少に転じたが、高齢者の医療費は増加が続く。医療費膨張に歯止めをかけようと、70歳以上の中高所得者約1400万人を対象に今年と来年、高額療養費の負担上限額が上がる(表A)。

所得区分が一般の人の場合、外来の個人ごとの負担上限は従来、月額1万2000円だったのが今年8月から1万4000円となり、来年さらに1万8000円に上がる。世帯ごとの上限(外来+入院)も5万7600円(従来4万4400円)になった。所得が現役並みの場合は、外来上限が5万7600円(同4万4400円)に上がり、来年には上限自体がなくなる。

ファイナンシャルプランナーの浅田里花氏は「不安を募らせるだけでなく、制度をよく知ることが大切。知っておくとよい細かな変更点もある」と強調する。

例えば一般区分の外来には新たに14万4000円という年間ベースの上限が設けられた。慢性的な病気で年中ずっと通院するような場合、1年間でみた負担上限は今年7月までと変わらない計算だ。

一般区分でもう一つ新設されたのが「多数回該当」。過去1年以内に3回、上限額に達すると、4回目以降の上限額が下がる仕組みだ(表A)。外来や入院の負担が世帯で5万7600円を超えた月が3回(外来上限のみの適用月は対象外)あれば、4回目以降は上限が4万4400円に下がり還付額が増える。

申請は2年内に

高額療養費について特に忘れてはならないのが「世帯合算」だ。家族が同じ医療保険制度に加入している場合、それぞれの負担を合算でき、世帯負担上限を超えた分が還付される。手続きとしては多数回該当と同様、加入する制度の窓口に申請する。

75歳以上の人が加入するのは後期高齢者医療制度。国民健康保険(国保)など他の制度の加入者とは合算できないが、例えば夫婦ともに75歳以上なら夫婦の合算は可能だ。

図Bは72歳・70歳の夫婦(一般所得)が、45歳の息子(年収区分約370万~770万円)とともに国保に加入しているという前提で、現行の世帯合算の流れを示した。

少々複雑だが、(1)まず夫婦それぞれで外来の超過分が還付(2)次に夫婦で外来・入院の負担を合算し、超過分が還付(3)さらに息子の負担も合算し、3人合計の負担額が、息子の年収区分に適用される世帯負担上限(算式省略)を超えた分が還付――というのが基本的な流れだ。

「改正で70歳以上の自己負担額は増えたが、70歳未満と世帯合算することでトータルの負担額が変わらない場合もある」(浅田氏)。図Bの試算でも合算効果により最終的な払戻額は改正前とほぼ同じという結果になった。高額療養費の申請期間は治療を受けた日の翌月1日から2年間だ。過ぎると時効になる。不明な点は加入制度の窓口に問い合わせたい。

(手塚愛実)

[日本経済新聞朝刊2017年8月26日付]

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